48 AIとアンドロイドに関する本
こんにちは。
今回も本の紹介となっています。特に、改訂された中学国語の教科書(光村図書)で紹介されているものを中心にしております。
そして前回に引き続き物語以外のもの、特に人工知能に関する本を。
○「AIに心は宿るのか」
松村 仁・著 / 集英社インターナショナル(2018年)
平易な文章で、中学生にも分かりやすく書かれたAI(人工知能)の入門書。チェスや碁でプロ棋士を負かしたAIの紹介や、汎用AIを作ることの難しさが具体的に紹介されています。
後半には棋士・羽生善治さんとの対談も。
○「人工知能の核心」
羽生善治・NHKスペシャル取材班・著 / NHK出版(2017年)
棋士・羽生さんはAIに非常な関心と造詣をもっておられ、こちらはその深い理解と洞察に満ちた本。AIに関するNHKの番組取材にも関わり、その中で出会った研究者との話を織り交ぜつつ、AIの現状と未来について考察しています。
けっして楽観論ばかりではないながら、悲観論とも一線を画し、全体にバランスの取れた一冊となっています。
特に食べログの例にはうならされました。
こうした小説サイトやネットショップなどでも「星」による評価が注目されるわけですが、そうしたものにばかり頼って人間が自分でものの価値を判断しなくなると、「隠れた名店」などはどんどん消えていかざるを得ない。果たしてそれでよいのだろうか……?
といった問題の投げかけが、とても興味深かったです。
○「人間の未来 AIの未来」
山中伸弥・羽生善治・著 / 講談社(2018年)
ご存知iPS細胞の研究者にしてノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥博士と、将棋の棋士、永世七冠の羽生善治さんとの非常に興味ぶかく心おどる対談集。
ざっと話題を紹介しますと、
「iPS細胞の最前線でなにが起こっていますか?」
「なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?」
「人間にできるけどAIにできないことは何ですか?」
「十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?」
ほらほら、もう読みたくなってきませんか??
対談集なので非常に読みやすいです。中学生にオススメなのも理解できます。
○「アンドロイドは人間になれるか」
石黒 浩・著 / 文藝春秋(2015年)
幼い頃から親に「人の気持ちを考えなさい」と言われ、「人の気持ちとはなにか」「人間とは何か」と考え続けて今に至っているという石黒先生。
先生が目指したのは、人に近い存在としてのアンドロイドを作ることでした。
これまでにも桂米朝師匠のアンドロイドやマツコ・デラックスさんを模したマツコロイド、美女の姿をもつジェミノイドFなど、さまざまなアンドロイド開発を行ってきており、この本はそれらを紹介しつつ、結局のところ「人間とはなにか」を見定めようとしてきた先生の長い活動の記録ともなっています。
さて、ここからは教科書には載っていませんでしたが、そのほか私が読んでみて興味を覚え、うちの図書館にも入れてみた関連本などを載せておきます。
○「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」
新井 紀子・著 / 東洋経済新報社(2018年)
筆者はAIで東大合格を目指すという「東ロボくんプロジェクト」開発責任者であり数学者である先生です。
2018年現在での東ロボくんの成績と、AIが得意なこと、不得意なことを挙げ、人間がAIに仕事を奪われないようにするためのヒントが書かれています。
この本の場合はとくに読解力に重点を置いて語られており、現在の中高生に対して行われた読解力をはかるテストの例題とその正答率が示されていてとても興味深い内容になっています。
○「スマホ脳」
アンデシュ・ハンセン・著 / 久山 葉子・訳 / 新潮社(2020年)
すっかり私たちの日常に浸透してしまったスマホ。でも、その脳への影響についてはまだはっきりとはわかっていません。
人類の脳は1万年前からほとんど変わっていないのに、こうして環境がどんどん変化していくことについていけていない、とハンセン氏は語ります。
スマホが今の子どもたちの脳にどんな影響を与える可能性があるのか、その怖さとうまく付き合っていく方法について語られます。
当然のことなのですが、紹介したいずれの本も、最新技術に関連する内容なだけに今後早ければ数年で内容が古くなってしまうと考えられます。
こうしたジャンルの本の宿命ともいえるのですが、現代と未来を生きていく子どもたちがこれらの本を手に取って、少しでも自分の未来の生き方について考えるきっかけになればよいなと思っています。