17 学級文庫
これまた、かなり時期外れです。申し訳ありませんが、何か来年度の参考になればと書いてみました。
さて、学級文庫。
皆さんもご存知の通り、これは生徒が自由に読めるように各クラスに設置された複数の本のグループのことだ。小学校ではお馴染みだろうし、中学校でも普通に取り入れている学校は多いと思う。
ところが。
実はうちの学校では、この設置が長年なされないままになってきていたのである。理由は至って簡単だ。私が配属された中学校が、ちょっと前まで荒れた時期のある学校だったからである。
別に学級文庫に限った話ではないのだが、職員会議などでとある先生が「こうしてはどうか」等々の提案をしても、
「なにか問題が起こったらどうするんだ」
「本が無くなったら誰が責任を取るんだ」
「だれが管理するんだ、そんなヒマはないぞ」
云々の反対意見がぽんぽん出て、なかなか軌道に乗らなかった……というのが実情であるらしい。
そんなこんなで、これまでは学校全体として学級文庫の設置はなかった。が、一方で特に本の好きな個々の先生方の裁量で、ご自分の担任しているクラス内にご自身の蔵書を入れて学級文庫の体にしていたという事例があった。これには本当に頭の下がる思いがした。
それも、ここまでの事情を考えればまあ無理のない話ではあった。
けれども、である。
本というのは、人の手に取られ、読まれなければ、文字が印刷されたただの紙の集合体でしかない。人の手に渡り、読まれてはじめて「本」としての意味をもつのだと私は思う。
司書という立場として言わせてもらえるなら、この仕事の最大の目的は、人の手に本を届けることだ。そして最大限、それを利用してもらうこと。もしもその結果、たとえ本が紛失することになっても(さすがに『良い』とまでは言わないが)本が利用されないよりは数段マシ。そういう考え方でいる。
とは言いながら、今年に入るまではなかなか学級文庫を入れるところまで行くことができなかったのだったが。
遂に今年、とある国語の先生が特に強く言ってくださり、学級文庫の全クラスへの配置が実現したのである。
というわけで、4月に入ってから私は全クラス向けの学級文庫のセッティングの仕事にもかかっていた。
段取りとしては、大体以下の通りである。
1.まず本棚から、副本のあるタイトルを重点的に抜き出す。
2.各類ごとに、あまり偏らないように気をつけつつ各クラスへ配分(1クラスにつき18冊)。
3.Excelで本のタイトルのリストを作成(A4サイズ)。
4.リストをそれぞれラミネートし、それぞれの学級文庫へ添える。
5.それぞれに貸出ノートを作成し、添付。
6.図書委員会で運用方法について説明。
7.担任の先生にお預けし、各クラスに設置していただく。
8.以降は一学期ごとに図書委員が隣のクラスへ移動させ、巡回させる。
こんな感じで始めてみた。
ちなみに「副本」というのは、同じタイトルで二冊以上あるもののことだ。ここで前回お話しした過去の課題図書が大いに役に立つことになる。
なお、貸出ノートについては当初入れていなかったのだけれども、クラス担任の先生のお一人が独自に貸出プリントを作成してくださったのを見て、「あ、いかん」と作ることにしたという経緯だ。
図書委員には、朝と放課後にリストを見て学級文庫をチェックしてもらい、返却の滞っている生徒への声掛けもしてもらう。学期の最後には1組は2組へ、2組は3組へと図書の移動を行ってもらう。
今年は最初ということだったし時間もなかったので私が選定してしまったけれど、本来はちゃんと時間を取って、図書委員に選ばせたほうが有意義だろうと思われる。実際、そうしている学校もたくさんあると思う。うちも、次回からはそうすることを考え中である。
なお、学級文庫の入れ物については、どんなものがよいか学年主任の先生方とも相談したうえで百均へ探しに行った。
最初は図書委員が移動させることも考えて、一気に運べるように持ち手などのあるプラスチックケースを想定していたが、あいにく店にちょうど良いものがなく、スチールの枠に布張りのものを選んだ。ひとつ四~五百円相当である。
これを全クラス分となると結構な出費になってしまったけれど(お陰で予定していた他のものが買えなくなってしまった……!)プラスチックのような冷たく安っぽい感じもなく、かえって良かったかなと思っている。
できれば事後アンケートなどを取ってみて、今後はどんなタイトルを入れて欲しいかなど、生徒から聞けるといいかなあと考え中である。
なお、「本は読まれてはじめて本になる」のくだりは、自分で書いておきながらめちゃくちゃ自分自身へのブーメランにもなり、胸が激痛にさいなまれました(笑)。ぐはあ。
アマチュアもの書きの皆さま、ごめんなさい……。ま、ぼちぼち参りましょう~。