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11 授業支援


 なんだかんだ言っているうちに、もう新年度が始まってしまった。

 毎度、気合を入れ直す四月である。

 とはいえ私の場合、始業式も入学式も終わってからの出勤のため、新年度の初出勤はもう少し先になるのだけれども。

 始まり次第、あれもせねば、これもせねばと心の()く春である。


 ということで、今回のテーマは「授業支援」。

 まず、授業支援とは何か。

 これはもう文字通りではあるのだけれど、要するに生徒たちの授業を下支えする活動のすべてを指す言葉である。


 学校図書館は、これまで単に、本が質・量ともに充実していてよく管理されている「読書センター」としての役割が主なものだったかと思う。

 しかし、今後はそれに加えて「学習センター」、さらにはより多くの情報を幅広く検索できる「情報センター」としての役割が求められていくと言われている。

 それに伴って、今後は図書館内、あるいはすぐ隣にネット検索の可能なコンピューターが設置されている風景が当たり前になっていくことと思われる。まあ、うちみたいな小さな公立中学校では、まだまだ先の話ではあるけれど(ちょっと涙)。


 さてこうなってくると、学校司書の役割も今までとは当然、変わってくることになるわけだ。

 今後は特に、単純に授業のための資料を集め、提供するだけにとどまらず、実際の授業により深く関わっていくことが求められていくだろう。場合によっては司書自身が著作権に関することや、調べ学習の際の引用の方法まで、生徒の前で話をすることが求められてくる。

 昔は多分、司書のことを「図書館(図書室)で黙々と本の整理をしたり、貸出しカードにハンコを捺していればいい仕事」と思っていた人が多いだろうと思われる。いや、それも無理はない。なにを隠そう私自身が、わりと最近までそうだったからである(!)。


 けれども昨今、司書はすでに、かなりアクティブでコミュニケーション能力に()け、むしろ八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍のできる人が求められるようになってきているのではないだろうか。

 なにしろ授業支援ともなれば、図書館で行われる授業が当然増える。いちいち教室まで蔵書を運ぶよりも、クラス全員が図書館に来たほうが面倒がないからだ。そして、それに伴って司書が生徒の前で、先生方と同様に話をする機会が増えるはずである。つまり、司書がリアルに授業の一角を担うことになるわけだ。


 「私は人付き合いが苦手だから」とか、「大勢の前で話すのはどうも苦手で」とか言っていたのでは、昨今の学校司書はとても務まらないお仕事に変貌しつつある。それは事実だろうと思うし、今後はもっともっとそうなっていくはずだ。

 単なる「内気な本好き」で、「人と目を合わせて話すのは苦手です」というのでは、生徒たちや先生方の要求に十分に応えられる司書になるのは難しい。

 いやそれも、もちろん本に関する豊富な知識という下地が当然あってのことだけれども(私自身はそこがまだまだ発展途上・苦笑)。


 ということで、授業支援での具体的な内容だが。

 特に著作権のこと、剽窃(ひょうせつ)がなぜいけないかとか、他人の文章をどのように自分のレポートに引用するかなどの具体的な方法は、先生方にお任せするよりも、まずは専門のエキスパートとして司書がしっかりと説明できなくてはならない。

 ついでながら、その時に配布するプリント等を作成するのもまた司書の仕事だ。うちの場合は、ここでも例の図書館キャラクターが大活躍する。


 たとえばWikipediaウィキペディアは情報の手がかり(キーワード)を探すぶんには使ってもいいけれども、その内容を鵜呑みにしてレポートに書くのはNGになる。

 生徒に対しては、なぜそれがダメなのかまで、具体的に説明する必要がある。

 また、どこかのHPを検索してその内容を書く場合、まず個人のサイトなどは避け、官公庁や市のホームページなど背景のしっかりした団体のものを閲覧するよう勧める。さらには、「閲覧した日付や時間まで入れるとよりいいよ」といったアドバイスも行う。ネット上の内容は、日々書き換えられているからだ。


 資料を集める活動についても、もう少し。

 実はこちらの地域では、すでに学校図書館と公共図書館との連携がはかられている。自館の資料だけではどう考えても、数十名いるクラス全員が調べ学習をするには絶対数が足らないからだ。

 そのために、こちらでは学校から公共図書館へ依頼して、予定している授業用の本をテーマごとに数十冊単位で貸し出してもらえる制度がある。他ではどうか知らないけれど、この地域ではこれを「テーマ本集め」と呼ぶ。本はその担当の図書館が、市内全域の市立図書館から集めてくださる。

 必ずしもこちらから具体的な本のタイトルを示して申し込まなくても、公共図書館のプロフェッショナルな司書さんたちが「このテーマの授業ならば」とある程度本を選定してくださるので、こちらもとても助かっている。

 ただし、かなり事前に申し込まなければならず(どんなに遅くとも三週間前まで)授業案を考える先生方も大変だし、同じ本は二冊までしか借りられないという制限つきではあるけれども。


 これまでのところ、うちの学校では国語科、社会科、総合の授業などで、この「テーマ本集め」をさせて頂いた。

 申し込む際には、事前に公共図書館の蔵書を調べ、その本の図書館内の整理番号を添えておく。そうすると、かなりあちらの司書さんの助けになるようである。

 また、前回依頼したけれども、どうも生徒の反応がいまいちで利用されなかった本などは細かくチェックしておいて、こちらから「この本は不要です」などのシートをつけておくのも大事だ。

 これから同様の活動を行う学校司書さんは、どうか参考にしていただければと思う。


 この「テーマ本集め」を公共図書館に依頼し、チェックして、最後に送り返すまでしっかりと管理するのも、もちろん司書の仕事だ。ちなみにこちらでは、本の受け取りは自分で行かなくてはならないが、返却は宅配便でOKということになっている。

 私自身は車がないので、引き取りは大抵、その授業の担当で車のある先生にお願いすることにしている。


 自校の図書館に市内すべての公共図書館から集められた多くの本が積みあがっているのは、なかなか壮観なものである。正直、「ああ、仕事したなあ!」と、ついにまにましてしまう。

 図書館に最初に入って来た生徒たちは、一様に目を丸くして「うわあ」とまず声をあげる。そうして本の裏側のバーコードなどを確かめ、

「あっ、こんな所の図書館から来た本なんや!」

「うお、すげえ」

 と、楽しそうに隣の友達と話している姿がよく見られる。どの顔も嬉しそうで、こちらまで嬉しくなる瞬間である。

 ちなみにこちらの中学校では、どんな授業をした場合でもとにかく各種「ポプラディア」(ポプラ社)が争奪戦になってしまう。文字が大きく、カラーの図版が豊富な小中学生向けの百科事典なのだが、実際、内容が本当によくまとまっているからだ。


 「テーマ本集め」は、毎回生徒にも先生方にも好評だし、私としても今後もぜひ続けていきたい活動である。

 と言うか、先生から「つづれさん、実はこんな授業がしたくて……」とお話が来ない限り取り掛かれない仕事でもあるので、実際はなかなか行えないのが実情であり、泣き所。


 しょうがないので先生方に配る「司書だより」やら何やらで

「どうでっか、司書はこんなのもできまっせ~?」

 と、大坂商人なみにあれこれアピールしまくる日々である。

 普段の職員室内での先生方のやり取りなんかも積極的に耳に入れておいて、なにかちょっとでも噛めそうなところがあれば、

「あ、良かったらこんなのもできますよ~」

 と、にこやかに入っていく。

 それらすべてが、生徒たちの利益に資することにつながっているからだ。


 やっぱり、学校司書にはコミュニケーション能力は必須……!

 内気がダメとは決して言いませんが(私だってけっこうそうだし)、積極的であるに越したことなし。

 と、そんなことを思う桜の花さく週末でした。

 皆さんもどうぞ、新しい学校、新しい職場等々で今年も頑張ってくださいね!


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