「救えなかった者は今を生きる」
――守れなかった命があった。
病に侵され、静かに笑わなくなっていった少女。
何もできなかった。
だから、今度こそ――
「今度こそ、救ってみせる」
銀の剣が、絶望を切り裂く。
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ユウトたちの前に立ちふさがる神罰の執行者。
セラとイリスは捕らえられ、結界の中でその力を奪われていた。
レジスタンスの潜入作戦は、すべて神聖帝国に把握されていた。
内部の裏切り者、ルミナの存在――
それは、仲間として行動してきた時間を否定する冷酷な事実だった。
「お前たちの小細工なんて、すべて見透かされてたのよ」
ルミナの幻術が空間を歪め、戦場の視界すら混乱させていく。
「やめろ! このままじゃ……本当に、終わる……!」
イリスの身体から、徐々に光が失われていく。
世界の“秩序外存在”である彼女に、神罰の執行者の浄化の力が迫る。
轟音と共に、神罰の執行者の一撃を逸らすように、銀の剣が放たれた。
「……遅くなったな」
ユウトの目が見開く。
「お前は……レオン!」
黒いマントをひるがえし、冷たい視線で戦場を見渡す青年――
エルフの森で出会った、あの騎士がそこにいた。
「なんでお前がここに……!」
「ん? 耳に入ったんだよ。“神聖帝国がレジスタンスを潰す”とね。
最後までこの少女を見守ると言った男が、とんだ体たらくだ」
「うるせーよ……でも、助かった」
「礼はいい。“創造の者”、セラ様とイリスを助けるのだろう」
レオンは、結界の中で力を失っていくイリスを見据えた。
「今、目の前で消えようとしてる命がある。
……私は、一度、何もできずに失ったんだ」
レオンの記憶が呼び起こされる。
昔……小さな村で暮らしてた頃、隣に住んでた女の子がいた。
身体が弱くて、でも毎日、笑ってて――それが、ある日、急に笑わなくなって、
病気だって分かったときには、もう手遅れだった。
レオンの声は、いつになく静かだった。
「私には、力がなかった。剣なんか握れなかった。
“神様にお願いすれば治るかな”なんて、本気で言ってた彼女を……
何もできずに見ていたんだ」
握る剣に力がこもる。
「だから……今度こそ、助ける。
セラ様、イリスを、“今を生きる”誰かを、私は見捨てない!」
その掛け声とともに、レオンとユウトは神罰の執行者へと反撃を開始した。
「セラ様! 聞こえてますか!」
レオンの叫びに、セラがうっすらと目を開く。
「……レオン……?」
「まだ終わってません。祈る力があるなら、私たちを信じてください!
信仰でも、神でもなく、私たちが今、戦ってるこの“現実”を!」
セラの目に光が戻る。
結界の内側から、微かな光が走り出す。
「ユウト……私はまだ、戦える……!」
「イリスは……助けて……!」
ユウトの力が、再び解放される。
封じられていた“創造の力”が熱を持って脈打ち始める。
「おおおおおおおおッッ!!」
ユウトの叫びと共に、空間が揺らぐ。
幻術が一瞬乱れ、イリスの拘束が緩む。
「……光量、回復。機能、再起動……戦闘、再開可能」
イリスの瞳が青く輝いた。
入り乱れる戦闘の中で、協力者のアグナ、レジスタンスのメンバーであるファング、トーレンも援軍として参戦し、ルミナの幻術をかき乱す。
だが、神罰の執行者はなお健在。
「まったく、しぶといぜ……」
ユウトが新しく創造の力を溜め直す。
「けど、俺たちは絶対に――負けねぇよ」




