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異世界恋愛いろいろ

その求婚、お断りします!──27歳の嫁ぎ遅れ令嬢だからって、縁談ならなんでもほいほい飛びつくとか思わないでください──

作者: 琥珀
掲載日:2026/11/05

 ある、晴れた秋の日。


 王都の中心にある「薔薇の神殿」で、結婚式が行われていた。

 大神殿より規模は小さいが、壮麗なステンドグラスで知られる「薔薇の神殿」は、着飾った列席者でいっぱい。


 一生着ることはないと思っていたウエディングドレスに身を包んだローアン男爵令嬢マティルドは、杖を手放せない父ルイの身体を支えながら、万雷の拍手の中、ゆっくりと祭壇に向かって歩んでいた。

 亡くなった母が、自分が嫁ぐ日に備えて用意していた長い長いヴェールは、付添人を務める妹達が支えてくれている。


 祭壇の前には、カトレアの花を胸元に飾った花婿が、上気した顔でマティルドを待っている。

 その脇には、乳母に抱かれた愛らしい二人の娘も。


 どうしてこんなことになったのだろう。

 まだ信じられない。

 なにかおかしな夢でも見ているんじゃないだろうか。


 結婚など、16歳の時に諦めた。

 母が急死し、父が倒れてしまったからだ。

 跡継ぎである弟ウルヴァンは、当時まだ11歳。

 弟が成人するまで、強欲な親戚から家を守り、領民の暮らしを守るには、マティルドが奮闘するしかなかった。


 11年の月日が流れ、きょうだいはそれぞれの道を立派に歩んでいる。

 まだ学校に行っている妹が一人いるが、それはもう長男であるウルヴァンが面倒を見るのが筋。

 これからは、ひっそりと父の世話をしながら、お一人様生活を満喫するはずだったのに。


 とうとう、祭壇の前に着いてしまった。


「マティルド。幸せになりなさい」


 父は囁くと、マティルドのヴェールを上げ、花婿に引き渡した。



☆.。.:*・゜ ☆.。.:*・゜ ☆.。.:*・゜



 四ヶ月ほど前──


 春のうららかな日。

 マティルドは、侍女を一人連れて、王都の霊園にある男爵家の墓所を訪れていた。

 母の月命日だったからだ。

 王都にいる時、マティルドは月命日には必ず母に会いに来ることにしている。


 いつものように、墓所を自分で育てた花で飾り、マティルドは心の中で母に呼びかけた。


 ──お母様。暖かくなってきたせいか、お父様の調子は良いみたい。昨日も、別邸の庭を二周もされていたわ。乗馬もしたいっておっしゃっているのだけれど、乗っている時にめまいがしたらいけないし、さすがに危ないわよね。

 ──本邸のウルヴァンとアナ゠マリーアも順調みたい。この間は、ミラヴァ伯爵家の晩餐会に呼ばれたそうよ。

 ──そうだ。この間、イネスの顔を見に行ったの。上の子は相変わらずやんちゃだけど、下に妹が生まれて、ちょっと落ち着いてきたのかも。ノエミは相変わらず忙しいみたい。結婚前にまとまった成果を出したいって、根を詰めてるようだから心配だってイネスが言っていたわ。

 ──テオは、基礎訓練が終わって駐屯地に行ったきり。あの子は昔っから筆不精だから、便りがないのは元気な証拠ってことなんでしょう。シャルロットは、学校でお友達が出来たって手紙をくれたわ。とっても可愛い子なんですって。


 マティルドの弟妹は、五人いる。


 まず、母が亡くなった時、14歳だった双子の姉妹のイネスとノエミ。

 次女のイネスは、成人してすぐに嫁ぎ、既に二児の母だ。

 三女のノエミは、貴族学院から魔導院入りして同僚と婚約したところ。


 同じく、11歳だった長男のウルヴァンは、成人して領主代行となり、貴族学院で知り合った友人の妹アナ゠マリーアと結婚した。

 9歳だった次男のテオは、去年、王立騎士団に入団。

 赤ん坊だった末っ子のシャルロットも11歳になり、令嬢向けの寄宿学校に入学したところだ。


 家族の動静の報告だけで、結構な時間がかかる。

 それから、領地のあれこれ、王都の社交界のあれこれと母に話したいことはたくさんあった。


 しかし、これでもだいぶ短くなった方だ。

 特に、領地の北部が洪水で大きな被害を受けた時など、悩みの多かった時期は、昼過ぎに来て、気づけば夕方になっていたこともある。


 実は、マティルドは、生前の母とそこまで気が合っていたわけではない。

 母は、いわゆる「女性らしい女性」だった。

 マティルドは大柄な上、眉が太く顎もがっしりした男顔、趣味は乗馬に東大陸から伝わった体術「バリツ」。

 令嬢らしく、淑やかに振る舞いなさいと言われ、反発したことも何度もあった。


 しかし、母が急に亡くなり、父も倒れて、実質的な領主代行として振る舞わなければならなくなった瞬間、母の記憶は確固とした道標(みちしるべ)となった。


 母が、どんな風に家族や一族、使用人達をまとめていたか。

 のん気な父を励まして、領地の各所をこまめに周り、領民に顔見せすると同時に、町長や村長から困りごとはないか、取り組んでみたいことはないか聞き取っていたこと。

 報告は緻密にチェックし、不正が起きないよう常に眼を配っていたこと。


 マティルドは、母のように細(こま)やかに人々に対応できたと思えたことはない。

 だが、母の姿を間近で見ていた自分がいなかったら、男爵領は今よりも緩み、良くない状態になっていただろうとは思う。

 そう思えるのが、密かな誇りだ。


 やがて、マティルドは身を起こした。

 ほっとした顔の侍女と共に、帰路に就く。


「あ。マティルド嬢」


 新緑がまばゆい欅(けやき)の並木道を車寄せに向かっていたら、ちょうど向こうからやって来た、四、五歳くらいの小さな女の子を連れた、黒髪のすらりとした紳士に声をかけられた。

 先日、王太后の離宮で会った、ブリサック子爵アリスティドだ。

 そばには、乳母に抱かれて眠っている二歳くらいの女の子と、乳母車を押すメイドもいる。


「アリスティド様、この間ぶりです」


 マティルドは笑顔になって、頭を下げた。


 アリスティドは、マティルドが2ヶ月しか通えなかった貴族学院の先輩。

 マティルドは乗馬部、アリスティドは図書委員だったが、アリスティドの親友が乗馬部だったので顔見知りだった。

 その後、マティルドは母の急死で退学し、いったん縁は切れたのだが、共通の友人知人も何人かいて、同世代の結婚式などの折に、幾度か顔を合わせている。

 ついこの間も、マティルドが参加している王太后の水彩画サロンの作品展で、世話になったばかりだ。


「そちらが、ルシエラ様が描かれたフィリパ様ですか?」


 ルシエラというのは、二年前に亡くなったアリスティドの妻だ。

 彼女の墓参りに娘たちを連れてきたのだろう。


 ルシエラは美しく、優しい女性だった。

 彼女も水彩画サロンに参加していて、先日の作品展には、彼女の遺作である、幼子が眠る絵が特別出品されていた。

 残念なことに、マティルドがサロンに出入りするようになったのは、ルシエラが亡くなった後なので、あまり話したことはなかったが──


「そうです。

 フィリパ。ローアン男爵家のマティルド嬢だ。

 ご挨拶なさい」


 アリスティドは頷くと、濃い金色の巻き毛が愛らしい娘をマティルドの方に軽く押し出した。

 だが、フィリパは顔をしかめると、逆にぎゅっとアリスティドの脚にしがみつく。


 変だな、とマティルドは思った。

 人見知りをする子なのかもしれないが、それにしても表情がやけに硬い。

 マティルドを、かなり警戒しているようだ。


 マティルドは微笑むと、すっと腰を落として、視線の高さを合わせた。


「ローアン男爵家のマティルドと申します。

 フィリパ様、どうぞよしなに」


 フィリパは、ちらっと父を見上げた。

 アリスティドが頷いてみせる。


「ブリサック子爵家の、フィリパです。

 どうぞ……よしなに?」


 少し舌足らずなところもあったが、フィリパは立派に挨拶を返した。

 

「よくご挨拶出来たね」


 アリスティドが破顔して、頭を撫でてやる。

 だが、フィリパは笑顔を返さず、マティルドをじっと見ている。

 アリスティドの表情が曇った。


 ふと、マティルドは後ろにいる乳母の視線が妙に硬いことに気づいた。

 一体、なんなのだろう。


「……君。フィリパを連れて、先に馬車で待っていてくれ。

 マティルド嬢に、少し相談したいことがある」


 アリスティドは、フィリパを自分から優しく剥がした。


「承りました」


 しぶしぶ乳母が頷き、抱いていた子──おそらくルシエラが命と引換えに産んだフィリパの妹・ルイーズ──を乳母車に乗せ、フィリパと手をつないだ。

 メイドが乳母車を押し、正門の方へ向かう。

 時々、フィリパはこちらを振り返っている。


 十分な距離を置いて、アリスティドとマティルドも動き出した。


「……マティルド嬢。実はフィリパの様子が最近妙なんです」


「妙、と申しますと?」


「母親を亡くした当座は、夜泣きや赤ちゃん返りのような行動が出ていたのですが。

 だいぶ立ち直ったと思っていたのに、またぶり返してきたようで。

 それに、私への態度がどうもおかしい。

 どうにも微妙な話で、言葉にしづらいんですが」


「どういう場面で、変だとお感じになるんですか?」


「今が正にそうだったんですが。

 私を独占したがっているように見える。

 その癖、些細なことで『お父様なんて大っ嫌い』と癇癪を起こしたり」


 アリスティドは、ぎこちなく苦笑した。

 少々、堪えているようだ。


「あららららら……」


 マティルドは笑いそうになってしまったが、口元を引き締めた。

 幼い娘に振り回される父親の姿は微笑ましいのだが、アリスティドにとっては、深刻な悩みだ。


 なにか、フィリパにストレスがかかるようなことがあるのかもしれない。

 マティルドは、トラブルになりそうな状況をざっと思い巡らせた。


「子ども同士の付き合いは、どれくらいさせていますか?」


「まだそんなには。

 たまに、親戚の集まりで、年の近い子と遊ばせるくらいで」


「さっきの乳母は、確かな方ですか?」


 厭な話だが、稀に乳母や家庭教師が、親の眼の届かないところで、子どもをいじめることがある。

 父が弟達につけた家庭教師は、幼い弟たちに言いがかりをつけては体罰を与えていた。

 すぐに母が気づいて、叩き出したが。


「確かです。

 ルシエラの実家が選んでよこした者なので」


 だからと言って「確かな者」とは限らない。

 あの家庭教師だって、立派な紹介状を持っていたのだ。


 しかし、情報が足りなすぎる。


「あの。このまま、お宅に寄らせていただいても構いませんか?」


「え。あ……ああ、助かります。

 あなたに見ていただけるのなら」


 アリスティドは驚きながら喜んでくれた。


 さっそく、アリスティドと共に正門の近くにある車寄せに向かう。


 子爵家の馬車の前で、フィリパは不安そうに父を待っていた。

 マティルドはその前に屈んで、目線を合わせる。


「フィリパ様。私、この間、王太后様の離宮で、お母様がお描きになったフィリパ様の絵を拝見したんです」


「違うわ。あの絵はルイーズを描いたのよ!

 わたくしは、あんなにちっちゃくないもの!」


 抗弁するフィリパが愛らしくて、マティルドは笑ってしまった。


「いいえ。あれはフィリパ様なのです。

 私だってお父様だって、あんな風にちっちゃな頃があったんですよ」


「そうなの?

 お父様も、赤ちゃんだったの?」


「そうだよ、フィリパ。

 皆、ルイーズのように小さかったんだ」


 えええええ……と、引いた顔で、フィリパは父とマティルドを見比べる。


「せっかくフィリパ様にお目にかかれたから、もっとお母様の絵を拝見したいの。

 だから、フィリパ様のお屋敷にお邪魔してもいいかしら?」


「……お母様の絵、フィリパも見たい。

 お父様、フィリパも見ていいの?」


 少し迷って、フィリパはアリスティドに訊ねた。

 なぜだろう、妙に切なげな眼だ。


「もちろんだよ、フィリパ。

 マティルド嬢と一緒にお母様の絵を見よう」


 アリスティドは優しく告げた。


「じゃ、じゃあ……来てもいい、です」


 こくりとフィリパは頷いてくれた。




 子爵家の屋敷は、霊園から20分ほど離れたタウンハウスだった。


 普通、外部の客を通すなら応接間かサロンだ。

 だが、マティルドは子ども部屋で見たいと頼んだ。

 子ども部屋の様子を見れば、なにか手がかりがあるかもしれない。

 執事やメイドも驚いていたが、アリスティドがそうするよう命じる。


 子ども部屋は、屋敷の南側にある、明るい部屋だった。

 淡いピンクの壁紙に、分厚いベージュのカーペットが敷き込まれている。


 アリスティドは、ルシエラの作品が挟み込まれた大きな紙ばさみを持ってきて、ソファに三人で座ると、一枚一枚、見せてくれた。

 目が覚めたルイーズも交ざりたがり、マティルドが膝にだっこする。


 先日見た作品も、ふくふくした幼子の様子が見事に描かれていたが、咲きほころぶグラジオラスを描いた作品、静かな湖畔を描いた作品など、ルシエラは柔らかなタッチで描くのが得意だったようだ。

 さまざまな技法を巧みに使い分けていて、橋梁や塔を太い輪郭でぐいぐい描くのが好きなマティルドは、感心するしかなかった。


 絵を見ながら、子ども部屋の様子、そして乳母とメイドの表情を、マティルドはさりげなく観察する。

 急に押しかけてきたのに部屋は整っていて、遊び道具なども良い物が揃っている。

 だが、微妙に違和感があった。


 傍で控えている乳母の表情は相変わらず硬く、そしてメイドも伏し目がちに視線を泳がせている。

 やはり、なにかありそうなのだが──


「あ」


 マティルドは違和感の原因に気づいて、声を上げた。

 なに? とアリスティドとフィリパ、ルイーズが一斉にマティルドを見てくる。


「この部屋には、お母様の肖像画を置かれていないのですか?」


 マティルドは、幼い弟妹の部屋や、家族が揃って食事をする朝食室に母の肖像画を複数かけさせていた。

 母の顔を忘れさせないためだ。

 だから、今でも男爵家には、寂しい時に抱きしめられるサイズの肖像画立てに入れたもの、壁にかけるバストアップの肖像、広い部屋にかけた等身大の全身像と、場所にあわせてやたらめったら母の肖像画がある。

 なのに、この部屋にはルシエラの肖像画が一枚もない。


「え? あ? 壁にかけていたはずだが」


 アリスティドは慌てて部屋を見回した。

 だが、ないものはない。


「どこにやった?

 あれは、王太后陛下が、子どもたちのためにとみずから描いて下賜してくださったものだぞ!?」


「え!? そ、そうだったのですか!?」


 乳母は、真っ青になった。


「厭なおばさまが、お母様を持っていった」


 フィリパが、ぼそっと言って、口をへの字にした。


「おばさま?

 まさか、オルタンス嬢か!?」


 アリスティドには、心当たりがあるようだ。

 意を決した顔で、メイドが半歩前に出た。


「左様にございます。

 オルタンス様は、旦那様のいない時を狙ってお見えになるんです。

 いらっしゃると、色々理由をつけて私を遠ざけて……

 奥様の絵も、気がついたらオルタンス様がいらっしゃった後になくなっていました。

 きっと、お嬢様方になにか悪いことをされているんです!」


 乳母の顔が引きつった。


「あなた、なにを言い出すの!

 旦那様、嘘です!

 オルタンス様は、姪のフィリパ様、ルイーズ様がご心配だからご様子を見にいらしているだけで!」


 不意に、フィリパが火がついたように泣き始めた。

 つられて、ルイーズも泣き始める。

 幼児二人の全力泣きで、会話は吹き飛んだ。


 しかし、切れ切れながら、フィリパは父になにか訴えようとしている。

 戸惑うアリスティドに、マティルドは幾度か聞き返しながらフィリパの言葉を翻訳した。


 「厭なおばさま」に、自分を「ママ」と呼ぶよう、強要された。

 あなたはママじゃないと拒むと、フィリパが悪い子だからルシエラはいなくなったんだ、自分を「ママ」と呼ばないと、今度はパパもいなくなると脅された。

 フィリパやルイーズが怯えて泣くと、うるさいと怒鳴ったり、叩いたりする。

 このことを父に告げ口したら、ルイーズがいなくなるとも言われた。

 そして、乳母は見て見ぬふりをしていた。


 アリスティドの眼が、すうっと細くなった。

 乳母を睨みつける。


「……出ていけ。今すぐ」


 真っ青になった乳母は、固まっている。


「早く!」


 苛立ったアリスティドが立ち上がる前に、メイドが乳母を突き飛ばすようにして部屋から追い出した。


「フィリパ。すまなかった」


 アリスティドは、フィリパを抱きしめた。


「もっと早く、お父様が気がつくべきだった。

 もう大丈夫だ。私もルイーズもどこにもいかない」


「お父様ぁ」


 フィリパは、アリスティドにしがみついて、わんわん泣いた。




 そのうち、子どもたちは泣き疲れて眠ってしまった。

 さっきのメイドが毛布を持ってきてくれ、二人をソファに寝かせる。


 アリスティドはサロンに移ろうと言ったが、マティルドは断った。

 二人が目覚めた時、父親がそばにいた方がいい。


 といっても、子ども部屋で大人が腰掛けられるのは、ソファだけだ。

 アリスティドは、オットマンをマティルドに譲り、自分は木馬に腰をかけた。

 メイドが紅茶を持ってきてくれる。


 咽喉を潤して、マティルドは少し身体を緩めた。


「あの……オルタンス様とは、どういう方なのですか?

 確か、ルシエラ様には妹君はいらっしゃらなかったような」


「正確には、ルシエラの従姉妹だ。

 ルシエラの父君は、次男でね。

 長男は爵位を継ぐ前に亡くなってしまった。

 彼女は亡くなった長男の娘で、ルシエラと一緒に育てられた。

 だが、ルシエラの物を持ち出したり、周りに悪口を言って回ったりしていたようだ。

 詳しいことは聞いていないが、ルシエラは彼女になるべく関わらないようにしていた」


「なるほど」


 マティルドは、この間、王太后のサロンで起きた騒動を思い出した。

 オルタンスと似たような立場の令嬢が王太后に目をかけられている少女を傷つけ、居合わせたアリスティドが助けてくれたのだ。

 父親さえ生きていれば自分が嫡流の令嬢だったのに、父が亡くなってしまった以上、傍流の居候として養われるしかない。

 口惜しい思いをすることも多いのだろうとは思うが、弱い者をいじめるのなら同情の余地はない。


「ルシエラが亡くなった後、彼女を後妻にどうかと義父に何度も匂わされてね。

 はっきり断って、やっと静かになったと思ったのに」


「あちらも、持て余しているのかもしれませんね。

 ルシエラ様の後添いなら、持参金をつけなくても、ルシエラ様がお持ちになった分を引き継げばいいわけですし」


「そうだな。勝手な算段だ」


 アリスティドは深々とため息をついた。


「ところで、アリスティド様。

 お嬢様方とは、どのように接してらっしゃるのですか?

 子ども部屋には、あまりいらっしゃらなかったようですけれど。

 ま、子ども部屋には殿方はあまり立ち入らないのが通例ではございますが」


 真正面から問うと、うぐ、とアリスティドは詰まった。


「その……朝は、毎朝、朝食が終わったところで、朝食室に連れて来させて話をしている」


「では、十分、十五分といったところでしょうか。

 その後は、お仕事をされて……

 議会にいらしたり、人と会ったりされますよね。

 夜は?」


「倶楽部で食べることが多い。

 帰ってきてから、寝顔を見るようにはしている」


 ほーん、とマティルドは片眉を上げた。


 貴族の男性が、幼い子どもに接するのは、だいたいそのくらいだ。

 むしろ、フィリパの変調に気づいてマティルドに相談しただけ、アリスティドはマシな方かもしれない。


 だが、まったく不十分だ。


「アリスティド様」


 名前を呼んだだけなのに、アリスティドはびくっとなった。


「じきに、フィリパ様は子ども同士で交流する年になられます。

 申し上げておきますが、お母様がいらっしゃらないことを言い立て、攻撃する愚か者が必ず現れます」


「そ、そうか。……そうなるか」


「ええ、必ずです。

 どんなに気をつけても、その手の悪意にお嬢様方は晒される。

 その時、お嬢様方を守るのは」


 マティルドは、思わせぶりに言葉を切った。


「……守るのは?」


「自分は、母はいなくても、父に他人の数倍愛されているという根(・)拠(・)の(・)あ(・)る(・)確信です。

 明日から、朝食はお嬢様方と召し上がってください」


 アリスティドは固まった。


「いや、しかし。まだ二人はその年齢では……」


「そうですね。貴族なら、一人できちんと食べられるまでは大人と別にするのが普通です。

 けれど、お嬢様方には母君がいらっしゃらないのですよ?

 母君がいれば、日中や晩餐前に触れ合う機会がある。

 足りない分は、父君が補填するしかないではありませんか。

 ならば、朝食を共にするのが一番です」


「そう、だな」


「メイドがお世話をするとはいえ、お一人で召し上がるより時間がかかると思います。

 ですが、お嬢様方の心身の調子も、把握しやすいのでは」


「たし……かに」


 かくりとアリスティドは頷いた。


「それと。男性同士の付き合いが大切なことはわかりますが。

 週に何度か、夜も早めにお帰りください」


「夜も? 夜に子どもたちとなにをするんだ?」


「別に、父親が絵本を読んで寝かしつけたっていいじゃないですか」


「え。わ、私がか!?」


 アリスティドは驚いている。

 本来なら、乳母かメイドがすることだ。

 そばに控えているメイドも、正気か? と言わんばかりにマティルドを二度見している。


「ええ」


 マティルドは、しれっと頷いた。


「想像してみてください。

 子ども同士の会に、フィリパ様とルイーズ様がいらっしゃる。

 どこかのこましゃくれ令嬢か、どこかのクソガキ令息が、母上がいない惨めな子だと、お二人にうざ絡みしてくる。

 しかも、手下を連れてね」


 絵が想像できたのか、アリスティドは息を呑んだ。


「でも、アリスティド様が寝かしつけもされていれば、フィリパ様はすかさず反論できるのです。

 『確かにわたくしには、お母様はいないわ。でもお父様がお母様の分も愛してくださってるのよ! 毎晩、絵本を読んで寝かしつけてくださるの。そんなことをしてもらってる人がこの中にいて?』」


 精一杯、高飛車なご令嬢っぽく言ってみると、アリスティドは笑い出した。


「……いない。いるわけがない」


「きっと、クズ令嬢クズ令息は、父上は普通そんなことをしない、お前の父上がおかしいんだって言いますよね。

 でも、フィリパ様は言い返せます。

 『わたくしのお父様は、変な人になっちゃうくらい、わたくしを心の底から愛してくださっているの。あなた達はそこまで愛されてないのね。なんて可哀想なのかしら!』

 ここで、高笑いもいっときましょう」


 マティルドは、高笑いポーズのつもりで、唇の左に右手を添えてみせた。

 アリスティドはもう、笑いすぎて涙まで滲ませている。


「君。今のセリフをメモしておいてくれ」


「は、はい!」


 メイドも肩を震わせながら、メモを取った。


「わかった。今夜からフィリパとルイーズの寝かしつけに挑戦してみよう」


 アリスティドが頷いたところで、フィリパがむくりと身を起こした。


「あら。フィリパ様。お目覚めになったのね」


「ふにゅ」


 フィリパがこくりと頷く。

 マティルドは、フィリパの傍に跪いた。


「フィリパ様。今日はご立派でした。

 悪い人達から、妹君とお父様をお守りされましたね。

 さすが、ブリサック子爵家の一の姫。

 このマティルド、大変感服いたしました」


「かんぷく?」


 フィリパは、アリスティドの方を見た。


「フィリパは、とっても良い子だということだよ」


「良い子……」


 にぱあ、とフィリパは年相応の笑顔を初めて見せた。


 オルタンスに植え付けられた恐怖が完全に抜けるまで、少し時間がかかるかもしれない。

 だが、アリスティドが子どもたちと接する時間を増やせば、きっと大丈夫だろう。


「フィリパ。マティルド嬢にお礼を言いなさい。

 マティルド嬢が助けてくれたおかげで、悪者を追い払えたんだ」


 フィリパは首を傾げて考え込み、ソファから滑り降りて、とん、と立った。


「マちルド様、助けてくれて、ありがとうございました」


 フィリパは、きちんとお辞儀をした。

 でも、まだマティルドと発音するのは難しそうだ。


「マティとお呼びください、フィリパ様。

 お役に立ててよかったです」


 マティルドが言うと、フィリパは、にゅふっと照れたように笑った。

 愛らしすぎて、頭がくらくらしそうだ。


「そうだ。フィリパ様。お友達になりませんか?」


「お友達?」


「実は、私も母が亡くなったんです。

 フィリパ様より、だいぶ大きくなってからですけれど」


 フィリパは大きな眼を見開いた。


「お母様、いなくなっちゃったの?

 マティ、かわいそう」


 マティルドは微笑んだ。


「ええ。だから、寂しくなったらフィリパ様に会いにきてもいいですか?」


「う、うん」


 戸惑いながらも、フィリパはこくりと頷いてくれた。




 数日後──


 王都の郊外にある男爵家の別邸で、父と暮らすマティルドの下に、先日の訪問を感謝するアリスティドの手紙が送られてきた。

 

 アリスティドは、あの後、使用人を集め、ルシエラの実家から来た者数名を解雇し、余計な人物が姉妹に接触しないよう、警戒を強化させた。

 翌日、顧問弁護士をルシエラの実家に派遣して、肖像画をただちに返還し、オルタンスを領地に謹慎させるなどして自分たちに一切関わらせないよう要求した。

 しかし、オルタンスは肖像画をビリビリに破って、捨てていた。

 その絵が、王太后の作品だったと知ったルシエラの父は激怒。

 オルタンスは、修道院に送られることになった。

 もしかしたら、王太后は、ルシエラの思い出を幼い姉妹から奪おうとする者が出たら排除できるよう、わざわざ自筆の絵を下賜したのかもしれない。

 破ったのが王太后の自筆でなければ、ルシエラの実家もそこまで厳しい対処はしなかったはずだ。


 父娘のその後も、アリスティドは書いていた。


 さっそく、寝かしつけに挑戦したアリスティドだが、大好きな絵本を全部暗記しているフィリパが、ページを開く度に書かれている言葉を先に言ってしまう。

 気がついたら、アリスティドは寝落ちしていた。

 娘に寝かしつけられてしまったのだ。

 アリスティドの自虐交じりの軽妙な書きぶりもあって、マティルドは声を立てて笑ってしまった。


 手紙には、折りたたんだ画用紙も同封されていた。

 画面いっぱいに、テーブルを囲んで笑っている人物が四人描かれている。

 人物は、一人は栗色の髪、もう一人は黒髪、残りの小さな二人が金髪。

 マティルドとアリスティド、フィリパとルイーズなのだろう。

 絵の上に、「マティ、フィリパのおちゃかいにきてね!」と大きく書いてある。

 思わず、マティルドは微笑んだ。

 これは素敵な手土産を持っていかなければならない。


 しかし、どうしよう。

 娘しかいないのだし、まだ若いアリスティドは、これから後添いを迎えるはず。

 再婚となれば、きっと亡きルシエラのように優美な女性を選ぶだろう。

 その時、自分が子爵家に頻繁に出入りしていたら、縁談の邪魔になるかもしれない。


 母を失ったのはフィリパ達だけではないことを伝えたくて、自分も母を失ったことを告げ、お友達になりましょうと言ったのだが、前のめり過ぎたかもしれない。

 微妙な話なので、次にアリスティドに会った時に直接相談した方がよさそうだ。


「お嬢様。そろそろお出ましの時間でございます」


 とりあえず、いつ再訪するのかぼかした返事を書いたところで、執事が声をかけてきた。

 今日は、弟夫婦に呼ばれている。

 春の大舞踏会の衣裳合わせがあるのだ。


「やっぱり! マティルドお義姉様にはこの型のドレスがぴったりですわ!」


 本邸で、先日仮縫いをした臙脂のドレスに着替えると、弟ウルヴァンの妻であるアナ゠マリーアは手を叩いた。

 アナ゠マリーアは20歳。

 ウルヴァンの同級生の妹で、16歳の時から知っているから、マティルドにとってはもう一人の妹のような存在だ。


「そうね。びっくりだわ。

 アナ゠マリーアは、お洒落の天才ね!」


 マティルドは頷きながら、全身鏡の前でぐるりとターンしてみた。


 今回、アナ゠マリーアの強い勧めで作らせたドレスは、オフショルダー。

 鎖骨を綺麗に見せつつ、肘のあたりまでゆったり覆うケープ風の布が、ぐるりとついている。

 絹地の上にオーガンジーをふわりと重ね、上品で女性らしい雰囲気だ。


 マティルドは、男性の平均身長を少し越すくらい背があり、おまけに肩幅がある。

 もともと筋肉質な上、乗馬と体術で鍛えているから、コルセットをいくら締めても跳ね返してしまう。

 なかなかしっくり来るドレスがなく、これまでは無難なデザインを、肩をすぼめるようにして着るしかなかったのだ。


 もう一度、マティルドはターンしてみた。


 胸元から垂直に落ちる布が肩幅を自然に隠し、ウエストのくびれを際立たせてくれる。

 余計なボリュームがないから、すっきりとスタイル良く見えた。

 27歳とはいえ、娘は娘。

 マティルドのテンションは上がった。


「じゃあ、髪をして、首飾りも合わせてみましょうか」


 わざわざ来てくれたアナ゠マリーアの母、モルゼー子爵夫人マルガリーテが促した。


 もう一つのマティルドの悩みは、髪型だ。


 この国では、未婚の女性はハーフアップにして髪を巻き、既婚の女性は大きくふんわりふくらませて髪を結い上げる。

 マティルドは、少女らしいハーフアップがあまり似合わない上、同世代の女性はほとんど髪を結っている。

 年齢からすれば、髪を結い上げてしまいたいのだが、立場上、それが出来ないのだ。

 これが、魔導院や騎士団で働く女性なら、コンパクトに編み込みにして結い上げるのが普通だったりするのだが──


 アナ゠マリーアとマルガリーテ、それに侍女も加わって、喧々諤々の議論になりながら、マティルドの髪は何度も結い替えられた。


「今回は、これでどうかしら」


「こんなこと、できるんですね!」


 またまた、マティルドはびっくりした。


 頭頂部の髪を軽くとって、一応ハーフアップの形を作り、後ろ髪は毛先近くでまとめてうなじの上にピンで留め、胸下まである長い髪を肩の下くらいの長さに見せている。

 両サイドの髪は太く編み込み、途中から毛先まで三つ編みにして、後ろ髪の毛束を縁取るように固定する。

 結い上げているわけではないが、下ろしているわけでもない、不思議な髪型だ。

 だが、27歳で未婚という微妙な立場のマティルドには、しっくり来た。


「わたくしが若い頃、ちょっと流行ったことがあるのよ。

 ちょうど良い感じね。

 ところで……ちょっと、見るだけ見てほしいものがあるのだけれど」


 マルガリーテは、革製の書類挟みをいくつも積み重ねて、ずいっと押し出してきた。

 見合いの釣書だ。


「お母様! お義姉様は、雑な縁談にうんざりしてらっしゃるって言ったじゃない!」


 アナ゠マリーアが非難の声を上げた。


 ウルヴァンが貴族学院を卒業したあたりから、マティルドは微妙にモテるようになった。

 ただし、相手は、別にモテたくない者ばかりだ。


 マティルドはローアン男爵家の長女。

 将来、男爵家や子爵家の嫡男に嫁ぐことを想定して、十分な持参金を持たせられるよう用意された資産が、複利でそれなりの額に膨らんでいる。

 母の急死によって、マティルドは家を離れられなくなったが、それもウルヴァンが家を継げば、嫁げるようになる。


 マティルドは、「女性らしい女性」ではないし、若くもないが、幼い弟妹を育てあげ、男爵家を守り通した実績があり、おまけに持参金もある。

 実利的な魅力がある上、若い男にはまず求婚されないだろうから、条件が悪くてもなんとかなると勝手に思い込まれがちなのだ。


「それは、わかっているの。

 お話をいただいた時に、今はご結婚の気持ちはないようだとわたくしからも言ってるわ。

 でも、とりあえず見るだけ見てほしいって押し付けられるのよ。

 本当に申し訳ないけれど、見るだけだから……」


 弱りきった顔で、マルガリーテは乞う。


「あー……じゃあ、拝見するだけ拝見しましょうか」


 なんだかんだで、マルガリーテには世話になっている。

 マティルドは半笑いしながら、ソファに座ると、一番上から釣書を開いた。

 アナ゠マリーアが横から覗き込む。


 最初は、三十七歳の騎士爵。

 前妻の子が男の子ばかり五人いて、なかなか大変そうだ。


 次は、五十六歳の孫もいる伯爵。

 アナ゠マリーアは「お父様より年上じゃない!」と憤慨した。

 これはもはや介護要員狙いだろう。

 ちなみに、肖像画はどう見ても二十年以上前のものだ。


 以下、アナ゠マリーアの言う「雑な縁談」が続く。


 面白いのが、当人の人となりについては「狩り」とか「音楽鑑賞」とかざっくりした趣味しか書いていないのに、面倒を見てほしい子どもたちや領地については、詳細に説明してあることだ。

 なにを求めているのか、丸わかりだ。


 一通り目を通して、マティルドはマルガリーテに釣書を返した。


「ほんと、ごめんなさいね。

 マティルド様が嫁ぎたいと思う条件がはっきりしていれば、それに合わない人はこちらで弾いてしまうけれど。

 絶対に結婚したくない、というわけではないのでしょう?」


 本当のところはどうなの? とマルガリーテは身を乗り出して訊ねてきた。


 マティルドは、アナ゠マリーアと顔を見合わせる。


「さすがに父と同世代以上の方は……

 そんな方と結婚するくらいなら、独り身のまま父の世話をしたいですし」


「それはそうね」


 こくこくと母娘は頷く。


「あと、こんな風にお話をいただくのは、私のこれまでを評価してくださってのことだと思うんですが。

 結婚すれば、私が家族を守るためにしてきたことを、自分にしてもらえると思っている方は、無理です」


 マティルドは、きっぱりと言った。


「そうだわ! そんなの無理よ!」


 アナ゠マリーアが、拍手する。


「なるほどね……。

 マティルド様御本人の良さをわかって、寄り添ってくださる殿方は絶対にどこかにいると思うのだけれど。

 お見合いからは、なかなか難しいかも知れないわね」


 マルガリーテはため息をつきながら、積み重ねられた釣書を睨んだ。




 ともあれ、春の大舞踏会だ。

 この舞踏会は、王家が主催するもので、新年の大舞踏会と並ぶ社交界の一大イベント。

 王宮の大舞踏室と周辺のサロンや庭園を開放し、夜を徹して行われる。


 マティルドは朝から本邸に向かい、弟夫婦と一緒に宮殿へと向かった。

 国王夫妻に挨拶し、二人のファーストダンスを見た後、大混雑の中、親戚や友人知人と挨拶を交わす。


「アナ゠マリーア。久しぶりね」


「ああああ……大伯母様! ご無沙汰しています」


 アナ゠マリーアに、老婦人が声をかけてきた。

 彼女の大伯母である、前伯爵夫人だ。

 マティルドも挨拶した。


 ウルヴァンは、結婚祝いのお礼を改めて言い、老婦人の家族についてあれこれ訊ねる。

 こういう如才なさは、母に似ているなと思いつつ、マティルドは相槌を打った。


「ああそうだ。ついでに紹介してもいいかしら。

 亡くなった主人の末の弟の次男で、ダニエル。

 魔導騎士団の少佐なの」


「ダニエルです」


 老婦人の連れは、慇懃無礼に会釈した。

 年の頃は、マティルドより少し上か。

 黒髪に黒縁眼鏡をかけていて、少し神経質そうな顔立ちだ。


「その……マティルド嬢。

 一曲、いかがでしょうか」


 ダニエルは、マティルドにいきなり片手を差し出してきた。

 本当は、もう少し雑談を挟むものだ。

 戸惑いながらこちらを見てくるウルヴァンに、大丈夫だと軽く頷いてみせる。


「ありがとうございます」


 マティルドはよそ行きの微笑みを浮かべると、ダニエルに右手を預けた。


 フロアは混み合っていて、踊りにくい。

 二人は、人混みを縫うように、ぎこちなく踊る真似をした。


 踊りながら、ダニエルは滔々と魔導騎士団での自分の活躍について語ってきた。

 今は魔導卿だが、じきに騎士爵を貰えそうなことを匂わせる。


 なるほど、とマティルドは納得した。

 騎士爵になれば、社交の必要も出てくる。

 ならば、妻が必要だ。


 しかし、伯爵家の傍流の傍流なので、現時点で資産はない。

 持参金を持っていて、家の切り回し方がわかっている女性を娶るしかない。

 そこで、マティルドが候補になったのだろう。


 こういうパターンもあるのだなと思いながら、狭いスペースで無理やりターンする。


「それにしても、思いの外、お美しくて驚きました」


 ん? とマティルドは片眉を上げた。

 ようやく褒めてきたのだが、どうにも上から目線だ。

 前伯爵夫人が、どういう風に自分を説明したのか、だいたい察しがつく。

 若くも美しくもないが、有能で持参金を持っている、他に求婚者もいないだろうから、申し込めばどうにでもなる、というあたりか。


「ふふふ。いかつくて不格好な嫁ぎ遅れに、望外のお言葉、ありがとうございます」


 マティルドは、朗らかに笑いながら返した。


 実際、マティルドは自分の容貌や体型をまったく気にしていない。

 社交界デビューした時は、少しでも背を低く見せようと、平らな靴を穿いていたが、今は普通にハイヒールだ。


 ダニエルは、ぎょっとして黙り込んだ。

 なにか切り返す言葉を探しているようだったが、そのまま曲は終わる。


「お相手ありがとうございました。では」


 マティルドは軽く会釈して、さっさと離れた。


「マティルド!」


 少し離れたところから声をかけられる。


「ウルリケ様!」


 王太后の水彩画サロンの中心でもある、シャラントン公爵家の若夫人ウルリケだ。

 マティルドは、足早にウルリケの方に向かった。


「今日のドレス、とても似合っているわ。

 髪も素敵。よく見せて頂戴!」


 照れながら、マティルドはくるりと回ってみせた。

 ドレスは弟の妻のアナ゠マリーアの発案であることを、しっかり伝えておく。

 いいお嫁さんを貰ったわね、とウルリケは笑った。


「あら? ロザミア様?」


 ふと、マティルドは人混みの中に、先日サロンの作品展でトラブルを起こした令嬢の姿を見つけた。

 ウルリケが眉をひそめる。


「まあ。いらしているのね。

 念のため、ソフィを見つけたら、伝えておいてくれるかしら。

 わたくしも、会えたら言っておくわ」


 ソフィというのは、ロザミアに傷つけられて、せっかくの作品展だというのに中座してしまった侯爵令嬢だ。

 いかにも「深窓の令嬢」といった風情の美しく内気な令嬢で、絵が下手な上にがさつなところが抜けないマティルドにも優しく接してくれる。


「承りました。ウルリケ様。

 ではまた、サロンで」


「またね」


 笑みを交わし、マティルドは弟夫婦を探して、さっき彼らがいたあたりに戻った。

 幸い、弟達はすぐに見つかった。

 前伯爵夫人はどこかに行き、銀縁眼鏡をかけて魔導院の制服を着た妹のノエミとその婚約者、アリスティドが一緒にいる。


「マティルド姉さん。ブリサック子爵家で一暴れしてきたんだって?」


 ウルヴァンが、からかってきた。

 先日の話を、アリスティドが弟達にしたようだ。


 慌ててアリスティドが手を横に振った。


「いやいやいや。マティルド嬢は、私にも娘たちにも大恩人なので。

 ローアン男爵家のマティルド嬢は、大変な女傑だと何度か耳にしましたが、こういうことだったのかと」


「女傑だなんて。いったいどこでそんなことを」


 マティルドは笑ってしまった。

 自分はただ、必死だっただけだ。


「女傑かどうかはとにかく、姉さんは凄いわ。

 やる気をなくしていた私を励まして貴族学院に入れて、イネスをちゃんと嫁がせて。

 ウルヴァンとテオもなんとかして。

 シャルロットなんて、姉さんが育てたようなものじゃない。

 母様が亡くなった時、たった十六歳だったのにね」


 ノエミはしみじみと言って、ちらっとウルヴァンを見た。


「ウルヴァン。マティルド姉様を、うんと大事にしないとね?」


「も、もちろんだよ! ノエミ姉さん!」


 ウルヴァンは慌てた。


「大丈夫よノエミ。十分大事にしてもらってるわ。

 今日のこのドレスだって、アナ゠マリーアが提案してくれたのよ」


「あ。いい感じだと思ったら、そういうこと?」


「そうですそうです」


 アナ゠マリーアはこくこく頷いた。


「ごきょうだい、仲の良いことで羨ましい。

 ところでウルヴァン卿、しばし姉君をお借りしても?

 少しご相談したいことがあるので」


「もちろんです。ブリサック子爵」


 ウルヴァンは気軽に頷いた。


「ウルヴァン。ノエミ。あなた達も踊っていらっしゃいな。

 せっかくの舞踏会なんだから、楽しまなくちゃ」


「そうだね。じゃあまた後で」


 アリスティドはマティルドに左肘を差し出し、マティルドは掴まった。




 相談、というのはフィリパとルイーズのことなのだろう。

 だが、どこも混み合っている。

 アリスティドは「本当はワルツにお誘いしたいのですが」と言いつつ、二人は廊下に出た。

 廊下も、あちこちで立ち話の輪ができて、ごった返している。


 結局、二人は中庭に出た。


 正義の女神ユスティアの有名な彫像が飾られ、刻一刻と色が変化する魔導灯で照らし出されている。


「そういえば、このユスティア、あなたに似ていませんか?

 ほら、きりっとしたところが」


「そうですか?」


 マティルドは首を傾げ、二人は像のまわりを一周した。


「あ! ソフィ様!」


 出入り口の方に戻りかけたところで、マティルドはソフィを見つけた。

 先日、作品展に来ていたヴァルデシア辺境伯の子息エルンストにエスコートされている。

 まだ気持ちを伝えていないようだが、お互い好きあっているのが表情を見ただけでわかる。

 二人の初々しさに、マティルドの口元は思わずほころんだ。


 二組のカップルは和やかに挨拶を交わし、マティルドはロザミアが来ていることをそっとソフィに告げた。

 ソフィは、ロザミアにもう気づいていた。

 作品展の時は、ロザミアにいきなり悪意をぶつけられてだいぶ動揺していたが、自分やウルリケが心配しなくても、落ち着いて対処できそうだ。

 恋が、彼女を強くしたのだろうか。


 ソフィ達と別れて、マティルド達は、なんとなくまた中庭に出た。

 というか、アリスティドは妙にそわそわしている。

 相談というのは、結局なんなのだろう。


「あの。マティルド嬢。

 もっと静かなところに行っても、構いませんか?」


 宮殿から離れていく小径の方に向かいながら、アリスティドは聞いてきた。


「へ?」


 妙な声が出た。


 この先は外庭。

 生け垣で造られた迷路やら、四阿などがあり、灯りも暗い。

 恋人たちが密かに、愛を語らったりする場所だ。

 人目がない分、不埒なことが起きる場合もなくもない。

 マティルドは社交界デビューする前、母に「暗い方へ暗い方へ誘ってくるような男性に、ついていってはだめよ」と強く言われた覚えがある。


「……もしかして、私に求婚とか考えていらっしゃいますか?」


「え。あ。あ、……はい」


 ここまでぶっちゃけたことを言ってくるとは思っていなかったのか、アリスティドは顔を強張らせながら頷く。

 すっと、マティルドはアリスティドの左肘にかけていた手を抜いた。

 両手で扇を握りしめる。


「アリスティド様。私、あなたはまともな紳士だと思っていました。

 がっかりですわ!」


「は? え? ど、どうして!?」


「だって、私のことなんて、なんにもご存知ないじゃないですか。

 それで求婚?

 要はフィリパ様とルイーズ様の世話を押し付けたいということでしょう!?」


「い、いや。そういうわけでは」


 アリスティドはうろたえている。


「その求婚、お断りします!」


 マティルドは宣言すると、一人で憤然と戻った。




 弟夫婦に「疲れたから先に帰る」と伝言を残して、マティルドはさっさと本邸に戻って眠った。

 起きてみると、王都は大騒ぎ。

 マティルドが帰った後、エルンストが決闘騒ぎを起こし、色々色々大変なことになっていたそう。

 決闘は大熱戦だったそうで、見そびれたマティルドは歯噛みしたがもう遅い。

 それもこれもアリスティドのせいだと、逆恨みするしかなかった。

 

 なにはともあれ、父が療養している別邸に戻ると、気持ちもだいぶ落ち着いてきた。

 それに、次のサロンのために、絵も少し描いておきたい。


 あまり出歩く気にもなれず、父と静かに暮らしているうちに、また母の月命日が来た。

 アリスティドの件は、弟夫婦にも妹達にも言っていない。

 自然、母への定例報告は、ダニエルやアリスティドへの愚痴大会となった。


「マティルド嬢」


 男爵家の墓所から出た先に、アリスティドが一人で立っていた。

 思わず、二度見してしまった。

 母の月命日にマティルドがまた来るだろうと予測して、待っていたのか。


「先日は、申し訳ありませんでした。

 あなたがあまりに艶(あで)やかだったので、急がねば誰かにさらわれてしまうと焦ってしまい」


「あ。はい」


 そんなことを言われても、木で鼻を括ったような答えしか返せない。


「あなたをもっと知り、私をもっと知ってもらってから言うべきことでした」


 アリスティドは深々と頭を下げる。


「『私をもっと知り』って一体なにを?

 今更、趣味でも聞くんですか?」


 マティルドは半笑いした。


「いえ。そうではなく……」


 アリスティドは、ためらいながら口を開いた。


「昔、あなたの母君が亡くなられた時、学院から馬で飛び出していくあなたを見たんです。

 あなたは、慌てて飛び退く生徒たちの顔など、気に留める余裕もなかったでしょうが」


「はい?」


 なにを言われているのか、マティルドは咄嗟に掴めなかった。

 確かに、放課後、母が危篤だという知らせが来て、馬で近くの宿場町まで降り、そこから替え馬をしながら王都の屋敷へ全力で向かったのだが──


「一瞬のことでしたが、あなたの決然とした表情は覚えている。

 その後、結局母君は亡くなられ、あなたは学院に戻ることはなかった」


 マティルドは黙ったまま頷いた。


「私は、母君が亡くなられる前のあなたも覚えている。

 身体を動かすことが好きな、まだあどけなさが残る、朗らかな少女だったあなたを。

 だから、母君が亡くなられたと聞いて、どんなに辛い思いをされたのだろうと、心にかかっていた。

 だが、次に会った時はもう、あなたは大地に根を下ろした大樹のような、立派な大人の女性になっていた」


 アリスティドは、半歩、マティルドに近づいた。


「私が知りたいのは、母君が亡くなられた時、何が起きたのか、あなたがどう感じたのか、ということです」


 あの時、何が起きたのか──


 不意に、マティルドの眼からぽろっと涙がこぼれ落ちた。


 走って。走って。走って。

 夜になって、ようやくたどり着いた屋敷。


 母の寝室は昏く、死の気配が濃くなりつつあった。

 主治医と看護婦が慌ただしく動き回っている。


 真っ青な顔をして、眼を閉じたままの母を見守っている父。

 泣きじゃくっているイネスとノエミ。

 怯えた顔でうずくまっていたテオ。

 その年の春に生まれたばかりのシャルロットが、異変を感じ取ったのか延々泣いている声も遠くに聞こえた。


「お母様!」


 マティルドは母の枕元に駆け寄り、その手を両手で握った。

 母の手は、驚くほど冷たかった。


 母のまぶたが、ぴくりと動いた。

 マティルドの方に顔がわずかに傾き、乾いた唇がわななきながら開く。


「りゅいほ、ほねがい」


「え。お母様、なに?」


「りゅいほ、」


 それ以上は言葉にならなかったのか、つつっと母の頬を涙が伝う。


 マティルドは、息を呑んだ。


 ──ルイを、お願い


 つまり「父を頼む」と母は言っているのだ。

 社交界デビューは済ませたとはいえ、たった十六歳の自分に。


 そんなの、めちゃくちゃだ。

 そう思った。


 だが、母の命の火は消えつつある。


「お母様。わかりました。

 私、お父様をお助けします。

 だから、だから、だから……」


 お母様死なないで、と叫ぶ前に、不意にごふごふっと妙な音がした。

 主治医が、慌ててマティルドを押しのける。


 マティルドは後ろに下がり、泣きじゃくるイネスとノエミ、テオを手探りに抱き寄せた。

 三人を死からかばいながら、母が死にゆくさまを見つめていた。

 そこから、マティルドの十一年にも及ぶ奮闘が始まったのだが──


「あの時……」


 本当は、声を上げて泣きたかった。


 母に、もっと甘えたかった。

 母に、大好きだと伝えたかった。

 せめて、自分を産んでくれてありがとうと伝えたかった。


 でも、なにもかも間に合わなかったのだ。


 気がついたら、マティルドは泣き崩れていた。

 あの日から、涙を滲ませることはあっても、泣いたことなんてなかったのに。


 いつも家族はマティルドの献身に感謝してくれたし、周りは孝行者だと感心してくれる。

 だが、マティルドがあの時、どう感じたのか気にする者はいなかった。

 初めて、アリスティドが気にかけてくれたのだ。


 あの時の哀しみが、不安が、恐怖が、悔恨が押し寄せてくる。


 いつの間にか、マティルドはアリスティドにしがみついていた。

 アリスティドに抱きしめられていた。


 そして、アリスティドは涙でぐちゃぐちゃになったマティルドに「あなたと、喜びも悲しみも共にしていきたい」と改めて告げ──


 マティルドは混乱したまま、求婚を受け入れてしまった。




 というわけで──


 アリスティドは、母の墓前にマティルドに求婚したことを報告し、返す刀で父に挨拶したいと言い出した。

 急に自分の結婚話をしたら、父が倒れるかもしれない。

 マティルドは、まずは弟夫婦に告げてほしいと頼んだ。


 ウルヴァンとアナ゠マリーアは、幸い屋敷にいた。

 二人は驚きながらも喜んでくれ、次の日、一緒に別邸に来て父に説明してくれた。

 父も、大層喜んでくれた。

 アリスティド側の親族は、再婚相手がマティルドと知って戸惑う者もいたが、「心の温かい、素晴らしい女性なので」というアリスティドの言葉で納得してくれた。

 眼の前でそんな説明をされたマティルドは、気が遠くなったが。


 となると、あとは日取りと挙式の算段だ。


 花嫁衣装に憧れたことなど全然なかったマティルドは、挙式は不要だと考えていた。

 アリスティドは再婚だし、自分はいい年だ。

 届けを出して、両家の親戚を招いた晩餐会でもすれば十分。

 母がマティルドのためにと用意していた花嫁のヴェールはあるが、夏に妹のノエミが結婚するのだから、この際、ノエミが使えばいい。


 マティルドは、アリスティドを理詰めで説得した。

 挙式はするべきだと主張するアナ゠マリーアや妹達もどうにかねじ伏せた。


 だが、伏兵がいた。

 フィリパだ。


 いつものように「お茶会」をしながら、マティルドとアリスティドは、二人が結婚することを、フィリパとルイーズに説明した。


「お父様とマティがけっこん?」


 眼をぱちぱちさせながら、フィリパは首を傾げた。


「そうだ。マティは、ずっとおうちにいることになる。

 いいだろう? フィリパ」


「けっこんしき! 花嫁さん!

 マティが花嫁さん!」


 わーいとフィリパは両手を上げた。

 フィリパの真似をしたがるルイーズも、両手を上げてはしゃぐ。


「あ。違うの、フィリパ。

 結婚式はしないのよ」


 慌ててマティルドが言うと、フィリパはむぅと頬を膨らませ、物も言わずにどこかに行くと、すぐに絵本を持って戻ってきた。


「けっこんするなら、ちゃんと花嫁さんにならないとダメ!」


 フィリパは、絵本の最後のページをマティルドに突きつけた。

 美しい王女と、彼女を魔物から助け出した騎士が結婚する場面だ。

 王女は、白いドレスを着て、長いヴェールをつけている。


「これはもう仕方ない。

 マティルド。結婚式を挙げよう」


 固まるマティルドに、アリスティドは笑いながら告げた。



☆.。.:*・゜ ☆.。.:*・゜ ☆.。.:*・゜



 そして、今日。


 マティルドは、祭壇の前にアリスティドと共に並んでいる。

 式は粛々と進み、誓いの言葉を述べるところまで来た。


「ブリサック子爵アリスティド。

 あなたは、ローアン男爵ルイの長女マティルドを妻とし、生涯愛することを誓いますか?」


 神官が、アリスティドに問う。


「誓います」


 アリスティドの言葉は、朗々と神殿に響いた。


 神官は、マティルドの方を向いた。


「ローアン男爵ルイの長女マティルド。

 あなたは、ブリサック子爵アリスティドを夫とし、生涯愛することを誓いますか?」


「誓います」


 緊張で、ほとんど倒れそうになりながら、マティルドはどうにか言った。


 おもむろに、花嫁と花婿は向き合う。

 二人で両手をつなぎ、同時に腰を軽く落としながら、古代魔導語で二人は唱えた。


「私は、あなたに属する(ミ・アパルテーナス・アル・ヴィ)」


 二人の魔力が柔らかな光となって溢れ、散っていく。


「ここに、新たなる夫婦の誕生を宣言します」


 神官が告げる。


 立ち上がった二人は、そのまま堅く抱き合った。

 アリスティドの温もりに包まれたマティルドの眼に、幸せな涙が浮かぶ。

 もう、この温かさから離れられない。


「マティ、おめでとう!」


 最前列で新しい乳母に抱かれていたフィリパが駆け寄ってきて、ぱっと花びらを投げ上げた。

 フィリパはルイーズにも花びらを握らせ、ていっと投げさせる。


「おめでとう、姉さん!」


「おめでとうございます!」


 列席者が祝福の花びらを投げ上げる中、マティルドは、アリスティドとしっかり手をつないだまま、開け放たれた大扉の方へ歩みだした。


最後までご覧いただき、ありがとうございました!

お心のままに、いいね・ブクマ・お星さま、レビュー等々賜れますと、テンションが上がった作者がまた謎作品を投稿したりいたしますので、よろしくお願いいたします!


この作品は「ドクダミ令嬢と沼の貴公子──姉みたいに美人じゃなく、妹みたいに可愛くもない地味令嬢が幸せをつかむまで──」( https://ncode.syosetu.com/n7912mt/ )のスピンアウトです。

本編では、マティルドとアリスティドの再会シーンや、マティルドが見そびれてしまった「決闘騒動」の詳細も出てきます。

よろしかったら、そちらもよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
いちおう貴族のご令嬢なのですが、なんだかいろいろとデキスギてしまうマティルドみたいな人に、面倒くさい縁談がどんどん舞い込むという展開が、とてもリアルに感じられました。 妻だからって、給料を払わずに何で…
スピンオフもすごく良かったです……! 単体でもいいですが、『ドクダミ令嬢』を読んだ者にニヤッとさせるシーンもありがとうございます!
うっかり外出先で読み始めて、うっかり涙して、周りの目が気になりつつ、思わず感想欄に飛び込んで参りました。カタリナシリーズも大好きなのですが、今作の本編のマティルダ嬢がとても素敵だったので、こうしてスピ…
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