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Load of Store 生産職で魔王は倒せますか?  作者: 漆黒の炎
Another World
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突然発動した未来視

 俺はアイテムボックスからいろいろな物を取り出して部屋に並べていた。服や道具、生産用のアイテムなどがたくさん入っていた。

 

「職業は格闘家だけど、究極(アルティメット)生産(クラフター)は生産に全振りしたような能力だよな。このハンマーとかは何に使うんだろう。」


 ハンマーを手に取るとシュッという微かな音がする。


 俺はすぐにステータスを確認する。職業が鍛冶師に変化していた。


「そうか。手に何も持っていないと格闘家で、ハンマーを装備すると鍛冶師に変化するのか。」


『 制作日誌が解放されました。ダイアリーで展開します。 』


「ん? ダイアリー。」


 上から本が落ちて来て目の前で宙に浮いた。手に取って中を調べてみる。

   

「制作日誌。……変だな。何も書いてないぞ。鍛冶師で作成出来るアイテムが載ってるかと期待しちゃったよ。せめてここの素材を使って初心者でも出来る簡単なやつが分かればな。自分で調べるしかないよな。」


 俺の言葉に反応して、本が開いた。順番に文字が浮かび上がってくる。


『 ブロンズインゴットの作り方 』


「……だからレシピとかではなく日誌だったのか。……でもその前に。」


 試しに神様が用意してくれたいろいろな道具を手に取ると、その度に職業が変化していた。服が一式あったので、それを着るとSPとか生産に使えそうなステータスが大幅に上がっていた。


「この生産チートで、商売をしてまずは異世界で大金を稼ぐ。」


 

 ―― お前には無理だろうが この8年 お前は一度でも努力したか? ――

 

 ……だまれ。


 ブロンズインゴットを生産するのに10種類のスキルを使った。知らないはずなのに、なぜかはっきりと使い方を分かっていた。これが生産チートなのかと思いながら俺はブロンズインゴットを生産する。出来上がったブロンズインゴットは最高の品質に仕上がっていた。

 

「ここにある素材で作れる最高のアイテムが知りたい。」

 

制作日誌のページが開く。


『 鋼の剣の作り方 』


 俺はその作り方を見て愕然とした。スキルの使い方を知る俺には分かる。これでは神様がくれたチート装備でもSPが全然足りない。鋼の剣。ゲームなどでは中盤か、序盤の終わりくらいには持っているであろう剣。俺はその程度の物も作れない。

 

 理由は生産熟練度にある事が理解出来た。強い装備を作る為に使う事になる高度なスキル。俺のチートは生産職の職業レベルが最大。スキルも全て取得している。ただし、そのスキルは、生産職全体の生産熟練度によって、SP消費量やスキルの性能が段違いに変わって来る。つまり神様からチート能力を貰っていても、生産職の経験、熟練度が圧倒的に足りない。

 

 俺はブロンズインゴッドの生産で上がった熟練度の上昇値を調べて見る。

 

 『 1/45,000 』

 

 これは、熟練度の最大値が45,000あって、ブロンズインゴットの生産で1上がったわけではない。熟練度0から熟練度1に上がる為には45,000が必要でブロンズインゴットの生産では1しか上昇していないのだ。対してブロンズインゴットを1つ制作するのに3分もかかった。


 一日12時間を生産しても、熟練度が1上昇するのに半年以上かかる計算になる。

 

 

 ―― 笑えるな もう諦めろよ 

    仮に熟練度を10にする必要があったら 5年はかかるぞ――

 

 

「……うるさい。何か手があるはずだ。木の剣。木刀は?」


 制作日誌が新しいページを刻んだ。

 

『 木刀の作り方 』

 

「これなら、ギリギリ作れる。あとは熟練度がどれくらい上がるかだ。」


  

 俺は集中して木刀を制作した。日誌の通りに素材を使って木刀を作ったのだが、豚木刀が出来ていた。もしかしてデブの俺が作ったから、豚木刀なのかと、とても残念な気持ちになる。


 だが、一瞬でそれは歓喜に変わった。熟練度が2つも上がっていたのだ。思わず大きな声で叫んでしまった。

 

「うおっ~~~!」


 猫耳さんが飛んできた。

 

「お客様。何かございましたかにゃ?」


「……大声を出してすみません。あの。生産をやってみたのですが、このブロンズインゴットというものは、こちらの街で売れますかね?」


「売れますにゃ。でも、鍛冶師が最初に作成するものだから、値段はとても安いですにゃ。」

 

「ありがとうございます。お騒がせして、申し訳ありません。」

 

 ……待てよ。スクラップや廃材が売れるという話を昔どこかで見た事がある。ブロンズインゴッドは銅。安くてもそのまま日本で売れるのでは? もし、銅が駄目でも何かを生産して、異世界よりも日本の売価の方が高いものは日本で売れるのかもしれない。軍資金さえあれば、手紙には日本のものを異世界に持ってくるのも有りだってあった。

 

 


 やる気が出て来た。それ程の変化だった。俺は街に情報を集めに行く事にした。


 散らかした部屋の荷物をしまい、俺は宿屋を出ていた。


 宿屋前は商店街のようになっていて、土色の硬いブロックが敷き詰められた大通りにいた。


 

「すごい。……これが本物の異世界か。窓から外を見た時よりも現実味がある。」


 

 文化レベルは中世のヨーロッパといった所で、遠くの方には馬車なども走っている。はじめて見る異世界の街で俺はいろいろと観察しながら、街をぶらついていた。


 

 しばらく街を歩いていると、何かのお店の前で、女の子が泣き崩れている場面に遭遇する。


 

 その女の子を見た瞬間、頭の中が真っ白になった。イメージが場所を変えていた。


 

 

 ―― 俺は大きな部屋のベットに寝ている女性の手を握りしめていた。

   

「ユノ。……助けられなくてごめんね。まだ、こんなに若いのに……。」

     

「何を言ってるんですか。……離縁され、天涯孤独だった私を妻に迎えてくれて……こうして、最後の瞬間まで……支えてくれてます。……私の人生は……ずっと悲しいだけの毎日でした。……でも唯一……人生の締めくくりだけは……幸せでした……きっとアルテミス様が……私を不憫に思って……秀人さんを…………」


「逆だよ。最悪な俺の人生を、とても純粋で綺麗なユノの心が変えてくれたんだ。俺にはもったいない奥さんだった。……ユノに出逢えて本当に幸せだったよ。心の底から君を愛してる。」


「私も……愛してます……あり……が……とう……。」


「…………ユノっ…………ユノっ――――――――――!!」     ――

 

 


 

 頭がくらくらとして意識が戻る。実際に体験してきたような不思議な感覚だった。

 

「……今のは……いったい……なんだったんだ。」


 

 

 

 店主に縋りつき泣き崩れている女の子。


 お店は剣と盾の木製の看板があり、鍛冶屋サンシータと書いてある。


 俺は異世界の文字が読める事にも驚いたが、それよりも女の子から目が離せなかった。さっきのはっきりとしたイメージの中にいたユノ。それが女の子と同一人物に見えたのだ。


 俺は耳をすましながら会話が聞こえるくらいにまでに近づいていった。


「お願いします。王都の鍛冶屋は全て回りました。もう、ここしか残っていないんです。」


「クソガキが。店先で泣いてんじゃねーよ。この国に幻銀(ミスリル)なんて扱える職人がいる訳ないだろ。」

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