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87 「白狐魔記」シリーズ

 

 こんにちは。

 前回の「ひげよ、さらば」もそうでしたが、この夏休み、勤め先の学校図書館からあれこれと本を借りてきてなるべく読んでいるわたくし。今回もその中から、こちら作品のご紹介となります。


 〇「白狐魔記」シリーズ 1~7巻

 斎藤 洋・著 / 偕成社(1996~2012)


 斎藤洋先生と言えば、あの「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズでも有名な作家さんですね。

 作者来歴を見ると、斎藤先生は1952年生まれ。ということは、最新刊である第七巻「天保の虹」を発表された段階で60歳。現在は御年72歳で、亜細亜大学経営学部の教授をなさっているとのこと。


 と、作者の来歴を聞くと「なんだか硬くて古臭そうな作品」というイメージになろうかと思うのですが、斎藤先生の作品の魅力はなんといってもその筆致の軽やかさと素直さ、主人公のまっすぐな心根の部分だと思います。なにより、とっても読みやすいのです。


 第一巻「源平の風」以下、第七巻「天保の虹」まで、かなり長い期間を扱う歴史ものとしても楽しめる作品ですが、2012年に「天保の虹」が出版されてから続刊は出ていません。既刊の紹介部分には「以下続刊」とあるので、続きを書くおつもりはあるようなのですがどうなのでしょうね。


 さてさて。ということで、ほんの出だしの部分をご紹介しましょう。

 冒頭は平安時代。とある山に生まれた子狐は、生まれながら非常に人間に興味をもつ狐でした。親や兄弟と別れてから、ちょくちょく人間が暮らす村などに出かけて行っては、物かげからこっそりと彼らのやることや話すことを観察していたのです。そうこうするうち、だんだんと人間が話す言葉が理解できるようになっていきました。

 やがて、とある寺の和尚さんがこどもたちに話したことに非常に興味を引かれます。

 遠い「白駒山(しらこまさん)」には仙人がいて、そこで修行をすれば仙人の術を使えるようになる……といったもの。


 そのことが気になった狐、ついに旅にでることを決意。その白駒山へでかけていき、その仙人に出会うことになったのでした。

 ところがこの仙人はかなりの変わり者。ひたすら飄々としていて、狐がいくらお願いしても「修行などくだらぬ」と言ってまともに取り合ってくれないのです。でも、術を使うためのちょっとしたヒントはくれるという。


 やがて狐は仙人から「白狐魔丸(しらこままる)」という名を名乗ってはどうか、と言われ、そう名乗るように。そのうち、人間に変身できるようになってからは「九十九小吉(つくも こきち)」と名乗って次第に人間たちと深いかかわりをもつようになっていきます。

 そうする中で、源氏と平氏の争いの一端にかかわりあうことになり……。


 このような感じで、この狐は普通の狐ではなくなって、大きな白狐に化身したり、人間に化身したりしながら様々な歴史上の人物にかかわり、なにかと気にも掛けながらかれらの人生を眺めるようになっていくのです。


 ところで白狐魔丸は人間は好きですが、武士はきらいです。

 なぜなら、別に食べるわけでもないのにむやみと相手を殺し、特に兄が弟を、弟が兄を殺したりするから。狐にとってはくだらないと思える「なわばり争い」で相手を簡単に大量に殺すからです。狐である彼には、何百年たってもそれがどうしても理解できないし、武士も武士のつくった町も城もずっときらいなのでした。その一方で華やかなものは好きで、京の都や人間のつくったお芝居などは大好きという。


 主人公を狐にしたことで、周囲の人間たちの様々な行動やできごとを少し俯瞰して眺めることができているわけですが、そこもまた狐らしい純朴な感性で眺め、理解できないものは理解できないものとして受け止めていく柔軟性にあふれています。その目線はまちがいなく、作者である斎藤先生の目線でもあるのでしょう。

 巻末にはそこまでの歴史の動きと白狐魔丸の行動を表にした年表がついていて、巻がすすむごとにページが増えていきます。


 お話が進むにつれて白狐魔丸以外のモノノケたちも登場してくるのですが、これがまたとても魅力的。お話が読みやすく挿絵が多めなこともあって、わりと厚めの本なのですがあっという間に読めてしまいますよ。

 7冊読破は今からでは大変かもしれませんが、第一巻「源平の風」だけならさほど分厚くもないので、読書感想文にもいいかもしれません。


 よろしかったら、お手にとってみてくださいね。

 ではでは、今回はこのあたりで!


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