魔界の姫様になりました
私は転生したら、ちゃんと贅沢をしたい。
弟が3人もいた今世。とりわけ裕福でもなかったから高校生からはバイトを掛け持ちして、給料は家族の食費やなんやらにあてていた。親も兄弟もそれが当たり前みたいな顔してた。最初は褒めて欲しかったし、親が弟達に向けていた愛情が少しでも欲しかった。でも、それが分け与えられないと知るのは随分早かったと思う。
おかげで一人暮らしを始めてもファッションも旅行もしなかった。憧れが無いわけじゃないけど、娯楽に当てるなら貯金してしまう性格だったので贅沢とは無縁の生活だった。
「きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
『ガンッ』
女の人の叫び声が聞こえた瞬間、私の体は吹っ飛ばされた。気づいた時には時すでに遅く、頭は痛いわ、視界は真っ白だわで死にかけの状態だった。
(あぁ、これだったら美味しいご飯でも食べればよかったな…。)
後悔を残しながら私の意識はそこで途切れた。
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「...うひさま!魔王妃様!元気な女の子でございますよ。」
「あぁ、産まれてくれたのね...。あなたが無事で、良かったわ……。後を、よろしくね。」
「魔王妃様?!しっかりしてください!!」
「誰か!治療師呼んでこい!!魔王妃様の出血が止まらん!」
「魔王妃様!!!魔王妃様!!!!!!!!!!!」
生まれたての赤ん坊の目が覚めたのは、周りが騒ぎはじめての時。
(な、なんで。私、確かに死んだはずじゃ……。)
自分の状況に混乱していると、扉が勢いよく開かれた。
『バンッ』
「フレージ!」
「魔王様!い、今はおやめください。魔王妃様のお身体にも障りますから。」
「ここから出ていった侍女が治療師を呼びに行ったようだが、どういうことなんだ!フレージは無事なのか?!」
(まおう、まおう、魔王?!え、待って。さっき私を産んだ人が魔王妃って呼ばれてたから、、あの人が私の...父親?ていうか、魔王ってことは異世、界転生ってことだよね...。ウソウソウソウソ!王道ファンタジーじゃないか!!)
赤ん坊でも言葉が理解できるらしい。
(フレージ?さっきの女の人かな?でも、あの人ならもう…………。)
「何故だ...フレージ。何故なんだ、なぜお前が死ななければならん!応えてくれ、頼む、頼むから……………。」
悲痛な叫び声をあげる男の人。
(初めて見た私でもわかる。愛してたんだ、あの人のこと。)
「魔王様……。」
「黙れ。」
「魔王妃様が亡くなった原因としましては、出産による多量出血、」
「黙れと言っている!!」
『ザシュッ』
鈍い音が響き渡る。医者が首を跳ねられた。一瞬の出来事で、周りはただ呆然と見ていることしか出来なかった。
「ふぇ、ふぁ、ふあああ、ふああああああああああぁああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
(嫌だ!この世界怖すぎる!家帰りたい!!何なの?!なんでこの世界線、生まれた瞬間に人の死を見なきゃいけないの?!)
恐怖と拒絶反応?で泣き叫んだ。
「ふああああああああああああ、あぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
「おい、あの煩いのを何とかしろ。それから、この死体も片付けておけ。フレージの部屋を汚す。」
「承知、致しました。」
私は部屋にいた侍女に連れていかれた。産まれて数時間しか経っていない私は、最悪な状況を目の当たりにしたのである。
***********6年後***********
あの悲惨な事故から6年経った。
「姫様、おはようございます。」
「おはよう、クリスティア。」
専属侍女であるクリスティアは、居なくなった乳母と替わるようにして私の侍女になった。年はかなり離れているけどかなりベテランの方らしく、