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49 「勾玉シリーズ」

 こんにちは。

 今回も本の紹介となっています。

 それもだいぶ前に「グリフィンとお茶を」でご紹介した、荻原規子先生による勾玉シリーズを!

 ご存知のかたも多いでしょうけれども、よろしかったらお付き合いくださいませ。


 こちらのシリーズ、実はずっと前からうちの学校図書館にもあったのですが、なかなか手に取れずにおりました。……えっと、個人的に少女が主人公の作品を読むのがあんまり得意ではないというのもありまして(苦笑)。

 でも、読んでみて後悔しました。

 正直、この作者さまの手がける作品の女の子たちの造形は、やっぱり私が苦手とするタイプではあるのですが、それでもぐいぐい読まされてしまうのです。

 さすがの筆力! と申しましょうか……。

 ということで以下、簡単にご紹介を。


○「空色勾玉(そらいろまがたま)

 荻原規子・著 / 徳間書店(1988年・改版1996年)


 勾玉シリーズ第一作。

 以前ご紹介した「わたしたちの本棚」にも選ばれている、言わずとしれた名作です。

 神々がまだ地上におられたという古代の日本を舞台に繰り広げられる、古事記をもとにした和風ファンタジー。


 (かぐ)大御神(おおみかみ)の双子の御子と、(くら)の氏族とが争う戦乱の世。主人公狭也(さや)は、幼い頃に自分の氏族からひきはなされてしまった(くら)の御子姫なのですが、光の側を愛し、あるとき村へやってきた美しい輝の御子に誘われて、彼のもとへ行ってしまいます。

 そこにいましめられていた《剣の主》稚羽矢(ちはや)(少年なのですが、最初は少女の格好をしています)との出会いから、彼女の運命は大きく変転しはじめて……。


 驚くべきなのは、この作品が最初に発表されたのが、作者さまが29歳のころだということ。もちろん、これがデビュー作。

 恐るべき才能に、こちらまで身が引き締まる思いがしました。

 


○「白鳥異伝(はくちょういでん)

 荻原規子・著 / 徳間書店(1991年・改版1996年)


 勾玉シリーズ第二作。こちらも古事記、ヤマトタケル伝説をもとにした物語。

 昔、川に流されて来た男の赤子。赤子は拾われて小倶那(おぐな)と名付けられ、その家の娘、遠子(とおこ)とともに双子のように育ちます。

 しかしある日、朝廷から、年は上ながら小倶那(おぐな)そっくりの容貌をもつ大碓皇子(おおうすのみこ)がやってきて……。大碓は彼を小碓(おうす)と名付けて自分の影(つまり影武者ですね)として都へ連れてもどります。


 やがて小倶那の本当の(そしておぞましい)血筋が明らかになります。《大蛇(おろち)(つるぎ)》の主となった彼は、剣の力にあやつられるようにして、勾玉を守る(さと)だった遠子の故郷をほろぼすことになってしまうのでした。

 遠子はこの危機をなんとかするため、小倶那を殺す決意をして、各地を旅してバラバラに存在する勾玉を集め、「死の首飾り」を作ろうとするのでしたが……。

 ラストまでハラハラどきどきの展開。終盤は止まれるものじゃありませんでした(笑)。



○「薄紅天女(うすべにてんにょ)

 荻原規子・著 / 徳間書店(1996年)


 双子のようにして育ってきた、同い年の叔父と甥、藤太(とうた)阿高(あたか)。ふたりは切っても切れない仲で、村のみんなから「二連」と呼ばれて暮らしていました。

 藤太はだれにも言わなかったのですが、阿高が眠っている間、不思議な女が彼の体を支配して予言めいたことを言います。

 どうやら彼女は蝦夷(えみし)の女で阿高の母らしく、すでに亡くなっているものの、勾玉を守る巫女だったというのですが……。


 一方、都では皇女(ひめみこ)苑上(そのえ)が勾玉の伝説を知り、弟皇子と入れ替わって男装になり、宮廷を抜け出して一連の事件に巻き込まれていきます。

 この阿高と苑上が出会ったことから、事態は急展開。

 毎回、勾玉にまつわるスペクタクルな現象がおこるのですが、これは描写が特にすごかったように思いました。



 「勾玉シリーズ」と呼ばれているものは以上の三部作とされていて、一応ここまでではあるのですが、世界観からいってこの続きと見てよいだろうと思われる作品がまだあるので、こちらも合わせて紹介しておきます。

 ただしこちらには、もう勾玉は出てきません(タイトルの通りで、「空色勾玉」は青い勾玉、「白鳥異伝」は白い勾玉、「薄紅天女」は赤い勾玉がそれぞれ登場しています)。



○「風神秘抄(ふうじんひしょう)

 荻原規子・著 / 徳間書店(2005年)


 平安末期、平治の乱のころを舞台に描かれる歴史ファンタジー。

 平治の乱で源善平(みなもとのよしひら)について戦いに参じていた主人公・草十郎(そうじゅうろう)は、戦に敗れて落ちのびる途中、善平の弟・頼朝を救うためにあるじの一行からはぐれてしまう。


 どうにか生き延びたものの、善平の死を知って生きる目的を見失った草十郎は、六条河原で善平たちの魂鎮(たましず)めの舞を舞う少女・糸世(いとせ)に強烈に惹かれるものを感じ、笛でその舞に参加する。

 すると、世にも不思議な現象がまきおこり……。


 笛吹きとしてこの世ならざる力をもつ草十郎は、やがて「鳥彦王」と名乗る、ものを言うふしぎなカラスと意思をかよわせ、自分の本当の能力を知ることに(「空色勾玉」を読んでいた読者は、このカラスの名前で絶対にニヤリとするはず!)。

 後白河上皇や空海など、歴史上の人物も多く登場する歴史ものとしての側面もありながら、やっぱり心おどる和風ファンタジーとなっています。

 作中にでてくる歌はすべて「梁塵秘抄」からとったものだそうです。



○「あまねく神竜(しんりゅう)住まう国」

 荻原規子・著 / 徳間書店(2015年)


 「風神秘抄」の後日談にあたるお話。主人公は伊豆に流された若き日の源頼朝に。全編、数えで十五歳になる彼の視点によって描かれていきます。

 「風神秘抄」での主人公である草十郎と糸世のその後が垣間見える物語。

 ちょうどいま大河ドラマで「鎌倉殿の13人」をやっていることもあり、うまくもっていけば生徒たちにも興味をもってもらえそうですね!



 以上のような感じなのですが、もしこれをきっかけに、未読のかたのお手にとってもらえたら紹介したかいがあるというものです。

 これをきっかけに「古事記」や「梁塵秘抄」などに興味を持つ生徒もあるかもしれませんね。


 中学生にはうまく勧めてみないとなかなか難しそうではあるのですが、日本人にこそ書ける、そして日本人にこそ読んでほしい、そんな作品群ですからね!

 ぜひとも手に取ってほしいものです。


 ではでは、今回はこのあたりで!


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