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三題噺をふる少女  作者: ◆smf.0Bn91U
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日課練習007.

どうも夕方の更新が難しい感じがする…しばらくはこのぐらいの時間で。

「初羽くん、好きだよ」


 彼女はボクの机に座り、真正面から見下ろしながらいつものように、恥ずかしげもなくボクに言葉をかける。


「あ……ありがとう……姫路さん」


 それにボクはいつものように、慣れることなく顔を赤くし返事をする。

 そんなボクを満足気に見つめながらいつものように、彼女は話を振ってきた。


「ねえ初羽くん、あなた昨日の大雨の時なにしてた?」


◇ ◇ ◇


「なに? って言われても……」


 休日だったからなぁ、と自分の行動を思い出してみる。


「昨日は買い物に行ってたから……雷が鳴るぐらいの雨が降ってるなぁ、って感じた時は――」

「えっ、ちょっと待って。買い物?」

「え、うん」

「誰と……?」

「一人でだけど……そんな寂しい奴なんて言わな――」

「なんでわたしに声をかけてくれなかったのっ!?」

「あ、そっちか~……」


 それは読めなかった。


「普通さ~、呼ばない? 好きって何度も告白してきてる女の子だよ~? 一人で出かけるならさ~、普通呼ぶっしょ」

「呼ぶっしょって言われても……」


 確かボク、彼女の連絡先を知らないような……。

 ……まあ、知ってても呼ばないだろうから、そのことをツッコむこともないか。


「服とかさ~、一緒に見てさ~、これ似合うとかしたいじゃん? デートっぽいことしたいじゃん? 最後にホテルと――」

「でも姫路さん」


 余計なことを言い出しそうだったので、口を挟んで言葉を止める。


「姫路さんなら、休みの日は友達と一緒に遊びに行ってるんじゃないの?」


 ボクとは違い愛想もよく、友好関係も広い彼女のことだ。誘ったところでとっくに予定が埋まっていることだろう。

 それをボクに合わせて――というと自意識過剰だが、そういうので予定を崩させてしまうのは、こちらの心が痛くなる。


「なに言ってるの。わたしの休日は初羽くんのために常に開けてあるに決まってんじゃん」

「…………」

「……まあ嘘だけど」


 そりゃそうだ。さすがにそれは嘘っぽすぎる。


「でも実際、昨日はずっと家に居てずっとオ○ニーしてるぐらい暇だったからさ~……誘ってくれても良かったじゃん」

「いやいや、無理だって、無理、うん」


 さり気なくぶっ込まれた下ネタについ照れが先行してしまう。

 それを見てニヤつく彼女。悔しい。


「じゃあ、姫路さんは昨日家で何してたの?」

「だからオナ――」

「以外でっ!」

「で、ってなると……まあ普通にエロサイトの徘徊かな~」

「ね、ネットサーフィンね」

「言い直すとそんな感じ」

「なんかでも、意外だね。友達と遊ぶかと思ってた」

「昨日は捕まらなくてね~……暇を潰してるしかなかったって訳よ。で、そんな時にあの夕立よ」

「あ~……」


 家に帰って親から聞いた話だけど、どうやら凄まじいゲリラ豪雨だったとか。

 雷が鳴り、近くに落ちたのかと思わせるほどの轟音だったとか。


「ホント、雷が鳴ったかと思ったら、急に停電してね」

「でもそんな真夜中でも無かったから、大丈夫だったんじゃないですか?」

「いやでもね、映画ってDVDであっても部屋を暗くして観ない?」

「見ますけど……」


 してたのはネットサーフィンでは? という疑問が湧いたが、掘り返しても再び顔を赤くさせられ

るだけなので黙っておく。


「そうやって観てるところで停電よ。映画途中で止まるし、その急に電源切れた負担でデッキの寿命が縮まったかと思うと気が気じゃなくなるし……」

「気にするのはそこなの?」

「しかも急に暗くなってテンパっちゃってさ。慌てて立ち上がって部屋から出ようとしちゃったせいでタンスの角に小指ぶつけちゃって」

「うわっ……!」


 容易に想像できる痛みに顔をしかめてしまう。


「小指の爪が捲れて血が出ちゃったのよ」

「ひぃ~!」


 なんて痛々しい!


「ちょっと見てみる?」

「い、いやいい!」

「いやいや、わたし自身が見て欲しいんだって」


 と言って、器用に足を押さえて順番に靴を脱ぎ、少し足を上げて左足の爪先で、右足の爪先の靴下を脱がしていく――って!


「ちょ、ちょっとストップ姫路さん!」

「なに? ここまで来て見ないって?」

「そ、そうじゃなくて! その……スカートの中が……」

「えっ……」


 スルスルと足を伸ばしながらソックスを脱がしていくせいで、左足が斜め上に伸びていく。それに反して右足は身体に寄せていく。そのせいで真正面にいるボクからそのスカートの中が薄っすらと見え……!


「っ!」


 バッと、両足を降ろして、太腿の間を思いっきり両手で抑える。


「……え?」


 その反応に、つい彼女の顔を見上げる。


「あ、いや、違っ……!」


 ……何故か、顔を真っ赤にしていた。

 ……ボクだって自分の顔が熱くなっているのが分かる。

 でもきっと、今だけならば、それ以上に彼女の顔のほうが赤いだろう。

 ……なんとなく、いつも彼女がボクを照れさせる理由が分かったかもしれない。

 この胸の高鳴りを、胸キュン、と言うのだろう。……きっと。

 ……何言ってんだろ、ボク。


「べ、別に照れてる訳じゃなくて……? その、自分でも自覚してなくて、思ってもいなかったことだから、その、ね……?」


 ここまでしどろもどろなのは本当に珍しい。

 そうか……見せる気が無い時に見られるのに――不意を突かれるのに、慣れていないのか……。

 ……いや、それを言い出すとそもそも……。

 ボク、実際に彼女自身から、性的なもの――というか、恥ずかしい行為や外見を見せてもらったことがない。

 いつも何か言われたり、ギリギリ見えるか見えないかをされるだけで、こんな……。


「あ~もう!」


 何を思ったのか。

 恥ずかしそうに降ろしていた靴下を引っ張り上げ、座っていた机の上から、脱いで落ちた靴の上へと飛び降りて、これまた器用に手を使わずに履いていく。


「本当は小指の怪我を見せて恐怖の世界がとか言ったり指先見せて初羽くんを照れさせる予定だったのに……! 今のこの状況がわたしにとっての恐怖の世界だよっ」


 その予定が崩れたのが全部ボクのせいだ、とばかりに苛立たしげに――照れを誤魔化すかのように少し言葉を荒げ、彼女はボクから離れていった。

 ……もしかして今日のこの出来事、昨日聞いたゲリラ豪雨よりも激しい嵐だったのではなかろうか。

お題は

 「雷」

 「タンス」

 「恐怖の世界」

でした。

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