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22 補修作業あれこれ


 今回は、わりと続けての更新です。

 お付き合いいただければ幸いです。


 今回のお題は「補修作業」。

 補修と一言でいっても色々あります。

 うちの学校図書館の場合、なにしろ古い学校なので古い本が多いという話は以前もさせて頂きました。

 初版年が古すぎて、すでに誰にも手にとってもらえないような本はだいたい除籍・廃棄処分になるのですが、中にはそうできないものもあります。年鑑や地域資料などがそうです。

 それ以外のもので廃棄するかしないかの目安は、初版年が2000年以前かどうか。それを1年でも過ぎていれば、たとえ20年近く前の本でも一応は置いておくことになります。

 そうすると、大切なのは補修作業。

 埃を払い、それが可能な紙質なら固く絞った雑巾などで汚れをふき取ります。

 さらに、本が傷んでいる場合や、ブッカーというビニールコーティングがされていない本の場合、修繕をしたりブッカーを貼ったりという作業になります。

 年度の初め、特に一学期は大量に本を購入してそれを受け入れる作業やら新入生へのオリエンテーションやらで忙しいため、補修作業は大体二学期と三学期が中心になってきます。


 ここでブッカーについて、ご存じない方のために少し補足します。

 基本的には、裏に糊のついた透明なシール状のビニールシートみたいなものと思ってくださると良いかと思います。それを、しわにならないように気をつけながら本の表面に貼っていくのが作業の中心になります。

 私たちの地域では、配属される前の研修で文庫本を使って簡単に貼り方のレクチャーが行われました。これ、慣れないと結構難しいです。定規などを使って、ぴっちりときれいに貼らないといけませんし。

 とはいえ私はもともとが美術系でしたし、個人的に同人活動などもしていたこともあって、さほど違和感なく作業に慣れることができました。


 実はうちの学校は、もともと図書館流通センター(TRC)へ本を注文するときに、最初から「すべての装備をした状態で納品」という方法を選択しています。

 つまりバーコードラベル、背ラベル、さらにブッカーもかかった状態で最初から納品されてくるのです(なんと、ブッカー作業はすべてあちらのサービスです)。

 ですから、普通ならブッカーを貼らなくてはならない作業はほとんどない……はず、だったのですが。

 いかんせん、長いこと専任の司書のいない状態できた学校のため、実際はそんなに甘くはなかった。

 調べてみたら、まあ、あるわあるわ。

 ブッカーなしで納入されている本の多いこと多いこと。


 まあ、ブッカーが貼られてないぐらいのことならいいのです(いや、ブッカーが意外と高いので、一概にいいとも言い切れませんが)。作業そのものはもう慣れましたし、貼るだけならさほど時間は取られませんので。

 今なら一冊、十分もかかりません。いや、さすがにひたすらそれだけやってたら、気が狂いそうになるとは思いますけれどもね!

 実際、TRCではずっとそれだけを仕事としてやっている職人さんがかなりおられるそうです。皆さんにはいつも感謝しております。ありがとうございます!!


 さて、問題は本のカバーの下、本そのものにバーコードラベルと背ラベルが貼られた状態で納品されてしまっている本です。

 ブッカーのない状態で何十年も提供されていた本だと、特に人気のある本だった場合、かなり傷みも激しくなっています。もともとのカバーがぼろぼろになってしまっていることも多いです。


 この場合、まずは本体に貼られたラベルをきれいに剥がすところから作業をしなくてはなりません。

 ご存じのかたも多いでしょうけれども、このラベル剥がしにおいては、圧倒的にソルベントが神です(笑)。デザイン系の作業をしている方ならよくご存じでしょうけれど、これは実はお掃除にもかなりお役立ちの商品です(べつにどこの回しものでもないですが)。

 そこいらのシール剥がしの商品より格段にきれいに剥がれますし、マジックの跡やテープの跡、手垢なんかも本当に綺麗に消えるので、大変おすすめです。

 揮発性が非常に高くてあっという間に消えるので、いっさい痕も残りません(ただし、まずは目立たない場所でためしてみてからにしてくださいね!)。

 そして、十分に換気をして使ってくださいね。あと、生徒や児童の手の届くところには絶対に置かないでください。火気ももちろん厳禁です。一応シンナー系なので!


 ただ、いかにその「神なソルベント」があったとしても、このシール剥がし作業はなかなかに手間を取られます。「なんでもとれる」とは言いましたが、かなり古いタイプのシールだとぼろぼろになってはがれないことも多いですし。私なんかにしてみれば、できればしなくて済んで欲しい作業のひとつです(オイ)。

 実際問題、それを補修してブッカーを掛ける時間と本の値段とを天秤にかけて、私の時給分より安いし、まだ販売されている本だということになれば、新たに本を買い直す場合も当然あります。つまりは時間と人件費とを天秤に掛けるわけです。


 さて、ここで問題です。

 後になってこんなややこしい作業をしなくてはならないにも関わらず、なぜこんないい加減なやりかたで納入された本が多いのか。

 これは完全に、いままで学校に専任の司書がいなかったことの弊害と言えるかと思います。

 先生方はお忙しい。それも、大変にお忙しい。分掌で図書館担当になった先生も、クラス担任をなさっていたら本当に時間がなくて、ごくごく最低限の作業しかできないのが普通でしょう。

 でも、図書館に割り当てられている図書費はきちんと年度内に使ってしまわなくてはなりません。本をきちんと選書して受け入れ作業をして……といったことは、普通の先生方には時間的にも非常に難しいことです。


 で、どうなるか。

 年度末ぎりぎりのタイミングになってから、たとえば事務の方に「早く使っちゃってください」とせっつかれて、慌てて選書用の冊子を繰って大量発注することになるのです。

 それも、一冊一冊ていねいに吟味するような時間がないため、つい何十冊もあるシリーズものを一気にどばっと購入することになる。さらに、ブッカーなしで本体にラベルを貼るだけなら最速で届くので、ついついそれを選択してしまう。

 そういう状態が何十年も続けばそれは、当然こういう結果になりますよねえ……(遠い目)。これはまあ、ある程度やむを得ないところもあるのですが。


 ともかくも。

 そういう荒いやり方で選書をすると、多くの場合、結果として当の中学生たちが手にとらないような本が何十冊も購入されてしまっている……ということになりがちです。実際、それら大量注文されたシリーズものは、放っておくと誰も手にとってくれません。

 実はうちの学校にも、小学生だったら喜んで読んでくれそうな読み物のシリーズが何セットかありました。けれども、まだ本当に新しい本なのに、中学生たちはだれも手に取らない……というせつない状況。まさに本末転倒です。

 例をあげますと「水木しげるのおばけ学校シリーズ」や「ズッコケ三人組シリーズ」などがそうです。いやもう、作者様がたには大変申し訳ないのですが、中学生には悲しくなるほど手にとってもらえない……。


 実はそちらは近隣の小学校さんへ声をかけて、寄贈させていただきました。

 それらの本を買うのだって公費、つまりはみなさんの税金で賄われているからです。本来、一銭だって無駄にしてはいけないお金ですもんね。だからこそ、選書は本当に大事なのです。

 ちなみに、小学校さんの図書館の本は、かなり汚れたり傷ついたりしたものが多いので、大抵は喜んでくださいます。先日も、そこの校長先生からめっちゃお礼を言われてしまって恐縮しました(苦笑)。先生はもうほくほくしながら、自転車に本を乗せて帰っていかれました。


 補修の話が、なんだかだんだん選書の話になってきてしまいましたね。

 ということで、今回はこのあたりで終わりたいと思います。

 ここまでのお付き合いをありがとうございました!


 それではまた、次の機会にお会いいたしましょう。


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