#1飼育小屋にて
日本のような日本じゃない世界。ここに一人の少女がいる。ハーフサイドテールに結んだ紫色の髪に赤い目をした今年17歳の女子高生。カノジョがこの物語の主人公だ。
-----------
「金曜日だし今日はゲームしちゃおっかな…いやマンガ一気読みも捨てがたい。」
うきうきと帰り道を進む。「Spica」に所属しているにもかかわらず今日も依頼を引き受ける気がない。ゲームに魂を売った死に損ないのようだ。取り憑かれたようにゲームに手が伸びるのである。
コードネーム:S6-黒猫-
楔 狂歌 17歳
「ただいま~。」
ドアを開け呼びかけたが返事がない。というか気づいていないのだろうか。
だったら丁度いい。早く部屋に行ってゲームしよう。
そう思い階段を上ろうとしたとき、ふいに誰かの手が私の肩に触れた。
「おかえり狂歌。依頼来てるよ?」
やばい、捕まった。
ゆっくりと首を左に動かすとそこに金髪のポニーテールで赤い目をした姉が立っていた。依頼を受けろ、という圧が笑顔からにじみ出ている。
コードネーム:S4-不知火-
楔 灯歌 19歳
「ただいま…依頼は今度じゃ…だめ?」
「なんで?」
「その…宿題したくて…。」
真っ赤な嘘だ。まず今日は宿題自体ない。
「そんなこと言って、狂歌さんはゲームがしたいだけでは?」
家の一階にある医務室から出てきたのは長いピンク色の髪に大きな白いリボン、黄色の目をした少女。身体が弱いのと「Spica」の治癒担当であるため医務室に入り浸っている。
コードネーム:S8-秋桜-(コスモス)
花咲 有紀 17歳
「え、いや?別にそんなことないけど?」
「すっごい目が泳いでますが嘘つく気あります?」
やばい。二人に包囲された…希望がない。仕方ない。さくっと依頼を終わらせてゲームしよう。
「わかった、依頼受けるよ。一体どんな依頼?」
そう言うと二人は貼り付けたような笑みから普通の顔に戻った。
「最近ある小学校で起こってる事件なんだけど飼育係が飼育小屋に行ったっきり帰ってこないんだって。前に行われた調査から 星 が検知されたらしい。あ、ついでに飼育小屋にいたウサギも消えてるんだって。」
「了解。準備でき次第現場に向かう。」
----------------
早速私服に着替え依頼受理の手続きを済ませた今、現場である小学校に向かっている。今頃の時間であれば部活中だろうか。
案の定部活中だった。校門の横に取り付けられているインターホンを鳴らしドアを開けてもらう。学校に入ってすぐで待っていてほしい、ということだったので待っていると女性の先生がやってきた。
「本日はありがとうございます。早速飼育小屋に案内しますね、こちらです。」
グラウンドで部活中の生徒の後ろを通りながら向かった小屋は一見問題などなさそうだった。
「何人くらい消えたんですか?」
「ここにいたウサギ三匹と女子生徒二人です。」
女子生徒二人、に嫌な予感を感じながら小屋の鍵を開けてもらい中に入る。すると突然自分の足が地面に沈んでいった。生徒たちもこうして地面の下に落ちたのだろう。そうなると生徒たちはどこだ?
「先生は危ないので小屋に入らないようにお願いします。もし一時間以上経っても戻ってこなければ警察に『Spica』に連絡を入れてほしいと電話してください。」
先生が焦りながらもこくりと頷く。それを見届け地面の中に入った。
地面の中は薄暗く、奥の方に置かれているランタンの明かりだけが空間を照らしている。どうやら星で作り上げた特殊空間のようだ。でなければランタンがおいてある意味がわからない。ふと奥の方から子どもの怯えたような泣き声といい年した男の気持ちの悪い笑い声が聞こえるた。暗さに慣れてきた目をこらしながら声の方へ進むと女子生徒二人と小太りの男がいた。悪い予感は的中だったようだ。所謂ロリコン、というものだ。子どもを誘拐する重度のロリコン。…ロリコン。
「おや、君は?」
男がこちらに気づき振り返る。その隙に女子生徒二人が私の足下へと駆け寄ってくる。
「最近噂になってる『政府公認能力警察部隊』から作られた『Spica』の一人。…ま、そんなのどうでもいいでしょ。単刀直入に言うけどここにいる生徒とウサギを返してもらおうか。」
「悪いけどできないねぇ…。」
男がにやりと笑い返事をする。だめだこいつ話通じない。仕方ないけど強行突破、ってことで星を使うしかない。私の星は「氷を操りどんなものでも溶かす能力」だ。男の足下を氷で固定しこの空間を溶かしてしまおう。
『フロード』
地面に手をつけると男めがけ地面が凍り男の足下が凍っていく。
「やっぱり解放する気は?」
「…ないね」
彼の言葉を聞き空間自体を溶かし出口を見つけることにした。氷の能力からはものを溶かす力もあるなど想像着かないだろうし。そう考えながら壁に手を当てるとどろどろと空間が溶け始める。その様子に男は動揺を顔で表現したがそんなのお構いなしに壁は溶けていく。
ふと上から光が差す。私たちが落ちてきた穴_出口だ。ある程度出口が開けたので氷で子どもなら上れると信じはしごを作る。
登り切った生徒たちにウサギを渡す。このはしごでは流石の私でも上れない。そのため小屋近くにいた先生にはしごをお願いした。特に男なんて上れるわけないって。
「…じゃ現行犯で逮捕。」
はしごを待つ間に男の右手のみに手錠をはめ足下の氷を溶かす。両手に手錠つけたらはしごで登れないだろうし。
-----------
暗くなった帰り道を先ほどの騒動を思い出しながら進む。ロリコンが駆けつけた警官に引き渡された途端に自分が行っていたことを正当化しようとして大暴れして…いい大人が何やってんだろ。とりあえず帰ってご飯食べてお風呂入ったらゲームしよう。
「ただいま~。」
「おかえり、夕飯そろそろできるわよ。」
私の声を聞きキッチンから薄き緑色の髪にピンクの目をした女性が返事をする。彼女が『Spica』の保護者代わり兼管理者の『Milky』の一人。
コードネーム:M402-天晴-(あまはれ)
閨見 千鶴 39歳
「あ、おかえり狂歌。晩ご飯カレーだって」
「え、まじ?やった依頼受けたご褒美?」
「そんなわけないわよ」




