表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

塔の下の溶解

作者: 蟹山カラス

 わからない、日を追うごとにわからなくなってゆく。

 それともそれは元々だったのかもしれない。

 最初から何もわからなかったのなら合点がいく。それともそれは順々だったのかもしれない。

 どちらがどうであれはっきりしているのは「今わからない」ということ。俺には今がわからない。


 いつからか、全てがわからなくなってしまった。焦って考えれば考えるほどもっとわからなくなってゆく。

 おかしいと思った。だってわかる方がおかしいんだ。この世は「わからない」が基本であって、「わかる」やつは間違っているんだ、なぜならこの世は「わからないから」。

 本当にそうか?

 そのことすら今やわからない。何が真実で何が真実じゃないか、何が現実で何が夢か、何が正気で何が狂気か、全てがわからなくなってゆく。

 考えれば考えるほどおかしくなってゆく。今あるこれは間違いなのではないか、今あるこれはまやかしの、ひらひらと飛ぶ群青色の蝶なのではないか。


 群青色の蝶は夜に飛ぶ。瞼を閉じるとやってくる。群青色の蝶はぐるぐると回って俺の思考を侵食する。

 蝶に気を許してはいけない。蝶を信じてはいけない。

 それなら何を信じればいいのか。「わからない」ということそのものを信じた方がいいのだろうか。

 ……馬鹿なことを。そんなことを信じたって何の救いにもならない。

 救い?

 俺は救いを求めているのか?

 何の?


 救いを求めなければいけないようなつらいことなど何もない。苦しいことも何もない。なぜなら俺は恵まれているからだ。恵まれているやつは不満も文句も言ってはいけない、なぜなら――

 やめよう。それは■■だ。それは精神を侵食する。蝶のように。

 それなら俺はどうすればいい?


 わからないのだ、何もかも。何が正しいのかわからない。自分のことすらわからない、崩れてゆく。

 もはや塔すら積むことはできなくなって、身体が崩れてゆく、境界が溶けてゆく、溶解してゆく。その果てに何が待っているのか、世界との合一なのか、それは■と呼ばれるものなのか。

 何もわからない。


 だから今日も■■している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ