84 「シロガラス」シリーズ
こんにちは。
今回はこちら作品のご紹介となります~。
〇「シロガラス」シリーズ
佐藤多佳子・著 / 偕成社(2014~)
作者は言わずと知れたあの名作「一瞬の風になれ」の佐藤多佳子先生。
しかもこちらの作品、今年の図書館流通センター(TRC)の学校向けカタログにも載っているもの。
とはいえ、2018年に刊行された5巻までで止まっており、まだ完結しておりませんが……。
5巻まででも非常に面白いですし、中学生に勧めやすい内容ではないかなと思います。
ということで、冒頭だけ少しご紹介を。
舞台はとある田舎町にある、由緒正しい神社。「白烏神社」といいます。しばしば「シラトリ神社」と読みまちがえられるのですが、本当は「シロガラス神社」。
狛犬の代わりに門を守るのはカラスの石像なのですが、本来二体あるはずの石像が、なぜか一つしか残っていません。ある時、それは消えてしまったというのです。
主人公はこの神社の宮司、藤堂佐一郎の孫娘、千里。
白烏神社はかつて、後北条氏の家臣だった森崎古丹によって開かれ、それと同時に彼が開いたとされる星茫一心流という古武術も伝承しています。
佐一郎はその素晴らしい使い手であり、彼に師事している孫の千里もまた、小学五年生でありながら相当な腕前の少女。朝早く起き、近くで滝行をし、祖父とともに日々稽古に励んでいます。
さて白烏神社では、古くからの伝統行事として毎年「子ども神楽」を開催しています。
カラス舞を舞う舞い手と剣舞を披露する剣士役で、合わせて6名の子どもたちが選ばれるのですが、今年は千里と、同じ小学五年生の子どもたちが選ばれました。
藤堂星司は千里のいとこで幼なじみ。穏やかな性格で動物が大好き。
筒井美音は千里の親友で、ちょっと気の弱い女の子。
北川礼生は千里とは長年犬猿の仲である、姿はいいが性格最悪の少年……といったように、6名全員それぞれの背景や家族関係などがこまやかに語られていきます。
礼生がとあることから星司への無視イジメを扇動したりしてトラブルになる中、6人はそれぞれにカラス舞の舞い手として、また剣士として稽古を積むことに。
あ、そうそう、冒頭ではなんか非常に胸クソ悪い感じの礼生ですが、次第に彼の抱えている葛藤や背景がわかってきて、また千里との係わりの中で彼自身も変わっていきます。そのさまがとても鮮やかで、また説得力があり、そこは非常に魅力的な部分だと思います。さすがは佐藤先生だなと感心してしまう筆力ですね。
実はこの神社には、昔からさまざまな謎があります。石のカラスが一羽しかいないこともそのひとつ。
やがて、巻を追うごとにそれぞれの謎が薄皮をはがすように明らかになっていき、それとともにとんでもない事件が発生。その結果、6人の体に驚くべき異変が……!?
このあたりから、もう目が離せなくなること請け合い!
いわゆる少年少女モノを飛び越えて、一気にSF寄りの展開へとつながっていきます。
神社で飼われている犬のハジ(または「サイトウさん」)やネコのハットリ、野生の白いカラス「フォーマルハウト(フォー)」など、登場する動物たちも存在感たっぷりで見ていて微笑ましいです。
最新刊が出てからすでに6年ということで、そこからだいぶ間があいてしまっているわけですが、まことに続きが待ち遠しい! そんな作品です。
ということで、いま選書を考えておられる司書さんたちにはぜひおすすめしたいなと思ったのでした~。
よろしかったらご検討くださいね。
ではでは。