卑怯な異常者が出来上がるまで
俺は鬼宮家の長男として生まれ、一人っ子として両親からたくさんの愛情を受けて育った。
しかし、7歳の時に両親が事故で亡くなり、それからは親戚である桃園家に引き取られる事になった。
最初のうちは、可哀想な従兄として、丁寧に扱われていた。桃園家の6人兄弟達と、とても仲良くやっていたのだが、叔父と叔母による差別から始まり、その事で何度も長女の香織が俺を庇うようになった。
「お母さん、何で秀人の食事がお味噌汁だけなのよ?」
「秀人ばかり差別しないで。」
「秀人だって一緒にいる以上は家族なのよ。」
「やめてよ。秀人を虐めるのは許さないんだから。」
今思えば、長女に心配される俺が気に入らなかったのだろう。半年もすると、長男の玄一が俺を虐めの対象として見るようになっていた。
玄一は俺を虐めるようになり、それが次男の厳次をも巻き込む。二人で俺を虐めるのが桃園家の日課になった。俺はなるべく玄一以外の親戚兄弟と遊ぶように心がけたが、玄一は俺と厳次だけを外に連れ出し公園などで虐待を続けていた。
そこに加えて叔父の暴力と叔母の差別もある。俺はなぜ自分が虐められ続けるのか分からずに、ずっと辛い子供時代を送っていた。ろくにご飯も食べさせて貰えずに餓死寸前だった。
しかし、9才の時に転機が訪れる。
それは叔父の事業の失敗だった。借金で首が回らなくなった桃園一家は自宅を売り、母方の父、俺にとっては祖父の家に引っ越した。祖父は、俺と香織の事を可愛がり、常に手元に置いて離さなかった。その事が直接的に影響し、祖父が倒れるまでの3年間は、俺の虐めは緩和した。
引っ越して早々に玄一は不良グループを倒し、一帯を仕切るリーダーになった。だが、家での虐めがなくなっただけ俺にとっては幸運だった。この頃は学校で知り合った剣崎から受ける暴行と、登下校中に玄一と遭遇した時の暴行だけになった。半分は不登校だったが、家にいれば幸せと思える日々を送っていた。
ただ祖父と香織にあまりにも可愛がられすぎてしまい結果として激太りする事になる。
俺は7才から9才まで、ろくに食事を取れなかった事が原因で、体質が食べた分だけ脂肪を蓄える体になっていたと思う。それが一日三回のしっかりした食生活と、祖父と香織がそれぞれ与えるおやつ。家にいる時はライトノベルなどを読みながら、祖父の部屋に引きこもるという駄目なルーティーンで、9才から12才までの間に100㎏という壮絶な肥満体形になっていた。
だが、そんな幸せは長くは続かず、祖父が倒れ意識不明の重体になってからは生活がまた激変する。
祖父のせいで俺を虐められなかった者達の鬱憤は最高潮にまで達していた。結果的に俺が肥満体形になっていたのは幸運だったとも言える。 その後、家庭内では、ご飯は残り物の味噌汁だけが当たり前で、毎日、汚い言葉を浴びせられる。香織が気づけば庇うのだが、それもアルバイトが休みの時だけだった。
そして、現在に至る。食事が制限され、体重はぽっちゃりくらいにまで落ちたのだが、毎日の虐めにより、根暗で精神異常者の俺が誕生した。妄想の中でしか人を殺せないが、そのやり方はいつも卑怯で相手を死角から攻撃する手法だった。
俺には大切な物なんて何もなかった。世界の全てが敵で、妄想の中では殺しの対象なのだ。
私の作品を読んでいただき、心より感謝申し上げます。
皆様の温かい応援に触れて、感謝の気持ちで胸がいっぱいです。これからも読者の皆様に喜んでいただけるよう精一杯がんばります。
心からありがとうございます。