「神罰と裏切りの行方」
神殿の中枢で待ち受けていたのは、絶望的な罠。
仲間の誰かが裏切り者――そしてそれは、最も信頼されていた少女だった。
「……なぜ、ルミナ……?」
セラの声が震える。
「信じていたのに……あなたも、神に見放された者だったはずでしょう!?」
ルミナは冷たく笑う。
その瞳に宿るは、激情の狂信。
「“見放された”? セラ、あなたは何も分かっていない」
「私の国も、私の家族も、神を否定し続けた……。
神がすべてを照らしてくれているというのに、彼らは背を向けたのよ」
「だから、私は導いた。神の意志に従って、信仰を拒絶する民を滅ぼした。
それが、神の正義。私の誇り」
背後に浮かぶのは、神罰の執行者――
黒銀に輝く鋼鉄の神像。その両目は神の代行者たる光を宿している。
「ルミナ……お前、最初から全部……!」
ユウトが拳を握りしめる。
「ええ。セラの迷いも、あなたの存在も、すべて監視していた。
創造の者……いえ、偽りの救世主よ。あなたはこの世界に必要ない!」
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「執行せよ、“神罰の槌(デウス=ハンマー)”」
神罰の執行者が右手を掲げると、天井から光柱が降り注ぐ。
その魔力密度は、ユウトすら息を飲むほど。
「避けろッ!!」
カイルがセラを庇おうと飛び出すが――
ルミナの幻術が空間を歪ませ、逃げ道を奪った。
「逃げ道なんて、最初からなかったのよ」
セラとイリスが光に呑まれ、封印の魔方陣が展開される。
「くっ……イリス! セラ!」
ユウトが叫ぶが、結界が割り込んで彼の力を遮断する。
「創造の力は、今この場では通じない。
ここは神の聖域――“お前たち”のような異端が触れてはならぬ場所だ」
ルミナの声が冷たく響いた。
「こころが、つめたい……」
イリスが静かに呟く。
彼女の機械の心臓が光を失いかけていた。
「セラ……わたし、いてはいけない、存在だったのかもしれない……」
セラは震える唇で言葉を返す。
「違う……あなたは、偽りの命なんかじゃない……! 私は……信仰よりも、あなたを守りたい……」
その言葉に、ルミナの瞳が怒りに染まる。
「やはりお前は……神に背いた!
その罪、ここで裁く!」
神罰の執行者が槌を振りかぶり、イリスへと叩き下ろす刹那――
「――やらせはしない」
轟音とともに、大地が砕けた。
砲撃にも似た衝撃音が響き、神罰の槌を弾き飛ばした何かがあった。
土煙が晴れた先――
そこに立っていたのは、ひとりの男。
黒い外套に身を包んだ男は、無言で槌を受け止めていた。
風になびく銀髪。
表情は静かで、どこかこの世界に似つかわしくない異質さがあった。
「お前は……異端な騎士に成り下がったあの!!!」
ルミナが激昂する。
男はただ静かに、顔を上げた。
「……ああ、“救えなかった者”さ」
そう答えただけで、彼の名も目的も語られない。
だが、ただ一つ――
彼がこの場を変える“鍵”であることは、誰の目にも明らかだった。




