日課練習014.
一時間で完成しなかった。目的持たせた会話って中々難しい。
「初羽くん、好きだよ」
彼女はボクの机に座り、真正面から見下ろしながらいつものように、恥ずかしげもなくボクに言葉をかける。
「あ……ありがとう……姫路さん」
それにボクはいつものように、慣れることなく顔を赤くし返事をする。
それは隣に立つ幼馴染のコノも同様で、このいつもの告白を視線を逸らして聞こえないフリをしている。
その言葉を発した当事者たる彼女は、照れるボクを満足気に見つめながらいつものように――。
「……恥ずかしい……」
「えっ?」
◇ ◇ ◇
――話を振って来なかった。
少しだけ顔を赤くし、目線を逸らし、ボソりと何事かを呟いた。……いや何事も何もキッパリと「恥ずかしい」と言ってるのが聞こえたけどさ……。
「箱に仕舞われて出荷されたい……どこか遠くに……」
「い、今までと何も変わらないと思うんだけど……急にどうしたの?」
「むしろ、今までどうして平気だったのか一昨日までの私に聞きたい」
あ~! と下を向いたまま頭を両手で挟み込むように抱える。
「……もしかして、あっさりと好きっていうのはビッチっぽい?」
「さあ……そこは、どうだろう……正直受け取り手次第だと思う」
「初羽くんは?」
「ボクは……まあ、今は思わないかな」
ちなみに、今日の彼女の服装はいつも通りギャルっぽい。スカート丈を短くしたりちょっとした着崩しがオシャレに見えて、キッチリと着ている女子が多い中目立っているが、決して浮いてはいない。
見慣れているから、と言われればそれまでだけど、個人的には浮いていないのは似合い過ぎているからだと思う。
「そっか……じゃあやっぱり、言い続けないと」
「いや、恥ずかしいんなら無理しなくても良いんじゃ……」
「無理する。だって初羽くん、伝えないと信じてくれ無さそうだし」
「…………」
まあ、言い返せないよね。
だって今まで何度伝えられてきても、ドキドキしても照れても、ボクはまだ彼女が、本当にボクのことを好きだとは、信じていないんだし。
「は~……とりあえず、前まで言ってた感じを思い出すしか無いか~……いや、案外ネネが平気で言えるかも……?」
「え、なんで?」
「こういうのって、案外他人がいてくれた方が言えたりするもんだし~」
いつもの調子に戻ってきた彼女が顔を上げる。
「っていうか、今日ネネいないのはなんで?」
「あれ? 連絡来てないの?」
「来てないけど……初羽くんのところは?」
「そもそも連絡先を交換してないので……」
「……初羽くんとネネって、幼馴染だよね?」
「元ですよ、元」
「それでも再会したんならせめて連絡先交換しとくぐらいはしとくとかさ~……」
「そういうのは姫路さんに任せているので」
「わたしゃ初羽くんのマネージャーかっ!」
おぉ……! 彼女にツッコまれるのって、なんか新鮮だな……。
「……まあ、今日は大人しく天に感謝しつつ、初羽くんと二人で会話することにしよかな」
「はぁ……」
ま、結局少し前の状況に戻っただけか。
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………え、無言?」
ついツッコんでしまった。
「あ、そういうネタ?」
「いや……改めて話そうと思ったら、なんか緊張して」
「なんで?」
「……ビッチっぽく見せるって意識してた時は、なんだかんだで皮を被ってられたからかなぁ……あ、やらしい意味じゃないよ?」
「突然の下ネタにビックリ」
正直油断していた。
「あ~……こういうの止めて新しい目的のために邁進する予定だったのに~!」
「新しい目的?」
新しい自分ではなく目的とは、中々に変わっている。
てっきりビッチ止めで新しくなるとかそういうのかと思ってたのに。
「そう。……まあ、ビッチっぽいのが初羽くんの好みじゃないってのは分かったからさ」
だから……と一瞬だけ言い淀んで、
「……そういうのは止めて、初羽くんを下ネタ以外でもっと照れさせられるようにしよう、って」
「いや、照れさせるのを止めない……?」
「それは無理」
「なんで?」
「だって、顔を真っ赤にする初羽くん、可愛いし」
「…………」
ボクが可愛いなんて、ホント趣味が変わってる。
ボクなんてホント、ただのオッサン顔に近付いてる男子高校生でしかないのに。
「そう、そういう顔」
……ホント、変わってる。
「はぁ……程々にしてよ、マジで」
まあもう半ば諦めてるから、ため息を吐きながらそういうしかないんだけど。
お題は言ってた通り
「天」
「箱」
「新しい目的」
でした。




