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第69話: 魔王軍大侵攻! 悠真の即席指揮で街を死守せよ

街路のあちこちでバラバラだった防衛線が、

徐々に一本の固いラインへと変わっていく。


即席の結界杭が次々と打ち込まれ、

魔族の進路を狭め、制限する。


矢が空を切り裂き、

槍兵が突撃を繰り返し、

盾兵が前線を死守した。


屋根の上からリィナが精密射撃を浴びせ、

後方ではセレスが負傷者を次々と癒やしていく。


そして悠真は――


進化させたアイテムを矢継ぎ早に供給し、

まるで戦線の血液のように、

全員に力を送り続けていた。


負傷者からの情報を集めたセレスが、後方から声を張り上げる。


「悠真、情報よ!

この襲撃、単発じゃないわ!

複数の都市や防衛拠点が、同時に襲われているらしい!」


悠真は一瞬だけ顔を上げ、空を見た。


黒雲の向こうで、かすかに別の火柱が上がっているのが見える。


――街一つじゃない。

世界そのものが、攻め込まれているかのような光景だった。


「つまり……魔王軍の大侵攻か」


悠真の声は低く、静かだった。


「そうよ。

各地で同時に部隊が展開してる。

私たちが押し返してるのも、そのほんの一部にすぎない……」


「そうか……だが、ここは絶対に崩させない」


その低い声は、近くにいた兵士たちの耳にもしっかり届いていた。


リィナが矢をつがえたまま、屋根の上から声を張る。


「悠真! 敵の動きが変わった!

このままじゃジリ貧だよ……作戦は!?」


悠真は静かに戦場を見渡した。


「大丈夫。立て直せる。

市民兵と連携して、完璧な防衛ラインを作るんだ!」


彼は両手を広げ、散乱した装備やアイテムに視線を走らせた。


「剣士隊は西側路地へ急げ!

弓兵は屋根上に移動! リィナが援護射撃する!

セレス、負傷者を集めて後方に下げてくれ!」


静かだがよく通る声だった。


混乱の中でも、その声は不思議と全員の耳に届き、心を掴んだ。


次々と装備を進化させ、使える者に即座に渡していく悠真の姿は、もはやただの冒険者ではなかった。


混乱を制御し、戦場を組み替える――本物の指揮官。


そして市民兵たちもそれに応じ始める。


恐怖に揺れていた目が、次第に確信と闘志に変わっていく。


「これなら……勝てるぞ!」

「この武器なら、負けねえ!」


防衛線は崩壊寸前からじわりと盛り返し、敵の魔族も動揺したのか統制が乱れ始めた。


悠真は汗に濡れた額を拭い、空を仰いだ。


重く垂れ込める暗雲の向こうに、かすかな魔力の揺らぎを感じ取る。


――まるで、何かがこちらをじっと観察しているような、冷たい視線。


「……ここは死守する。俺がいる限り、崩させない。」


その呟きに呼応するように、リィナの矢が雷鳴を纏って閃き、魔族の前衛を一気に薙ぎ倒した。


戦いはまだ終わらない。


だが、崩れかけていた戦線の中に、確かにひとつの「芯」が生まれつつあった。


悠真は石造りの屋根に飛び乗り、下の市街戦を一望した。


火線が交錯し、煙の合間に仲間、市民兵、魔族兵が入り乱れ、剣戟と悲鳴が絶え間なく響く。


悠真の頭には、すでに街全体の俯瞰図が浮かんでいた。


どの道が塞がれ、どこが崩れ、どこに戦力を割くか――そのすべてを計算していた。


だが、次の瞬間――


耳を劈くような咆哮が混戦を切り裂いた。


「……何だ?」


悠真は息を呑む。


瓦礫の向こうから、漆黒の巨躯が姿を現した。二本の角、黒い重甲冑、そして巨大な戦斧を軽々と担いだ魔族……。


かつて複数の辺境都市を屠ってきた、魔族軍の猛将――屠魔将グレヴァだ。


低い号令が響くと同時に、魔族たちが左右に広がり、完璧な包囲陣形を整える。


その瞬間、前線から悲鳴が上がった。


これまでの散発的な攻撃ではない。本格的な突破――この街の中心を、一撃で制圧する気だ。


弓隊の射線を塞ぐように瘴気の壁が突如出現し、矢が軒並み弾かれる。


盾隊の左翼では、漆黒の槍を持った魔族が突撃し、市民兵を一息に吹き飛ばした。


「やばいっ……! 押し込まれるぞ!」

「うわぁぁああ…」

「誰かぁ、援護を――」


悲鳴が連鎖し、混乱が広がる。


だが――


悠真の声が、混乱の只中に響き渡った。


「落ち着け!

盾隊は前だ!

弓隊は後退しつつ射撃を続けろ!

槍隊は中央に集まってくれ!」


恐慌に陥りかけた兵士たちの足が、ピタリと止まる。


彼は掌を開き、小型の補助アイテムを次々と生み出した。


「この旗を槍隊に持たせろ! 左右から回り込める!」


さらに盾隊に向かって別の護符を投げ渡す。


「盾隊はこれで耐えてくれ! 絶対に突破されるなよ!」


兵士たちが即座に受け取り、表情を引き締める。


戦線が少しずつ再編されていく。


その時、屠魔将グレヴァが咆哮を上げて突撃を開始した。


悠真は即座に叫んだ。


「リィナ、魔将を頭上から牽制してくれ!」

「セレス、中央路地に二重結界を! 盾隊の退路を守って!」


「任せて!」

「ええ!」


徐々に布陣が整う。


盾隊が前衛を固め、槍隊が両翼に展開、弓隊が塔から射線を確保する。


即席ながら、まるで一つの軍勢のような動きを見せ始めた。


――そして、グレヴァの巨斧が振り下ろされた。


石畳が爆ぜ、衝撃波が周囲を吹き飛ばす!


悠真は剣を抜き、真正面から踏み出した。


「――さぁ、大将戦だ!」


その言葉と同時に――


盾隊が一斉に前進、槍隊が左右から挟み込み、弓隊が矢の雨を降らせる。


リィナの矢が雷鳴を引き裂き、セレスの氷槍の乱舞が嵐のように敵陣へ降り注ぐ。


戦場の中心で、悠真と屠魔将グレヴァが激突した――!


雷鳴のような金属音が戦場を貫く。


グレヴァが巨斧を振りかぶり、悠真との距離を一息で詰めた!


地面が爆ぜ、瓦礫が宙に舞う!


悠真はその一撃を見切り、進化させた剣を閃かせて真正面から受け止めた。


ガァァァン!


斧の軌道に乗せた瘴気が刃を重くし、弾くたびに腕がしびれる。


(速い……!)


剣先が滑り込み、巨斧の軌道を逸らす!


反動で生じた隙に斬り込む――だが、グレヴァは反転するように体を捻り、黒い蹴りを放ってきた!


悠真は瓦礫を蹴って後方に転がり込み、紙一重で回避!


その時、視界の端を黒い影がかすめた。


グレヴァの側近が二体、牙をむき出しに悠真へ跳躍してくる――!


ガァァッ!

第69話 ありがとうございました!


本文の内容に出てきた進化装備(市民兵に渡した)の詳細です。


《蒼風の旗印》

特性①:掲げた一帯の敏捷性を上昇

特性②:飛び道具をわずかに逸らす風の加護


《雷障の護符》

特性:前方からの魔法攻撃を雷膜で大幅減衰


まだ“底”です。ここから上がります。


次回『旧トラネス城塞! 勇者三人の鉄壁防衛』


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