表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

「寄り添う音、君と」

エルフの都、ラファリア。

陽射しが柔らかく、木々の葉が優しく揺れる昼下がり。


その日、ユウトはリリィと二人で外へ出る約束をしていた。



---


「遅い。十分遅刻」


 腰に手を当てて睨むリリィ。

 その隣には、いつもと違う少し可愛らしい民族衣装風のワンピース姿の彼女がいた。


「いや、その……イリスとレオンの様子、気になって……」


「……まあ、いいわ。今日はわたしが先導するから、着いてきなさい」


 そう言って、リリィはふわりと微笑んだ。



---


 木の橋を渡り、小道を抜け、小川のせせらぎが聞こえる森の奥へ。

 そこは、エルフ族にとっても特別な“癒しの地”。


「ここは、私の“母様”が眠ってる森。だから、小さい頃からよく来てたの」


 木漏れ日が降り注ぐ中、リリィの声はどこか遠くを見つめていた。


「母様は戦争で亡くなった。でも……ここに来ると、不思議と安心するの」


「……リリィ」


「平和な時間って、脆いものよね。壊れるのは、一瞬」


「だからこそ、今を大切にしたいって思うよ」


 ふたりの手が、そっと触れ合う。



 木の下で休みながら、リリィが言う。


「最近、あんた……少し変わったわね。昔はもっと無鉄砲だった」


「今でも結構無鉄砲じゃない?」


「違う。“守りたいもの”ができた目をしてる。

 あんたは、この世界に来て“誰かのために戦うこと”を選んだのね」


「……俺、強くなりたい。リリィを、みんなを守れるくらいに」


 すると、リリィは少しだけ頬を赤らめながら、囁くように言った。


「じゃあ、これも“守るべきもの”に入る?」


 そう言って、彼女はユウトの袖を小さく引いた。


 その手の温もりは、確かに――“想い”だった。



 帰り際、リリィが道端の草花で花冠を作る。


「……はい。あんたに、プレゼント。これ、こっちの文化だと“契約”の証」


「け、契約って……?」


「深い意味はないわよ、ばーか。でも、

 “わたしはあんたの味方”って、そういう印。忘れないでよね」


 恥ずかしそうにそっぽを向くリリィに、ユウトはそっと微笑んだ。


「ありがとう、リリィ。俺も……お前を信じてる」



---


 その夕暮れ、王国の北端――

 かつて“封印の谷”と呼ばれた地の封印が、静かに解かれつつあった。


 空気が震え、大地が呻く。


 現れたのは、“災厄の王”と呼ばれる、かつて神々に討たれた存在。


 人ではなく、魔でもない、“旧き力”の化身。


 その咆哮が、世界に新たな波紋を投げかける――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ