二巡目の人生
「小さな俺と死にたいオレの8分の1」第二話を開いていただきありがとうございます! 学生ということもあり取り合え時今は土曜日の更新となっていますが、要望がもしあれば変えて行こうと思います。第一話の男は果たしてどうなってしまうのか。では第二話をご覧ください。
穏やかな朝。
外はそよ風が吹き、小鳥が鳴いている。
「っうわああああ」
汗だくの俺は悪夢から覚めるように飛び起きた。
恐ろしい夢だった。
部屋を出たら火の海だなんて……。
「でも……ここどこだ?」
いつも俺がいた部屋とは似ても似つかず、ゲーム機もない。
家に人気はなく自分ひとりなのだろうか。
もう一度布団に入ったり、ほっぺをつねってみるがどうやら夢ではない。
何も状況が読めない俺はとりあえず家を見て回る。
一階建てで誰かが暮らしていた様子はない。
俺はなぜこんな所にいるんだ……。
ふと、俺は直観的にベッドの隣にある机の引き出しを開けた。
引き出しには小さい袋と白い封筒。
封筒には全て直線で『荒城 海兎様』と書いてある。
「…………」
なんだろう。このざわめきは。何か見てはいけないものを見ているようだ。
封筒から一通の手紙を取り出す。
手紙の字も全て直線だ。
俺は固唾を吞んで手紙に目を通す。
「『荒城海兎さま。あなたは不幸にも先ほど自宅の全焼で亡くなってしまいました。あなたの人生は十六年で幕を閉じたのです』」
え? 死んだ? 俺が?
何があったっけ? 兄の部屋に入って。そうか──。
「『そこで短き人生だったあなたには一つの好機が与えられます』」
好機? 俺へのチャンスか?
「『今あなたがいる世界。地球とは異なる世界』」
「……」
「『すなわち、異世界への転生です』」
驚きのあまり声が出なかったことを俺は今でも覚えている。
「『そこでのあなたの生きる理由はただ一つ。クリムゾンライト通称、魔王の撃破です』」
「『そして魔王を倒した暁にはこの世界で手に入れた『力』をもったまま現世に戻ることができます』」
「『ただし、この世界の住民に地球から来たことがバレるのはアウトです』」
「『それでは健闘を祈る──。神』」
「……」
「な、なんだこれはああああ」
カイトは叫びながら手紙をビリビリに破ってやった。
「なんだこれ。はぁはぁ。普通こういうのは美しい女神やカッチョいい神様に告げられるもんだろ。人があれなら神様もコミュ障な時代か! なんで全部、直線なんだよ。読みづらいわ」
神からの唐突な宣言に動揺し文句が止まらない。
「ていうか俺に拒否権は無いのか。そりゃ拒否なんかしないよ? ゲームオタクだし。でも強制とか、どんだけ神様に期待されてるんだよ俺。異世界か。わくわくするなー」
止まらずに出てくる文句はいつの間にか自画自賛に変わっている。
オタクなら一度は想像したことがある異世界に来たのだ。
カイトは一度死んだことなど忘れ、これからの冒険に思いを馳せていた。
──満を持して玄関を開くカイトの目に飛び込んできたのはRPGゲームでよく見る街並みだった。
街中には車など走っておらず日本でよく見る歩きスマホもない。
街中には馬車が走り、子は母と手をつないでいる。
カイトは日本では見ることのない光景に心を躍らせている。
まだその景色に見惚れるカイトはふっと我に返る。
「おっと、ここはゲーム好きの意地を見せないと」
カイトは手をつないで楽しそうに歩いている母子を呼び止める。
「すいません。俺、冒険者になりたいんですけどこの町にギルド……」
その母親は俺の質問を遮り子供の目をかくす。
「ほら、あんまり見ないの──」
?
俺は自分の服装を見てあることに気付く。
「げっ。シャツと寝る用のズボンのままだった」
これのせいで不審者がられたのか。
「あの神様、金あげるから自分で買えってことか」
ちなみに引き出しの小袋には硬貨が入っていた。見たことがない、この世界だけの共通通貨なのだろう。
もういい。ギルドくらい自分で探すか。
──思っていたより早く見つかった。町の中央に位置し、中から男たちの笑い声が聞こえるからだ。
ギルド兼酒場といったところか。
きっとこの異世界生活は俺が勇者で俺が主人公だ。
ここでゲームでいうイベントでも発生させるか。
俺は勢いよく店のドアを開け言い放った。
「俺は勇者になり将来、魔王を倒すものだ!」
「魔王倒したいんですけど誰か居場所しってます?」
逆側にも入り口があり、そこから入ってきている男と重なった。
酒を飲み大笑いしているイカツい男たちは一瞬静まり返る。
俺と入り口にいる男を見た酒飲みたちの笑い声はさっきよりも大きく酒場に響いた。
第二話をご覧いただき本当にありがとうございます。ちょっとした話としては最後に出てきた男の名前と性格を最後まで悩んでいました。今後の話にマッチするキャラになっていたら良いなと思います。土曜日更新予定なので次は6月1日です。因みに主人公の名前は「アラキ カイト」です。