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57 職業を知る小説(1)


 こんにちは。

 本の紹介はひさしぶりですね。読んでいないわけではないんですが、他の小説やエッセイで忙しくてなかなかこちらまで手が回らず……。

 よろしかったらご覧になっていってください~。


 今回は中学生にお薦めするにあたって、特に職業や仕事について学べる小説を二つご紹介です。

 こちら地域の中学校では、三年間のうちのどこかで「職業しらべ」にあたる学習が行われています。実際に生徒たちが街の商店やら保育園やらに出向いての体験学習が行われているため、事前の調べ学習が必ず入るわけですね。

 調べ学習のためには、当然「ポプラディア 仕事・職業」とか「13歳のハローワーク」とか「なるにはBooksシリーズ」などを大いに活用するのですが、そんなことは司書さんなら当然ご存知だと思いますので、今回は小説のご紹介です。


○「神去(かむさり)なあなあ日常」(文庫)

 三浦しをん・著 / 徳間書店(2012)※単行本は2009年初版


 特に進路の希望も、これといった目標もなく、「卒業したらフリーターでもしようかな」とぼんやりと過ごしていた高校三年生の男子、平野勇気。

 ある日、担任の先生からいきなり「先生が就職先を決めてきてやったぞ」と言われてビックリ。あれよあれよと思う間に話が進んでしまって、卒業後、母親に荷物を持たされ「ここに行けばいいから」と言われます。

 もはや有無を言わせてもらえない状況。


 勇気は言われるまましかたなく、しぶしぶ新幹線に乗り、名古屋から近鉄に乗り換えさらにローカル線に乗り……。

 着いたところは関西の山奥の村。携帯すら通じない!

 通じないどころか、迎えに現れたなぞの男にいきなり携帯の電池パックを抜き取られて沢にぽちゃんと投げられる。

 もちろん勇気くんは大抗議するのですが、

「どうせ圏外や、必要ないやろ」と一蹴されて……。


 連れていかれたのはそこからさらに山奥の、神去(かむさり)地区。

 そこで勇気は、この地で昔から行われている日本の林業を実地で体験することに。体験とは言いましたが、これはれっきとした仕事です。つまり就職だったのでした。


 最初は文句たらたらで、つねに逃げる機会をうかがってばかりいた勇気でしたが、先輩たちと一緒に厳しい山の仕事にたずさわり、村の人々との交流や昔ながらの謎の多き祭り、そしてとある山の不思議な現象などなどに出会ったりするうちに、どんどんこの村と山の人々に惹かれていき……という物語。ちょっぴりファンタジー風味もいたします。

 

 全体に、勇気くんの一人称による語りなこともあって、非常に軽い語り口で読みやすさは抜群です。

 あっ、もちろん彼の恋についてもちょっとだけ語られます!

 直紀さんという年上の美人女性のことが気になってしょうがない勇気くんなのですが、さてさて彼女との仲はどうなっていくのか、そのへんも読みどころでしょうか。


 あとがきにもありますが、三浦しをん先生は非常にていねいな取材をされる作家さんとのことです。今回も巻末を見ると「三重県環境森林部」や「尾鷲市水産農林課」「松阪飯南森林組合」などなど、さまざまな林業にかかわる団体の名前が挙げられていました。

 それだけに、語られる林業の世界のエピソードにはいずれも生々しい臨場感とリアリティがあります。

 現在の日本の地方や林業がかかえている問題も浮き彫りに。


 この本では林業についてですが、こうして楽しみながら小説を読みつつ、仕事と職業について学ぶ入り口にもなる、すぐれた作品ではないかしらと思いました。


 あ、少し長くなりましたので、もうひとつの小説については次回またご紹介したいと思います!


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― 新着の感想 ―
[一言]  仕事をテーマとした小説はさすがに捜して読んだ事が無かった。  実用書でこんな所ではどうでしょう。 『天職が見つかる女のお仕事バイブル』  お勧めです^^;  職業、どんな仕事も『職業意識…
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