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71 戦争と難民に関するブックトーク


 こんにちは。

 今回は「本当に生徒に向かってブックトークをした」というのではないのですが、こちら地域の研修で、自分が選んだテーマでいくつか本を紹介する……というものがあったので、そちらからのご紹介です。

 ほかの司書さんたちもそれぞれにテーマを決め、本を持ち寄って話し合う形になるようです(「ようです」というのは、実際の研修がまだこれからだからです・苦笑)。


 さてさて。

 このところ、ガザ地区へのイスラエル軍の攻撃が激しくなってきており、ロシアによるウクライナ侵攻とともにニュースの多くの部分を占めるようになってきていますね。

 この機会に、中学生であるうちの学校の利用者のみんなに、どんな内容で本を紹介するべきか。私もしばらく考えていました。


自分の勤める学校図書館の蔵書から本を選ぶことになっていましたので、まずは本棚をブラウジング。

それで、以下の6冊を手に取りました。

研修では5冊を選び、そのうちの2冊を研修場所へ持参することになっていましたが、ご紹介のためここでは6冊としております。


 「戦争とはなにか」とか、実際の戦争がどうして起こってきたかなどを語りだすといくら時間があっても足りなくなると思われるので、それはまた別の本に譲ることとして、戦争によって被害を受ける一般の市民に対してわたしたちがどんな援助をすることができるのか、そのためにどんな仕事があり、実際にその人たちがどんな環境でどのように考え、働いているのか、そんなことを紹介しようと考えました。


 まずは「難民とは?」というところでこちら。


〇「世界の難民をたすける30の方法」

滝澤三郎・編著 / 合同出版(2018)


 こちらにはそのものずばり、「難民ってだれのこと?」といった質問が掲げられ、ひとつひとつ簡単に説明が施されています。難民の定義が箇条書きで載せられており、わかりやすいのではないかと思いました。


 つぎに難民と呼ばれる人たちがどんな状況にあるかということ、紛争や戦争が子どもたちにどんな影響を与えるか、そして彼らを援助するためにどんな活動が行われているのか、ということを知る意味で、こちら。


〇「わたしは12歳、爆撃される悪夢を見る夜。」

 公共社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン・著 / 井筒 節・監修 / 合同出版(2019)


 次はこちらです。


〇「ようこそ、難民! 100万人の難民がやってきたドイツで起こったこと」

今泉みね子・著 / 合同出版(2018)


 こちらの本は、とあるドイツの少年が、身近にやってきた難民の子どもたちと友達になるところから物語がはじまる、物語形式のもの。ストーリーを追いながら難民問題を考え、知っていくという内容のものです。

 特に、平和な国で恵まれた生活をしているわたしたちには、どんなことができるのかを考えさせられる一冊です。物語形式である上、さほどページ数も多くなく、読書が苦手なタイプの生徒にも勧めやすい本ではないかと思います。

 

 さて、ここまでは「一般市民としてなにができるか」という話だったわけですが、ここからはプロフェッショナルとして難民支援を行う人たちに目を向ける本を紹介します。


〇「危機の現場に立つ」

中満 泉・著 / 講談社(2017)


 著者の中満さんは、この本が出版された時点で国連軍縮担当事務次長・上級代表という肩書をお持ちです。あの有名な緒方貞子・前国連難民高等弁務官のもとで仕事をしながら、多くのことを学んだという方です。

 なお「危機の現場に立つ」もそうなのですが、緒方貞子さんについても、こちらで使用されている国語の教科書でこちらが紹介されていました。こちらの本です。


〇「緒方貞子──難民支援の現場から」

東野 真・取材・構成 / 集英社(2003)


 「危機の現場に立つ」では、国連で働くためには何が必要か、仕事をする上で最も大切にしなくてはならないことはなんなのかを具体的に、また非常な熱意をもって語ってくださっています。

 こちらの本は小中学生が読むことを想定してなのか、多くの感じにふりがなが振られており、内容は硬めながらも読みやすい印象でした。

 中満さんは仕事をする中で出会ったスウェーデン人の男性と結婚され、日本とスウェーデンの両方で妊娠・出産と子育てを経験されたかたで、両国の子育てをめぐる環境の違いについても個人的にとても興味深かったです。


 最後の本はこちらです。


〇「紛争地の看護師」

白川優子・著 / 小学館(2018)


 学生時代には何をしたいのかもわからず、あまり勉強に打ち込むこともなかった白川さん。そんな彼女が、あるときから一念発起し、苦手だった英語の勉強のために留学して、やがて国境なき医師団(MSF)に配属され、世界じゅうの紛争地帯へと出向いて必死の救命活動にあたった経験を、生々しく語ってくださる本です。

 傷つくのはいつも、弱い立場にある一般市民、特に女性や子どもたち。

 白川さんはしばしば泣きながらも必死に働くわけですが、そんなシーンではこちらも思わずもらい泣きをしてしまうほど。それぐらい衝撃的な、そしてリアルな内容の数々です。

 特に、傷ついた子どもたちの慟哭が心に刺さります。


 普段からなんとなく「戦争はダメだよね」と思ってはいても、やっぱり平和な日本にいると感覚は鈍っているもの。そんな感覚をたたき起こされる感じを受ける本でした。

 「戦争はぜったいにしてはいけない」「させてはいけない」と心に刻まれる本ではないかと思います。


 「危機の現場に立つ」と「紛争地の看護師」については、戦争や紛争のことばかりでなく、仕事をするとはどういうことか、望む仕事につくためにはどう考え、どんな努力が必要なのか……といった、「仕事」や「進路」にも関連するテーマも含まれた内容だと思われます。

 いまを生きる中学生の心に届くことを願いつつ、私も自分の置かれた場所で少しずつでも紹介していきたいと思います。

 なにかのご参考になりましたら幸いです。

 今回はこのあたりといたします。


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