「神殿への潜入」
神聖帝国の聖都、その心臓部にある「天光神殿」。
創造の者ユウトを中心に、反逆者たちはついにこの巨大な信仰の塔へ潜入する。
仲間と築き上げた絆、広がる協力者の輪――
だが、それらすべてが“予定された惨劇”への序章に過ぎなかったことをユウト一行は知らなかった。
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帝国の協力者――その名は《アグナ》。
神殿内の技術部門に属する高位魔導士であり、密かに帝国の方針に疑問を抱く人物だった。
「神殿中枢の結界制御に、一時間の隙を作れる。
ただし、その間に“祈念核”を封じなければ、結界は再起動する。
チャンスは一度きりだ」
作戦会議の場、カイルの声が響く。
「潜入班は、ユウト、セラ、リリィ、イリス、ルミナ、そして俺。
突入と制圧はファング、トーレンたちに任せる。問題あるか?」
「上等だ。お前らとなら、神でも騙せる気がしてくるぜ」
そう言って笑うファングは、鋭い牙を持つ獣人族の男。
かつて神殿騎士団によって故郷の村を滅ぼされ、生き延びた数少ない戦士の一人だった。
本能に忠実な性格だが、義理堅く仲間思いで、何より「人としての誇り」を持って生きている。
「私が気配を断てば、誰にも気づかれずに神殿中枢まで行けるわ」
ルミナは静かに言った。
長い銀髪のエルフの少女であり、滅ぼされた小国の姫。
帝国に家族も国も奪われながら、生き延びてレジスタンスへ加わった。
今や潜入任務において彼女の右に出る者はいない。
その冷静な態度の裏には、深い悲しみと復讐の炎が宿っている。
「祈る者が救われるとは限らない……この目で、それを見てきた」
重厚な声で呟いたのは、トーレン。
元・帝国神殿の高位神官でありながら、貴族と聖職者の腐敗に失望し、自ら袈裟を脱いだ巨漢の僧兵だ。
その身体に宿る気はまさに山の如く、今では肉弾戦の要として仲間を守る盾となっている。
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夜の神殿。月光の下、ルミナの幻術によって身を隠した一行は、神殿の裏口から侵入。
帝国の内部協力者アグナが準備していた通路は完璧だった。
「このままいけば、中枢部にいけそう」
イリスが端末に記録を取りながら言う。
「魔像も起動してないし、セキュリティは案外緩いのね」
リリィは警戒しつつも小声で笑う。
ファングは剣を抜きながら、壁際を素早く移動する。
「……妙だ。こんなにも楽なわけがねぇ」
嗅覚に優れた彼は、空気のわずかな違和感に眉をひそめた。
「私も感じるわ。神殿の結界が“生きている”ような感覚。
本当に誰も、気づいていないの?」
ルミナも幻術を張り直しながら、神経を研ぎ澄ませていた。
中枢部へあと一歩というところで――
「――侵入者、発見。全員包囲網にかかった」
低く響く声が、神殿全体に鳴り響いた。
突如、全方位から結界が展開され、脱出口が消失する。
「なッ……!? どうして……!」
セラが叫ぶ。
「この通路はアグナのルートじゃ……」
「アグナは……裏切っていない。彼女の情報は正確だ」
ルミナが断言する。
彼女は真偽を見抜く特殊な魔眼を持っており、アグナの目に偽りがないことを確信していた。
だが、その時、カイルの通信珠が破裂した。
「――クッ、誰かが……内部に裏切り者がいる!」
直後、突入班のファングからの通信が入る。
『こっちも囲まれた! 待ち伏せだ! 誰かが――作戦内容を漏らしてる!』
その言葉に、一同は凍りつく。
「まさか……レジスタンスの中に、帝国のスパイが……?」
「くそっ! 仕掛けたのは奴らの方か!」
ユウトが激怒の表情で叫ぶ。
直後、神殿の上空に現れる異様な気配――
「創造の者ユウト、そして堕ちた聖女セラ。
神罰を執行する」
巨大な人型の影――金属で編まれた“執行者”の姿。
「ちっ、罠だったってことかよ!」
ユウトが手をかざすが、封印結界の中では創造の力が大幅に制限されていた。
「どうするの、ユウト……」
リリィが息を切らしながら問う。
「ここでやられるの、わたしたち……」
イリスが震える。
「諦めんなよ。まだ終わってねぇ!」
ユウトが叫ぶ。
「誰かがスパイなら、そいつを炙り出して、
その上で神殿から脱出してやる……!」
だが、敵の封鎖は完璧だった。
動力炉からの反応、聖騎士団の包囲、結界式による魔力封鎖――
この状況は、神聖帝国が「すべてを読んでいた」ことを示していた。




