「神に抗う者たち」
エルフの森から数日後――
ユウト一行は、聖女セラの招待により《神聖帝国》を訪れていた。
だが、その空気はどこか不自然だった。
街の人々は表面上は笑っているものの、誰もが目を逸らしていた。
「この国……表は綺麗だけど、裏に何かあるな」
そうつぶやくユウトに、リリィは同意する。
「“神に従う”ことがすべての基準。逆らえば……“異端”として処刑されるのよ」
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白銀の聖堂。
ユウトたちは、ついにセラ本人と対面する。
「……また会えましたね。“創造の者”ユウト様」
セラは神々しい白いドレスを身にまとい、清楚で穏やかな笑みを浮かべていた。
しかし、その目はどこか翳っている。
「急ぎ話を伺いたい。災厄の王、そして……あなたが“何を知っているか”を」
セラは、しばらく黙っていた。
「あなたにすべてを伝えるには、試練を受けていただく必要があります」
「試練?」
「この国には、“神と契約した者”しか知らぬ場所があります。
そこに触れれば……この世界の“真理”に近づけるかもしれません」
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その夜、ユウトは城の裏庭で“処刑場跡”に迷い込む。
そこには、異端者として処刑された人々の名が刻まれた石碑が並んでいた。
「神に逆らっただけで、命を奪うのか……」
その時、背後から声がした。
「彼らは、“抗った”んです。神にではなく、“この世界の嘘”に」
現れたのは、フードを被った青年――名を《カイル》。
「お前……何者だ?」
「俺はかつて、神聖帝国の騎士でした。だが、聖女セラに拾われて“真実”を知った」
「真実……?」
「この世界の“神”は、完全ではない。
むしろ、人の可能性を恐れ、“創造”という異物を封じようとしている」
「……!」
「セラ様は、“神の道具”なんかじゃない。
神を超える者を、この世界に立たせるため……あなたを、試そうとしている」
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その夜、ユウトはセラと再び二人きりで会う。
そして彼女は、ついに仮面を外すように、静かに語り出した。
「私が聖女に選ばれた時、神の声が聞こえました。
“創造の力は、世界を歪める。それを滅ぼすため、災厄の王を目覚めさせる”と」
「じゃあ……“あいつ”を目覚めさせたのは神……?」
「はい。でも私は、受け入れられませんでした。
この世界を守るはずの存在が、何故壊そうとするのか」
彼女は言う。
「だから私は、あなたに賭けます。
創造の力で、世界を塗り替えてください。
私たちが、神に従わずとも未来を選べるように」
その言葉に、ユウトの胸が熱くなる。
「セラ……」
「あなたが“創造”の担い手であるなら、
私も、“希望”としてあなたに従います」
その瞬間、空間に声が響く。
《セラ。汝は義務を忘れたか》
《創造を認めれば、契約は破られる。秩序は崩壊する》
それは神の声――
しかし、セラは震えながらも言い返した。
「私たちの未来は、あなたの“予言”じゃない。
人の意志で選び、進むべきものです」




