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29.弱き者フラグ

 次の日の夜、俺は「攻略の日程が決まったから打ち合わせしよう」という文面でモモとレインを夕食に誘った。


 店は広大な鉄甲の城塞都市であるバゼルランドの中でも格式の高い、現実でも接待とかで使われそうな高級店を選んだ。

 バゼルランドは和テイストの街なのでそこでの御膳は和食が出されるものかと思いきや、食文化は相も変わらず後退しているようで、値段からしてみれば全く割に合わないような肉と魚の素朴で朴訥(ぼくとつ)な味気無いフルコースであり、特に美味いとも不味いとも言えないような、本当に味気無い微妙な味だった。


 おかげで食事はほぼ無言で黙々と消化されるが、雑にツチノコから貰ったメールを読み上げた後に、俺は皆に告げた。


「まぁ、という訳で、今回は自由にやっていいとの事だから、取り敢えず今回はいつもどおり、ノワとレインが前衛をして、モモが前衛にバフをかけながら補佐、立ち位置によっては聖歌を使うかもしれないが一先ず封印して柔軟に立ち回り、俺が後方からヒールをかける、という感じでいこうと思う、何か意見はあるか?」


 俺がそう言うと三人とも無言で首を横に振った。

 食事が朴訥なせいか口数も朴訥だが、まぁ、今日は美味い飯を食って士気を高める目的では無いので構わないだろう。


 続けて俺は本題に入った。


「それで明後日にはボス攻略をしないといけないから、それまでにオウエモンを探して討伐したいんだが、残念ながらオウエモンに遭遇したのは俺たちだけで、かなりのレアエネミーらしいんだ、ユニーククエストだから他のプレイヤーの前には現れないのかもしれないけど、それで何かオウエモンを探すいい方法が無いかと、レインに相談したい」


 俺がそう言うと食事を終えて手持ち無沙汰に座敷の床に仰向けになって雑魚寝していたレインが、やれやれと面倒臭そうに答えた。


「・・・目撃者はいない、それはそうだろうね、だって弱き者は皆殺しにしてるんだろ、的確に弱い奴だけをつけ狙って殺害しているなら、そりゃ完全犯罪だから手がかりは残らないよねぇ、プレイヤーの死体の痕跡は『生命の種』しか残らない訳だし」


「でもそれだと俺たちに見つかったのはおかしくないか?、完全犯罪を狙っているなら俺たちに見つかる事も、俺たちを見逃す事もおかしい、弱者だけを狙うのは分かるが、だったら強者を残す理由ってなんなんだよ、そんなの、完全犯罪狙うなら矛盾しているだろ」


「言うほど矛盾してるかな?、敵は「弱者を狩る」事が目的なんだとしたら、強者と戦う理由は無いし、そして、キリリン達を見逃したのもおそらく、強くなる〝期待〟があったからなんだろう、見どころのある奴は生かして育った後に刈り取る、敵がただの戦闘厨なら自然な行動だと思うけど」


「・・・つまりヒソカムーヴって事か、だとして、どうやったらヒソカに会えるんだ?、まさか変装して旅団に隠れて団長の命を狙ってるみたいな展開になるとは思えないが」


 HUNTE〇 × 〇UNTERを知らない人向けに説明すると、つまりヒソカとは強者と戦う事に喜びを感じる戦闘厨であると同時に、弱者をいたぶる事も大好きな生粋のサディストなのである。

 弱者をつけ狙って狩る、これを一般にヒソカムーヴといい、そして戦闘厨の代表的なキャラがヒソカであるという訳であった。

 ヒソカが今関係あるかは分からないが、一応解説しておく。


「・・・ま、弱い奴を狙うんだとしたら、弱い奴と一緒にいればいいんじゃないかな、これがユニーククエストとかレアエネミーだとしたら、初心者限定の救済措置の可能性もあるし、たとえばキリリンが装備全部外して丸裸で出歩けば、オウエモンも向こうからやってくるんじゃないかな」


 ・・・なんのゲームか忘れたが、主人公が特殊な装備を付けてないと遭遇出来ないモンスターがいたような気がする。

 仮に前回遭遇フラグを立てたのが殺されたコリンだと仮定して、コリンが好んでいた装備はコスパが悪いけど見た目はいい、そんな弱くてかっこいい武器といういかにも初心者が好みそうなチョイスだった。


 つまり、弱い武器と弱い装備、それが弱者の条件として設定されているという仮説は、一応成り立つという訳だ。


「なるほどな、確かに装備という着眼点はアリかもされないな、でもこのデスゲームで丸腰で歩くとか、俺は正直言って無理だし、街から適当な生贄を見繕って尾行するしかないか」


 俺がそう言うとレインはすぐさま声を上げて批難する。


「えー、キリリンが囮になればいいじゃん、団員の為、時間短縮の為、たまには一肌脱いであげたら?、別に護衛付きならそこまで危険でも無いでしょ」


 なんて言われても、当然一肌脱ぐ程の漢気なんて俺に無い。

 危険と分かっている事に首を突っ込むのはそれはただの愚かな命知らずだけだろう。


「お前らはレベル上がって基礎ステ高いからそんな事言えるが、俺はHP50しかないしノワの剣なら防具着けててもワンチャン一撃死するレベルの貧弱ステなんだよ、命綱を簡単に外せるか!・・・いや、そう言えば思い出したぞ、確かオウエモンに殺されたコリンは、「金が貯まったらかっこいい大太刀を買うんだ」って言って死んだ時も大太刀を装備していた、このゲームに於いて大太刀は対人戦を一切考慮していない取り回しの悪過ぎる弱武器、もしかしたら、それを装備していた事がオウエモンに狙われるフラグになった可能性も、あるな・・・」


 そこで俺は思い出した、大太刀はこのゲームにおいては初心者丸出しと言っていいレベルの弱武器であり、そんなものを使う輩も「弱き者」に分類されるだろう。

 デスゲームで実戦向けのまともな武器を使わない奴は見どころが無い、ならばヒソカがこぞって狩る理由にもなる。

 大太刀は手入れのコスパも悪ければ、狭い空間では満足に振り回せない上に味方との連携も取り辛く、そして何よりも重量が重くて筋力の欲求ステータスが高いので、その分防具の装備が弱くなり敏捷性も落ちる。

 卓越した一撃必殺の剣技を持った人間でも無い限り、変な拘りやかっこいいからという理由だけで大太刀を装備するのは自殺行為に等しい。


 そして装備者は夜目遠目からでも獲物を判別できるくらいにシルエットが浮き上がる、オウエモンに狙われる条件として考えた時に、大太刀の装備が一つのフラグになっている可能性は多いにい有り得ると、俺はそこで思い至ったのだ。


 解を得た俺を見てレインは淡々と告げた。


「大太刀の装備、ね、まぁそんな無用の長物を背負ってる物好きなんて、人斬りからすれば格好の獲物にもなる、か、じゃあ話も終わったならこれで解散でいいかな?、ボクも用事があって疲れてるんだ」


 レインはもう用は無いと言わんばかりの淡白さで部屋から出ていく。

 元々この中でもいっとう協調性の無い奴だが、なんかいつもよりも態度に棘があると思い俺はモモに尋ねた。


「なぁモモ、なんかレインの機嫌悪いみたいだが、レインはどうかしたのか?、俺に会えなくて寂しがってるとかか?」


 モモは行儀よく一人だけ美味くもない食事を完食しつつ、飲み込んでから答えた。


「ん・・・、その可能性は皆無だと思いますが、どうなんでしょう・・・、昼間私と一緒にいる時も眠そうにしてますし、もしかしたら夜中に何かしてるのかもしれません」


 レインが暗躍しているそぶり見せるのは初めてでは無いし、ドビュッシーの殺害のように必要なフラグの回収を密かにしている可能性もあるので追求する必要も無いのかもしれないが、それでも気になるものは気になる。

 ・・・が、今はそれを尾行する時間が無いので、俺は一先ず頭の片隅に留めておいて、モモを宿まで送って解散した。


 モモはオウエモン捜索に参加したがっていたが、レインの動向も気になるので見張りの為に待機させた。


 そして俺は適当に見繕った大太刀を背負ってオウエモン探しに繰り出したのであった。

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