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第9話 これぞ異世界 魔法の力

アクセスしていただきありがとうございます。

1章が書き終わりましたので第29話まで毎日1話ずつ公開していきますのでよろしくお願いします。

ある日の昼下がり。私は洞窟前の焚き火を整えながら、ふとシエルとダイチの方を振り返った。


「……なにしてるの?」


「キレイな石、並べてるの。ねぇ見て、この赤いやつ、角度によって光り方が違うのよ」


シエルは目を輝かせながら赤い石をじっと見つめ、口元には得意げな笑みを浮かべている。尻尾が楽しげに左右へ揺れていた。


岩の上には、シエルが魔物の体内から取り出した鉱石がいくつも並べられていた。赤い石を最初に見つけて以来、いくつかの魔物から青や白の石も見つけていた。


「ねえねえ、これ押すとちょっと暖かい気がするんだけど!」


ダイチが赤い石を前足でつついた瞬間、小さな火花がぱちっと跳ねた。


「……え?」


シエルと私は、同時に言葉を失った。


「……今の、火?」


私は急いでその赤い石を手に取り、両手で包み込むようにして集中してみた。


……何も起こらない。


「さっきみたいにやってみて」私はダイチに言う。


「えーっと……こう?」


ダイチが赤い石にそっと前足をかけたその瞬間——また、小さな火花がぱちっと跳ねた。


「これは……ただの鉱石じゃない……?」


私はごくりと唾を飲み込み、今度は青い石を手に取る。シエルがそれをじっと見つめていると、石の先からぽたぽたと水が滴り落ちてきた。


「水……!? まさか、これ……魔法?」


「いやいや、魔法なんて……」と否定しかけて、私は言葉を止めた。


異世界なのだ。常識など通用しない。


「鉱石を手にもって意識を集中させてみて。……なんというか、気を送る感じ?」


「気?」シエルが小首をかしげる。


「うん。現実の世界で言う“気功”みたいなものかも。身体の内側からエネルギーを出す感覚」


私は赤い石をもう一度手に持ち、深く呼吸をして集中する。


……ぽっ、と掌にぬくもりが灯る。


「できた……」


信じられない。まるでライターのように、自在に火を灯せる。


青の石も、強く念じれば細く水が流れ出すようになった。


私たちはその日、何度も火と水を出したり止めたりしながら、その仕組みとコツを試行錯誤していった。


そして、魔物から得たこの鉱石を「魔石」と呼ぶことにした。


「なあ、これ使って狩りしようよ!」


ダイチが声を弾ませながら身を乗り出し、尻尾を勢いよく振った。瞳はきらきらと輝いていて、赤い石を前足でそっと引き寄せる姿は、まるで新しいおもちゃに夢中な子どものようだ。


「だーめ。山火事になったらどうするのよ。はい、没収」


私は即座に石を取り上げた。するとダイチは耳を伏せて、しょんぼりとうずくまる。


「シエルはわかってるよね?」


「猫は火事が嫌いなの。賢く使うわ」


シエルは涼しい顔をして言うが、よく見ると青い石を器に入れて嬉しそうに舐めている。


「それ、水の魔石、使ってるじゃない」


「え? 違うわよ。飾ってるだけ」


シエルは目をそらしながら、器のふちにぺろりと舌を這わせた。尻尾がぱたぱたと揺れている。


——飾ってるだけにしては、やけに口元が濡れてるんだけど。


……こないだ作った水路は、もう使わなくなっちゃうかな?


火と水が手軽に得られるようになっただけで、私たちの生活は格段に快適になった。


結局白い魔石は光を発するだけでどんな効果があるのは不明なままだ。


得体のしれない力には危険も伴う。むやみに使うべきではない。


実験と検証が、必要だ。

この作品は「カクヨム」にも掲載しています。そちらでは先行公開中ですので続きが気になる方は是非ご覧ください。

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