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異世界でスローキャンプ生活を始めたら、なぜか女神として崇められてました  作者: 佐藤正由
異世界キャンプ生活

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第16話 異世界の村で初めてのお泊まりしてきた

アクセスしていただきありがとうございます。

1章が書き終わりましたので第29話まで毎日1話ずつ公開していきますのでよろしくお願いします。

翌朝、鳥のさえずりと薪の燃える匂いで目を覚ました。


——ここは、村か。


久々に誰かと屋根の下で寝たせいか、不思議と心は落ち着いていた。


「……おはようございます」


小声であいさつすると、台所からサーシャさんがにこやかに顔を出した。


「おはよう、よく眠れたかしら?」


「はい、おかげさまで……」


昨夜、あれだけ感情を揺さぶられたのに、サーシャさんはいつも通りで、なんだかほっとした。


シエルとダイチはすでに起きていて、外でリュカと一緒に薪割りの手伝いをしていた。あの二人、最近よくリュカと行動を共にしている。


私も何か手伝おうと腰を上げた、そのとき。


「ねえ、真希さん」


サーシャさんが、小声で話しかけてきた。


「……あなたたち、これからどうするの?」


唐突な問いだったが、その表情にはただの興味ではない、母親としての“危機感”のようなものがにじんでいた。


「……森に戻るつもりです。あそこが、私たちの生活の拠点なので」


「そう。……でも、村があなたたちのことを放っておくとは思えないの」


「それは……覚悟しています」


私の答えに、サーシャさんはしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いてうなずいた。


「なら、せめて無理はしないでね。あなたたちのこと……もう、他人事だなんて思えないから」


その言葉に、胸がぎゅっとなった。


“他人事じゃない”って、こんなにあたたかい響きだったんだ。



朝食は、野菜のスープと焼きたてのパン、そして保存していた燻製肉。


シンプルだけど、どれも丁寧に作られていて、噛みしめるたびに体が喜んでいるのがわかる。


「これ、サーシャさんが?」


「ええ、リュカが戻ってきたから、久しぶりにちゃんとした朝食にしたのよ」


「……すごく、おいしいです」


私が素直にそう言うと、サーシャさんは照れくさそうに笑った。


「ふふ、ありがとう」


その間も、シエルとダイチは静かに食べていたが、ダイチのしっぽは嬉しそうにぱたぱたと揺れ、シエルはスープを飲んで「作り方が知りたい…」とぼそっと呟いていた。


食後、ヨラムさんが静かに言った。


「……村のこと、そろそろ話すべきかもしれないな」


サーシャさんも、頷く。


「実は、最近、干ばつで畑が全然ダメなの。それに、森の外れまで魔物が出てくることが増えて……もう持ちこたえられそうにない家も出てきてるわ」


「村長はなんて?」


「……表では『落ち着いて行動しよう』って言ってるけど、本当は限界が近いの。リュカが森での暮らしを話しても、最初は誰も信じなかった。でも昨日、あなたたちと一緒に戻ってきて……空気が変わったのよ」


村が、私たちの存在を“希望”として見始めているのがわかった。


それは……正直、重い。


けれど、目の前のこの家族や、リュカのような子たちが苦しむのは、もっと嫌だった。


「……私にできることがあれば、協力します。ただし、魔法とかじゃなくて、“知識”とか“工夫”だけですけど」


「それで十分です」ヨラムさんが静かに言った。「村には、そういう知恵が必要なんだ」


リュカがまっすぐ私を見た。


「僕、手伝います。だから、また一緒に村に来てくれませんか?」


私は少し考え、そしてうなずいた。


「……わかった。でも、まずは森に戻って、準備を整えないとね」


「はい!」


朝の光が差し込む中、温かさと緊張感が入り混じる会話だった。


——この村は、まだ何とかなる。きっと。


でもそれは、私たちが“関わる”という選択をしたからだ。


今度こそ、巻き込まれただけじゃない。自分で決めて、一歩踏み出した。


胸の奥で、小さな灯が確かに灯っていくのを感じていた。



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