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異世界でスローキャンプ生活を始めたら、なぜか女神として崇められてました  作者: 佐藤正由
異世界キャンプ生活

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第21話 異世界でも、保存食は大切です

アクセスしていただきありがとうございます。

1章が書き終わりましたので第29話まで毎日1話ずつ公開していきますのでよろしくお願いします。

干ばつの影響は、畑だけでなく村の食卓にも影を落としていた。


「今ある食糧は、あと数日分……」


村長セムの言葉に、集まった村人たちの表情がこわばる。

村の蓄えは底をつきかけ、狩猟も採集も不安定で、保存方法も確立されていない。


「でも……これを使えば、食べ物は長持ちします」


私は、布に包んだ“白い粉”を広げて見せた。


「これは“塩”。これから紹介するのは、この塩を使った保存食の作り方です」



まずは干し肉の作り方から。


「肉はなるべく脂の少ない部位を選んで、厚さは指の半分くらいにそろえて切ります。厚いと乾きにくく、腐りやすくなるから注意」


私は実演しながら、まな板代わりの平らな板に肉を置き、包丁で一定の厚さに切りそろえる。

切り口から赤い筋肉の繊維がのぞき、すぐに村人たちが真似して肉を手に取った。


「塩はこうやって、表面にまんべんなく振りかけてから、指で押し込むように揉み込みます。隙間なく塩が入った方が長持ちします」


白い粉が肉にまとわりつき、じわりと水分がにじみ出す。

子どもたちは不思議そうに覗き込み、大人たちは真剣な表情で手を動かす。


「塩は水分を引き出すだけじゃなく、腐敗の原因になる菌を抑えてくれる。たっぷりすぎても塩辛くなるけど、最低でも表面が白く覆われるくらいは必要」


シエルが、枝に吊るした肉を指差しながら補足する。


「日陰で、風通しのいいところに吊るすのが基本。虫がつくのを防ぐなら、こうやって下で少し煙を焚くの。ダイチの得意分野よ」


「最初はちょっと難しいけど、慣れればすぐできるよ」

ダイチは笑いながら、湿った薪を足して白い煙を増やした。


肉が揺れるたびに、ほのかな塩の香りと、薪の煙が混じった香ばしい匂いが漂う。


さらに私は続けた。


「完全に乾けば、気温が低い季節なら数ヶ月は保つし、暑い時期でも1〜2か月は持ちます。

 保存するときは湿気を避けること。布袋や編みかごに入れて、床や壁から少し浮かせて吊るすのが一番いいです。

 袋の口に薄く塩を振っておくと、虫よけにもなります」


「そんなに長く…!」

村人たちは目を見開き、手を止めて聞き入った。



次は燻製。


燻煙小屋がなくても、地面に深めの穴を掘り、その底に炭火を置き、生木の枝や樹皮を重ねて煙を発生させればいい。

その上に網や木の棒を渡して肉を吊るし、地表との間に隙間を作って煙が回るようにする。


「燻し時間は半日から一日くらい。途中で火が消えないように、炭を少しずつ足すのがコツ。煙は強すぎると苦くなるから、白くてやわらかい煙が理想」


燻製にすれば、表面に煙の成分が膜を作り、菌や虫を寄せつけにくくなる。

魚や川エビなどにも応用でき、味も香りも格段によくなる。


村人たちは、立ちのぼる煙と漂う香りに顔をほころばせながら、吊るされた肉を興味深そうに観察していた。


「こんなに簡単に……保存が……?」


「もっと早く知っていれば、余った肉を無駄にせずに済んだのに……」


私は頷き、少し声を強めた。


「保存は、“明日を生きるための準備”です。無駄にしないってことは、命を守るってことでもある。私たちの命だけじゃなく、頂いた命もね」



さらに、岩塩が採れそうな場所を数ヶ所確認しており、リュカと若者たちが採取チームを組んで運搬を始めていた。

採った塩は一度水に溶かし、布で濾して不純物を取り除き、その後は湧き水から塩を作るときと同じ要領で鍋で煮詰め、乾燥させる。


「これで、少なくとも食べ物を“捨てずに済む”ようになる」


村人たちの表情が、確実に変わっていく。


「保存食を作るのは、魔法でも奇跡でもない。材料と工夫、そして“知ろうとする心”があれば、誰にでもできることなんだ」


それは、異世界における“生き抜くための知恵”。


私の知識が“明日”の糧になることを、私はこの日、はっきりと確信した。


そのとき、誰かがぽつりと呟く。


「この人はやっぱり、神様の使いなんじゃないか……」


私は苦笑し、答えを飲み込んだ。

信仰ではなく、“生活”を支える知恵を——それだけは、伝え続けると決めている。



作業を終えた頃、ちょうど数日前に仕込んでおいた干し肉が出来上がっていた。

私は包丁で一切れを切り取り、村人に手渡す。


「どうぞ、味見してみてください」


年配の男性が恐る恐るかじると、歯が繊維を裂き、噛むほどに塩気と肉の旨味がじんわり広がっていく。

「……噛めば噛むほど、味が濃くなるな。これなら硬くても食える」


子どもが小さな歯で一生懸命かじり、「しょっぱいけどおいしい!」と笑う。

煙の香りが鼻に抜け、口の中にほんのりと甘みが残った。


その表情を見て、私は胸の奥で静かに思う。

——これで、この村は少しだけ“明日”に近づいた。

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