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9 ミステリー

※ 後半、余談なので口調がくだけます。


 前にも少し書いたけれども、うちの学校図書館では基本的に、生徒からのリクエストには積極的に応えるようにしている。

 一応、担当の司書教諭の先生や校長先生から認め印をいただかないと注文できないことにはなっているので、「中学校に置いておくにはちょっと」という内容のものは入れられない。

 けれども、やたら殺人事件が出てくるにも関わらず、ミステリーは注文することが多いジャンルのひとつである。


 実際、私も個人的に、学校図書館とミステリー作品の相性はいいのではないかと思っている。

 なにしろミステリーは、最後のほうで明かされる事件のトリックや犯人がひとたびわかってしまうと、普通はなかなか再読しないことが多いジャンルだからだ(著者の皆さま、ごめんなさい!)。

 こう言っては何だけれども、一度読んでしまったら、二度も三度も読まないのが普通なのではないだろうか。

 となると、よほどその著者のファンである等々の理由でもないかぎり、「わざわざ買って手元に置いておくのは……」と考える人が多いのは致し方のない話でもある(出版社の皆さまも、ごめんなさい!)。

 というわけで、図書館の登場だ。


 ちなみに、すでに多くの公共図書館でも、他の人に借りられている本を予約するシステムがあるはずである。しかし、人気の本やベストセラーになっている本ほど、予約待ちの人数が多いもの。あまりにも多すぎて、早くても一年先とか、それ以上も待たされることがままあるものだ。

 本というものには、良くも悪くも読まれるための旬がある。いやもちろん、「名作」と呼ばれる往年の作品群は別格としての話だけれども。

 最近ドラマや映画になったばかりの原作小説などは、まさに「今読みたい本」の代表格だろう。

 予約して一年以上も経ってから、やっと「あなたの番になりました」と連絡が来たところで、その時にはもう当初の「読みたい!」という熱が消えてなくなってしまっている。それどころか、「そんな本、予約したっけ?」なんていうこともままあるのだ。

 そういう経験をなさった方は多いのではないだろうか。


 さてその点、学校図書館は少し有利だ。もちろん、蔵書数では公共図書館とは比べるべくもないけれども、利用者の絶対数が少ない分、予約して手元に届くまでの時間が比較的短くて済むからである。

 ゆえに、ミステリーと学校図書館は相性がいい……のではないか。


 ちなみに、うちの図書館で人気が高いミステリー作家は、東野圭吾さん、湊かなえさん、宮部みゆきさんである。

 その他、最近映画化されたりドラマ化されたような日本人作家のミステリー作品がちらほらと。

 一方で、昔ながらの名作であるコナン・ドイルやアガサ・クリスティーなど海外勢の作品や、江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズなどはちょっと……いや、だいぶ旗色が悪い。これについては私自身、もう少しPOPに力を入れたりして、目を向けてもらおうと画策中である。


 まあそんなわけで、日本のミステリー作家さんの本については日常的に、みんなが争うようにして借りていく。時には予約まで入れていく熱の入れようだ。まさに争奪戦といっていい状況なのである。

 東野圭吾さんに至っては、なんと先生方や学校事務の方にまで大人気(笑)。中には先生からのリクエストで入れた作品まであるぐらいだ。

 つまり。

 やっぱりミステリーは、図書館で借りて読みたい人が多いジャンルなのである。


 ところで、ここからは余談だが。

 先生方に本をお貸しして困るのは、皆さん大変お忙しくて、なかなか返却してくださらないことだったりする。


 とにかくもう、忙しすぎて本が読めない。

 人にものを教える立場の方々がそういう事態になっているのは、教育の質を高める上で大いに問題があるとは思う。思うが、実際本当にお忙しすぎるのだから仕方がない。

 本当に、睡眠時間をきちんととれているのかと心配になるような先生も中にはいらっしゃるぐらいだ。いやそれどころか、実際入院されたまま、半年以上も戻ってこない先生もおられたりする。

 まこと、教職は(とくに公立の中学校は)激務なのだなと痛感する。

 だから余計に私の口から「早く返してくださいね」とは言いにくい……。


 さらに、生徒たちに対しては「貸出期間は二週間まで」ときっちり決まっているが、先生たちはそうではない。授業で使おうとする資料を二週間で返却するというのは、あまり現実的ではないからだ。

 そして、私や図書委員が生徒を相手にするみたいに「さっさと返してね~」と言いづらいのもネックのひとつ。

 そうして大体、こういう年度末になってやっと、机やら準備室やらの大量の資料の中から「発掘」された本を「つづれさん(仮・笑)、これ……」と申し訳なさそうに持っていらっしゃる先生が続出する。


 そうそう、この間なんてあれですよ。

 昨年度の蔵書点検の時には存在も分からなかった本が、続々と色んな場所から返されてきて白目を剥きましたわよ、わたくし(笑)。

 それよりちょっと前にも、一気に何十冊も図書館のバーコードラベルのついた辞書類が、とある教育準備室(もちろん取っ散らかりまくり・段ボール箱だらけ)から発掘されましたしね! 

 そもそも、図書原簿によれば新しい英和辞典数十冊が校内のどこかにあるはずだったので、前から私も探していたわけなのです。先生方がお忙しいので、そういう話もしづらくて、やっと先日聞いてみたところ、とある先生が「あ、もしかしてあそこにあるかも」とおっしゃって。

 それで行ってみたところが、同じ部屋から国語辞典と漢和辞典までが、無造作に段ボール箱に突っ込まれて何十冊と出てくる始末……!

 もう、笑うしかありませんでしたよ。

 昨年報告した蔵書数のデータが、めっちゃウソになるやないですか。

 かなわんわ~、もう。


 そんなこんなで、私も「ええ加減、用が済んだらちゃっちゃと返せやコラア(怒・失礼)」とか腹の底では思っているのですが、もちろんそんなことはおくびにも出しません。


「あらあら、ありがとうございます~」

「いいんですよ~。こちらこそすみませ~ん」

「お忙しいのに、わざわざありがとうございました~」


 と、にこやかに笑うだけです。

 いやはや、困ったもんですね。

 ご自身がそんなんでは、「お前ら、はよ本返すんやで~」とか、偉そうに生徒に言えないと思うんですが。

 さてさて、どんなもんでしょうか。

 ふははは。


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