62 課題図書2023
こんにちは。
ひさしぶりですが、今年もやっと読めましたので今年度の課題図書(中学校の部)のご紹介、まいります~。
あ、もちろんなるべくネタバレのないように気をつけますね。
〇「人がつくった川 荒川 水害からいのちを守り、暮らしを豊かにする」
長谷川 敦・著 / 旬報社(2022)
埼玉県から東京都に向かって流れる荒川。昔からよく氾濫する川だったために「荒川」と名付けられた川なのだとか。
普段、川はいつも同じ場所を流れているような気になっていますが(この本を読むまで、お恥ずかしながら私もぼんやりとそう考えていました)、実は川は時代によって流れる場所を変えながら存在してきたものだそうで。
特に江戸時代以降、土木技術が向上するにしたがって、人は氾濫しやすい川にあれこれと手を加え、知恵をしぼってつきあってきた……ということがわかる本。
江戸時代までは舟運が盛んだったものが、汽車が使われるようになったことで川の存在意義が変化し、川の在り方まで変えてきたという歴史。
その歴史にはもちろん、様々に努力してきた過去の人々の努力と知恵が現れています。そのことをより身近に実感させてくれる本です。
ほかの二冊よりも少し薄くて、写真や図解も多く読みやすいものでした。
防災に関しても、災害時、地元の小中学生がどんなに重要であるかを説いておられて、小中学生にとっても励みになる記事ではないかなと思いました。
〇「スクラッチ」
歌代 朔・著 / あかね書房(2022)
コロナ禍の中、さまざまに悩みを抱えて生きる等身大の中学生たちを描いた爽やかな一冊。まさかコロナを扱う作品がもう出てこようとは思わず、最初はびっくりしました。
バレー部部長でとんでもないおてんば、そして粗忽者の女子・鈴音。彼女は、コロナのために大切な中3の総体がなくなってしまい、ひどく腐っています。
一方、過去の水害のためにもといた家を離れ、数年前に鈴音のいる地域に引っ越して来た少年、千暁。彼は絵を描くことが大好きです。ですが大切な美術展がやっぱりコロナのために開かれなくなってしまい、思っていた以上に凹んでいました。
ある日、鈴音は美術室にあった千暁の絵に、まちがって墨を掛けて汚してしまい……。
けれどもそれをきっかけに、千暁はこれまで感じたことのない衝動に駆られて今までやったこともない技法で集中してキャンバスに向かうことになりました。
等身大の中学生が生き生きと描かれていて、最初、これは主人公たちと年齢の近いかたの作品かなと思ったのですが、そうではなかったようです。
作者の来歴を拝見すると、図書館司書や保育士をされた経験があり、今は小中学生と関わる仕事をなさっている、と。
……もしかして学校司書??? なんて思いましたが、そこはまあヒミツなのでしょうね(笑)。
作品が全体に、つらい状況でも生き抜こうとする若者へのエールになっていると感じたのですが、それも作者さまが普段からかれらと接していればこそなのかもしれないな、と思いました。
何度も胸が熱くなる展開があり、三冊の中では一番涙した作品でした。
〇「アップステージ シャイなわたしが舞台に立つまで」
ダイアナ・ハーモン・アシャー・著 / 武富 博子・訳 / 評論社(2022)
シャイで目立つことが苦手なシーラは十二歳の七年生。シャイだけれど音楽や歌うことが大好きで、いつか舞台に立って歌うことをちょっと夢見ています。
彼女の通うハリブルック中学では、毎年学校ミュージカルをすることになっていて、彼女も親友のキャシーに背中を押されるようにしてオーディションに参加。
それで、「ザ・ミュージック・マン」というミュージカルの中に出てくる男性4人のカルテットの一員になることに。
ヒゲをつけるとかおじさんの役だということで学校のみんなからからかわれ、最初はいやな気持ちになるシーナでしたが、才能ある男子ポールや先生方の後押しもあって、次第に練習にのめりこみます。
実はシーラ、自分でも気づいていなかったとある素敵な才能を持っていたことがわかります。それをきっかけに、これまでシーラを見下してばかりいた八年生のモニカが、なにかと嫌がらせをするように。彼女はミュージカルのヒロイン役になっていました。
モニカはボイストレーニングやダンスレッスンをし、シティ(ニューヨーク・シティのこと)でのオーディションを受けるのに忙しくしている女の子です。
忙しいためにミュージカル練習をしょっちゅう抜けるため、なんとシーラは彼女の代役を務めることになり……。
ほのかな恋、そして友情。
イジワルなやつへのちょっとした胸のすく展開。
いわゆる青春小説としての王道作品ですね。
ときおりはさまるユーモアもいかにもアメリカっぽい。シーラたちを応援し、最後まで楽しく爽やかに読了。
こちら、読了後に作者来歴を見ましたら、以前にも課題図書になっていた「サイド・トラック」の作者さまでした。なるほど納得。
しかもあとがきを見ると、作者のアシャー氏もやっぱりこの「ザ・ミュージック・マン」を学校で演じたことがあるのだそうです。しかも十歳で! すごい才能ですね。
はい。簡単でしたが、今年はこのような感じでした。
すでに今年の生徒たち向けの紹介文は書き終わったのですが、みなさんはどんな風に紹介しようと計画されているでしょうか。
そんなことをあれこれと考えてるのも楽しいですよね。
ともあれ、なにかのお役に立てましたら幸いです。
ではでは!