++プロローグ++
イメージが湧いたんで書きました。更新頻度の遅い連載です。
私がその娘を好きになったのは、今から一月前の事だった。
クラスの男子たちに毎日の様に殴られ、蹴られて虐められていた私は、もう死のうかと思った。
その日、私は学校の屋上のフェンスを乗り越えて縁に立った。一歩でも前に足を出せば、即あの世逝きである。
「ダメーッ!」
声が聞こえた、後ろから。気のせいか。
「早まっちゃダメ!」
また聞こえた。先刻より近くで。
私は徐に後ろを顧みた。その先にいたのは、学校のマドンナ─白石 美緒─だった。
「何が遭ったかは知らないけど、それだけは絶対ダメ!」
この娘、私が死ぬの、止めようとしているのか。
「余計な事しないで!私は死にたいの!生きていたって虐められるだけだから!」
「虐められているの?」
誰に──と彼女は私を疑問視した。
私は振り向き様に「あなたには関係無いわ!」そう叫んだ。
その瞬間、私は足を滑らせて転落した。
これで死ねる──そう思った。
だが私の体は、途中で宙吊り状態に成って止まった。
浮いている!?
私はふと上、つまり足の方を見た。
彼女がフェンスを片手で掴んで自身を支え、もう片方の手で私の足首を掴んで、顔を引き攣らせている。
何この娘、危険を承知で私を?
「駄目、放して!あなたまで落ちちゃう!」
「折角拾った命、簡単に捨てるんじゃないわよ!」
言って彼女は、私を引き上げた。そして高く跳び上がり、空中で私を抱き抱え、フェンスを乗り越えて着地した。
凄い身体能力だ。
「あなたの事、助けてあげる」
「助ける?どうやって」
「先ずあなたが誰に虐められているのか教えて頂戴。話しはそれから」
私は彼女に話した。
何時から虐めに遭っていたのか、それを苦に自殺しようと思った事など全て。
「そっか、辛かったんだね。でももう大丈夫」
何が大丈夫な物か。他人事だと思って。
「私に任せなさい。そいつらの事、少し懲らしめてあげる」
えっ、懲らしめる?
私は何だか解らなかったけど、この少女に賭けてみる事にした。それで巧く行かなければその時は本当に・・・。
*
放課後、私は校舎の裏で数人の男子に虐められていた。
身体中を殴られ、蹴られ、血だらけに成っている。
やっぱ死にたい──そう思った時、彼女は現れた。
「アンタ達、止めないと許さないわよ!」
そう言って、振り向いた男共に不意打ち。一瞬で彼らを気絶させた。
「手応え無いわね」
一体この娘、何者なの?
「大丈夫?」
彼女は地ベタに座り込んでいる私に手を差し出した。
その時だった。私の胸の鼓動が高鳴ったのは。
何、この感覚?
「あ、有り難う・・・」
私は頬を赤らめ、彼女の手を掴んで立ち上がった。
「怪我、してるの?」
彼女は私の血だらけの体を見て言った。
「保健室行こう?手当してあげる」
私は無言で頷いた。
保健室に足を運び、彼女の手当を受ける。
その間、私はずっと考えていた。この胸のドキドキが何なのか。
その気持ちに気付いたのは、帰宅途中の事だった。
私は、あの娘が好きに成ってしまったのだ。しかしそれは叶わぬ恋。だけど、それでも構わない。ただジッと、その娘の事を傍で見詰めていられれば。
*
帰り道、私は不思議なお店を見掛けた。
<あなたの恋叶えます>──店の側面にそう書かれている。
私はとても気に為り、そのお店へと入店した。
「いらっしゃいませ」
とレジの前にいる男が私にお辞儀をした。
私はその男に声を掛ける。
「あの、恋を叶えるって、出会い系のアナログ版みた──」
途中まで言い掛けると、レジの男が遮る様に笑って言った。
「違うよ、うちはそんなんじゃないよ」
「じゃあどんな所なんですか?」
「試してみる?」
男はニヤリと笑みを浮かべ、錠剤の様な物を取り出した。
「これは?」
「使用後の御楽しみだよ。今回は5,000円の所、特別に1,000円にしといてあげる。どうだい?」
「な、何だか分からないけど、これで恋が叶うと?」
「それはあなた次第です」
私は躊躇ったが、どんな物か気になったので、結局買ってしまった。
使い方は、寝る前に飲む、それだけ。翌日には効果が現れているそうだ。
効果範囲は自分とその家族及び身内である。
私は早速、自宅へ帰って買った怪しい薬を服用した。
途端、私の瞼が重く成った。
私は部屋に行き、ベッドに潜り込んだ。
そうそう、忘れる所だった。私の名は、二宮 成美だ。