28.目指すは伏兵タイプ
「見つからないなぁ、この街が広すぎるっていうのもあるが、中々オウエモンにエンカウントしない、一応、今人斬り狩りに参加している他のプレイヤーにも情報提供を頼んでいるんだが、オウエモンに遭遇したプレイヤー自体がいない有様だ、何かエンカウントする条件か、ユニーククエストとしての必要フラグでもあるのかなぁ」
かれこれ3時間あまり、前回オウエモンと遭遇した座標を中心に捜索するものの、全く気配も手がかりも無かった。
手頃な人斬りNPCには見向きもせずに早足でオウエモンだけを探しているにも関わらずこの体たらくに、俺は打開策を思考してみるものの、全くいい案は思い浮かばない。
仕方ないので俺は憂さ晴らしをするように、鉄刀を使って手頃な人斬りを倒して小銭を稼いでいたのである。
「はぁ───────セイッ!!、・・・ふぅ、まぁ、この人斬り狩りも、対人戦のいい予行練習にはなるか、普通に手強い敵だし、レベル1で戦うには手応えのある相手だ」
俺は手頃な弱そうな人斬りNPCと五分五分の名勝負を繰り広げた後にそう感想を漏らした。
今までのモンスターとかのエネミーは知性が低くて戦闘に於いては少しでも搦手やイレギュラーな攻撃をすると相手が混乱したり、思考停止して対応出来なかったりする訳だが、人斬りNPCは容赦が無いし、こちらの不意打ちや隠し玉に対しても全く動揺しない。
そういう点で対人戦の経験値を増やすならば人斬りNPCを狩るのが最適と思い、俺は暇つぶしがてら手頃な人斬りを見つけては決闘していたのであった。
「お疲れ団長、今の場面だと敵に間合いに入られたと思ったら鍔迫り合って密着するのがいいぞ、多分剣道のテクニックなんだが、密着すれば敵は刃を振るえなくなるからな」
「あー、そういえば見た事あるかも・・・、確かにスレスレで避けるよりは、敵の出だしを潰す方が安牌だったな、アドバイスサンキュー、もっと指導してくれ」
俺はノワのアドバイスを頭の中で反芻し、今のアドバイスが消えないように頭の中で繰り返しイメージをリピートさせた。
上達の近道は上級者からの指導だが、それを付きっきりでして貰えるのは団長の役得と言えるのかもしれない。
「指導なら決闘した方が早いと思うんだけどなぁ、弱い奴と戦っても弱い動きしか学べない訳だし」
「レベル1の俺には丁度いい強さの敵だし、俺はネトゲ廃人のお前のレベルまで強くなる気は無いんだよ、俺はヒーラーだぞ、守られるポジションなんだから確実に勝てる相手にだけ勝てればいいんだよ」
ノワは俺と決闘したがりであり事ある毎に俺と戦いたがっているが、真面目にバトルする気がない俺からすればガチ勢のノワとの決闘なんて間違いなく要らない経験値だし、もし戦う事になっても真剣勝負なんて絶対にしないのだからそういうベクトルの強さを極める事は無意味だと断じていたのだ。
効率重視、現代っ子らしい価値観だが、それは合理主義とは違う、コスパと実用性に勝つためなら手段を選ばないという邪道を混ぜ込んだ効率重視だ。
正直、スマブ〇やサッカーをやった経験があるから自覚しているが、俺はセンス系プレイヤーじゃないので正攻法で上達するにはそれなりの時間がかかる。
でもサッカーなら周辺視野や小賢しいポジショニングからのパスコースのミスリード、FPSも似たような感じで敵の嫌がるポジショニングと、偵察による火力発揮地点の誘導など、そういう脳筋の相手を罠にはめて捌く立ち回りを学べば、脳筋の相手には実力や技術で劣っていても勝てるようになるし技術を学ぶよりコスパがいい。
だから俺は素振りを100万回して理想のフォームを手に入れて基礎の上積みで相手を圧倒するよりも、素振りを100万回した奴でも対応出来ないような搦手や隠し玉を学ぶ方に労力かけるタイプ、という話なのである。
これがスポーツならルールの中で禁止される行為もあるが、何でもあり、魔法もありのデスゲームならば、別に剣を極めなくても勝つ事は出来るという話だ、つまり、元々伏兵タイプの俺からすればこのゲームの中で自分を強化する方法は無限に存在するし、レベルアップや上達にこだわる必要も無いのである。
まぁそれでも最低限の技能実習として、ここで対人戦を想定した人斬り狩りをしている訳であるが、得てして俺の実感として、こういう実力とは一朝一夕では身に付かないし、ノワみたいなゲーム漬けのゲーム廃人に今から追い付ける道理も無いものだ。
だから団長兼参謀兼ネゴシエーター兼その他の雑用係として、技術の修練は最低限でいいと思っているという話だった。
その日は結局夜明けまでオウエモンを捜索したものの、空振りに終わる。
そして次の日俺は、仕方無しに名探偵レインに助言を求める事にしたのであった。




