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25.一生の宝物

 チュンチュン。




「くかぁ〜、ぽへぇ、・・・むにゃむにゃ今日もいい朝だなぁ」


 俺は宿のベッドから起き上がると、大きく伸びをして窓から漏れる朝日を全身に浴びせた。


 朝日を浴びるのは現実での日常的なルーティンだが、バーチャルワールドの中で紫外線を浴びる行為に意味があるかは分からない、でも現実から引き継がれた習慣という奴は、電子世界の中でも中々抜けないものだった。


 それは現実に帰還したキリトが剣士だった頃のクセが抜けないのと似たようなものなのだろう。


 なんて、朝っぱらから似合わないセンチメンタリズムに耽っていたら、一緒に泊まっていたノワが目を覚ました。


「ふわぁ、・・・あ、おはようごさいます、団長」


「ああ、おはよう、調子はどうだ?」


 ノワが眠っていたのは昨日の昼から丸一日、だいたい20時間くらいは眠っている計算になるので、4日分の睡眠負債は大分取り返せていると思うが、寝過ぎも頭痛の原因になるし、今日オウエモン討伐に向かうのは平気かと確認の必要があると判断した。


 それに対してノワは抜けた様子でぼーっと俺の顔を見てから、思い出したように答えた。


「調子・・・・・・、ああ、えっと、調子は・・・、普通かな?、ちょっと頭が重いけど、ネトゲ廃人時代なら三徹レベリングとかしょっちゅうだったし」


「は?、三徹とか、普通の人間に出来ることなのか?、てかネトゲってそんなに徹夜するもんなのかよ!?」


「・・・まぁオレのやってネトゲはイベントがマラソン系ばっかで、結局潜った時間が全てだったし、サービス開始したばっかのpvp有りのMMOだったら初期の課金とレベル差の暴力は圧倒的だからなぁ、〝寝たいけど寝られない〟みたいな感じで、一部の代打ち勢以外は徹夜マラソンが当たり前だったよ、まぁ三徹はそれでもきつくて、結局殆どは二徹でリタイアしちゃうんだけどな」


「・・・なんかそこに、一般人と逸脱者の線引きみたいなものを感じるエピソードだな・・・、まぁなんにせよ、おかげで名刀が手に入った訳だし、これなら今夜オウエモン探しに行けるな」


 そう言って俺はストレージからノワの打った刀、『天華』を取り出した。


「へぇ、これがオレの打った刀か、もっと無銘で無骨な感じが好みだけど、変な装飾とかついてないのは好感触だな、(つか)(つば)(こしらえ)は団長が?」


「ああ、抜き身のままで渡すのもアレかと思ってサプライズで付けといた、黒基調で最高品質のものを武器屋で付けて貰ったんだ、本当は煉獄さんの鍔を付けて炭治郎の日輪刀みたいにしたかったんだけど見つからなくてなぁ、仕方ないから無難な感じてまとめたんだ、ま、俺からのささやかなプレゼントだと思ってくれ」


 ノワは渡された刀を鞘から抜刀すると、それだけでテンションが爆上がりしたように嬉々として刀を振り回す。

 その様子だけでノワの喜びようが伝わってきて、俺はサプライズが成功した事を理解した。


「ありがとう団長、オレの為に選んでくれて、オレ、家族以外からプレゼント貰ったの初めてだ!、一生大事にする!、本当にありがとう団長!!」


 ノワはサプライズ冥利に尽きるようなそんな言葉を送ってくれて、それで俺は照れくさくなって言い返した。


「いや、どうせその武器も50階層超える頃にはお払い箱だし、その頃には金に換えて新しい武器買った方がいいだろ、変なこだわりで弱い武器使うとかただのアホだからな、強い奴は強い武器使うべきだし、喜んでくれるのは嬉しいが、仮にこの先俺が死んで形見になる事があっても、それを後生大事にする必要とか無いからな!」


「・・・それでも、オレにとっては宝物だ、団長が死んでも、ストレージのお守り代わりに後生大事に持ち続けるよ」


「ちっ・・・ったく、そんなもんより俺は思い出を大事にして欲しいけどな、まぁいいや、じゃあ今日は俺用の魔剣買うから付き合ってくれ」


 どうせ俺はメイン戦闘員では無いので魔剣なんて不要と思われるかもしれないが、クソ雑魚低レベルヒーラーの俺だからこそ、自衛の為に命綱の装備は重要なのだ。


 モモがこの間の競馬で勝った1億7500万のうち、一億を名刀の代金、つまりノワの装備代として換算して残りの7500万を三等分し、俺には2500万分の装備を買う資産があった。

 2500万ならAランクの魔剣が買えるし、魔剣も性能はさまざまなので、レベル1でも装備出来る魔剣は存在する。

 プレイヤーの筋力値が攻撃力に加算されず、装備の攻撃力とスキルの威力が純粋にダメージに加算されるシステムである都合上、極論を言えば最強の装備を使えばレベル差は覆せるという話なのである。

 鬼人薬や秘薬のように一時的にステータスを底上げ出来るアイテムもある訳だし、苦労して装備を整えれば低レベルだからといって全く火力貢献出来ないという訳でも無いのである。

 だから俺は自分が火力を出す為の装備と、自衛の役に立ちそうな装備が欲しかったのである。


 俺の提案にノワは頷き、俺たちは二人でバゼルランドの武器屋巡りに繰り出した。

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