表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

俺と彼女

「復讐、するの?」

消え入りそうな声でつぶやいた俺が顔を上げると、彼女の感情のこもらない顔が見えた。

「そう。」

「どうして?どうやって?」

「教えたら、どうかなるの?」

どう、なるのだろう。どうもならない。そもそも俺が知ってどうする。

ぐるぐると頭の中を疑問ばかりが飛び交って、俺のちっぽけな脳みそはショート寸前だ。それをわかっているのか、彼女はため息をついた。

「一生かけた復讐をする。それだけ。」

「長いね、一生…」

「常にあの二人より良い人生を送ることが最大の復讐。彼女たちよりも良い成績を収めて、良い企業に就職する。良い地位につく。そのためには嫌でもそばにいなければ。情報を得るために。そして貶めるために。」

一気に言いきった絵麻ちゃんは、そこで一息ついた。彼女にしては珍しく、随分と長くしゃべっていたことに気付いたが、今はそれどころじゃない。

「それって、絵麻ちゃんが縛られすぎてるよ。」

「別にいい。たった少しの高校生活が、一生ものの取り返しのつかない失敗に陥った時の、あの二人の苦しむ顔が見たい。絶望して、私を憎むところが見たい。」

「西脇のこと、好きだったのかと思った。」

「…っ」

一瞬だけ止まった彼女の呼吸が、西脇が好きだったと告げているようなものだった。

「好きだったのに、突き放せるの?」

「悠斗とどうこうなりたかったわけじゃない。少しは期待したけど、愛梨と付き合ったってよかった。でも悠斗がほしいからって、私から友達を奪う必要はなかったし、悠斗に私の悪口を吹き込むことはなかった。信頼していたのに、あっさり愛梨の話を信じて、手のひらを返す悠斗は許さない。信頼させて、今度は私が裏切るの。」

あれ、それって。と俺は思った。

もっと簡単に復讐できる方法を思いついた。彼女の計画が壮大すぎて、少しだけ呆気にとられてしまったけれど、そんなに難しいことでもないかもしれない。

「今日のプリントは、その“裏切り”に入るの?」

「たぶんね。悠斗はきっと、烈火のごとく怒るから。」

俺は笑ってしまった。彼女は不器用すぎる。頭が固すぎる。

「絵麻ちゃん、まじめ!」

「なにがおかしいのよ!」

少しだけ憤慨する絵麻ちゃんを見れば、やっと人間らしい表情を見られた気がした。


「それってさぁ、あの二人よりも良いトモダチとか、西脇よりも良い男とかって募集してないの?」


俺の顔を見て、彼女はぽかんとした。

「その広瀬愛梨って子、どうせ絵麻ちゃんから西脇を奪った優越感に浸ってるだけでしょ?西脇がいれば、絵麻ちゃんが何でもしてくれると思ってるんでしょ?」

彼女はゆっくりと頷いた。

「西脇は、絵麻ちゃんが自分の事好きだから何でもすると思って、そうやって調子よく使ってるんでしょ?西脇イケメンだから、過信してるよ。」

将来的に社会的に貶めることは、絵麻ちゃんにかかれば簡単だろう。彼女は頭が固いことを除けば優秀だから。でも、もっと即効性があって、今現在復讐にもっとも適切な方法を思いついた。間違いない、とは言えないけど。

「必要ならば、」

にっこりと含んだ笑いを浮かべた俺に気付いたのか、絵麻ちゃんは戸惑ったような顔をした。

「俺、良いトモダチにも良い男にもなるけど?」

彼女の視線が泳いでいる。ガラス玉は、もうガラス玉じゃない。

「てか、トモダチから始めません?俺、ぜったい西脇より良い男だと思うんだけど。」

「なにそれ…」

「まだ学生だから、社会的制裁はちょっと先になるでしょ?だから、絵麻ちゃんに良いトモダチと良い彼氏ができることって、今現在のあいつらにとって良い復讐になると思ったんだけどなーぁ」

わざとらしく軽い調子で言えば、彼女の顔がびしりと固まった。そんなことが復讐になる可能性を、全く考えていなかったわけではなかったんだろう。

「絵麻ちゃん。」

無言。

「絵麻ちゃん。」

刹那、俺を見上げた瞳がかち合って、また逸らされた。

「他人を巻き込むのは本意じゃないんだよね。絵麻ちゃんって、他人を寄せ付けないのかと思ったら、案外優しいよねー。信用して、傷つくのって怖いよねー」

ふるり、と彼女の肩が震える。

「絵麻ちゃん。俺は絵麻ちゃんが彼女だったら嬉しいよ?だから、俺を利用して?」

こんなに好き好きオーラ振りまいてるのにね、最近。いや、ずっとか。

少しの沈黙があって、彼女は顔を上げた。意を決したような瞳は、潤んでいたと思う。

「絵麻ちゃん。」

「信用、して、いいの?」

「もちろん!俺、思ったよりバカじゃないと思うよ。」

なぜか、彼女にため息をつかれた。信用してくれる気あるのか。

「私に利用されてもいいの?」

「うん。俺、絵麻ちゃん見てるの好きだしー」

「なにそれ。」

「復讐、楽しみだね!」

随分と不謹慎な発言をしたことは認める。だけど復讐の一環としてでも、絵麻ちゃんが俺のそばにいてくれるのなら嬉しい、と思う。たぶん。嬉しいけど、ちょっと複雑でもある。でも、巻き込まれてみたい。

「いっぱいトモダチ作ろうよ。」

「少数精鋭で十分。」

「絵麻ちゃん、愛想悪いんじゃなくて、人見知りでしょう?」

彼女はぴたりと固まった。図星だったらしい。今日、何度固まる気なんだ。仕方ないから彼女の腕をとって、俺はその辺のベンチを目指す。腹時計は、もう昼を告げている。


面白いから、俺は調子に乗ってみることにした。


「絵麻ちゃん、そのうち本気で惚れてくれてもいいよ?」

「馬鹿じゃないの。」


隣に並んで歩く絵麻ちゃんの口元が微笑んでいたのを、俺は見逃していない。


すいません。

なんか復讐が、あっけない……


お目汚し、失礼いたしました!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ