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三題噺をふる少女  作者: ◆smf.0Bn91U
18/20

日課練習016.

一時間で完成しなかった。……いつもの時間にもう一本上げることが出来たら上げる。

「初羽くん……好きだよ」


 彼女はボクの机に座り、真正面から見下ろしながら、恥ずかしさを誤魔化すように平然とした態度を作りつつ、ボクに言葉をかける。


「ありがとう、姫路さん」


 対してボクは、相手の照れが分かるせいなのか慣れたせいなのか、いつもとは違い顔を赤くすることなく返事をする。

 それは隣に立つ幼馴染のコノも同様なのだが、彼女はいつも通りその告白を聞こえないフリをして答える。

 そしてその言葉を発した当事者たる彼女は、照れないボクに不満気な視線を向けつつも、いつものように話を振ってきた。


「ねえ初羽くん、小学校での夏休みの工作って何作ってた?」


◇ ◇ ◇


「夏休みの工作?」

「そ。あれ? それとも初羽くんの学校じゃあ無かった?」

「う~ん……自由研究的なものはあったけど……」


 でも何やったっけ……? 六年間フルで毎年あったはずなのにイマイチ思い出せない。


「ネネちゃんは?」

「あたしは……貯金箱かな」

「貯金箱? なんでまた」

「なんか、シャーペンとか、そういうのが貰えたような気がする……」

「あ、そういえばそうだったかも」


 ボクも少しだけ思い出した。

 あの頃はコノとのもまだ普通に話をしていたし、何度か一緒に夏休みの宿題を片付けたこともある。


「ボクが国語とか読書感想文とかを担当して、コノが毎日の天気とか算数とかを担当して、二人で写しあったっけ……懐かしいな~……」

「読書感想文の担当? どゆこと?」

「え? 二冊本を読んで、二冊とも別々の感想を書いて、片方をコノに渡して清書してもらうって形だけど……もしかして姫路さんって、夏休みの宿題をバカ正直に自分一人でやってたクチ?」

「いや普通そうじゃない? そんな友達と分担なんて普通は……」

「…………」

「…………」

「……えっ、するのっ?」

「まあ、確かに小学生の頃からそういうのをやってたボク達は、今思えばちょっとズルしてたかもな~……」

「で、でも、間に合わないより、マシじゃない?」

「ボクはそうだと思うけど」

「いやいや、普通に毎日地道にやってりゃ終わるっしょ?」


 外見からは想像もできないほど真面目なことを彼女に言われた。


「あたし、夏休みの宿題って最後の週にまとめてやる派だから……」

「ボクも……」

「真面目な外見の二人が一番不真面目ってのは私としてもどうかと思うわけだけど?」

「わけだけど、って言われても……」


 勝手な先入観を持たれただけだというのに……。


「そんなので、荒ぶる大学受験戦争には勝てないよ~?」

「大学受験か~……どうしようかな~……」

「えっ、初羽くん、大学行かないのっ!?」

「まあ、将来について明確なビジョンはないから、今のところは受験するつもりだけど……」


 でもボク、特別成績が良い訳じゃないからな~……行けても大した所には行けないだろうな~……。


「良かった~……大学行くんだ~……」

「? なんでそこまで姫路さんが安心するの?」

「いやだって、やっぱり一緒の大学行って、キャンパスライフってのをやりたいじゃん?」

「……あ~、そう……」


 そうか……下ネタを無くした分、こうした方法でボクを照れさせに来るのか……油断しないようにしないと。

 ……くそ、ニヤニヤされてしまった……なんか向こうに余裕を持たれるのが久しぶりに感じるな……。


「なんか、久しぶりに初羽くんを意図的に照れさせることに成功したかも……」


 向こうも同じこと思ってるし……。


「ま、でも、今回はそのことが目的じゃなくて……夏休みの工作といえば、ロボット作成だと思うの」

「ロボット!? あのビルぐらい大きなっ!?」

「小学生でそれを一人で作れたら間違いなく天才じゃない?」


 そりゃそうか。あまりにも突拍子もないことを言い過ぎた。


「じゃなくて、まあペットボトルロケットぐらいの大きさかな」

「でも、それこそなんで今話すの? 子供でも出来た?」

「初羽くんとの?」

「そんなことしたこと無いよっ!?」


 コノも彼女もとんでもないことを言い出す。


「いや実はね――」

お題は

 「夏」

 「ロボット」

 「荒ぶる大学」

でした。

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