24.深淵に潜むモノ
「・・・あーあ、またハズレか」
キリヲ達とパーティーを組んでいた少年、ゼンイツ。
彼は11階層にはレベルアップをする為の唯一のアイテムである『生命の種』がドロップするという噂を聞いて、そこの隠しダンジョンを探索していた。
そこには同じように噂を聞きつけた多くのプレイヤーが出入りしていたが、それが噂の信ぴょう性を引き上げるのと同時に、それの入手がいかに困難かを物語っていた。
そしてゼンイツは同じく隠れダンジョンにて宝探しをしていた見知らぬパーティーに遭遇し、思わず身を隠した。
「・・・ちくしょう、またハズレだ、なぁ、本当に『生命の種』がここで拾えるのか?、もう1週間以上血眼になって探してるが、見つかったなんて報告は一切聞かないぞ」
「・・・でもよぉ、仮にみつけたとして、他人に自慢する訳も無いんだし、それにほら、よく言うじゃねぇか、金脈は諦めずに探した人間だけが見つけられるって、最近はライバルもぼちぼち減って来たし逆にチャンスだろ、どうせ前線でモンスター狩りしても経験値なんて貰えないんだから、だったらここで宝探ししてる方が安全だし賢いって話じゃねぇか?」
「本当にあるんならな、でも情報源が定かでも無いゴールドラッシュに飛びついて徒労に終わるとか馬鹿馬鹿しいだろう、それにアイテムだって常にドロップするとも限らねぇし、だったら次の金脈になるかもしれない22階層の隠しダンジョンを他のパーティーより先に探索する方が賢いし、その為に最前線に出られるだけの装備を整える方が賢いんじゃねぇのか?、装備は金で整えられる訳だしな」
「それもそうだな!、じゃあ俺たちはここで前線に戻るか!」
「はぁ?、ちょっと待てよ、ここまでやって手ぶらで帰るとかそれこそ有り得ねぇだろ!、俺は残るぜ、低レベルで最前線とかやってられねぇよ!」
「ちっ、しょうがねぇな、じゃあバカなシコザールはここでパーティーから追放って事で・・・、じゃあな!」
「ちくしょう、薄情なヤツらめ、レベル1で最前線とかそっちの方が頭悪いだろ・・・ん、こんな所に宝箱が、まだ見つかってないやつか、今リポップした奴なのかな?」
そう言ってシコザールは洞窟の最深部、そこの影に隠れている宝箱を開いた。
そこには・・・
「うおっ!!?、これは『生命の種』!?、やった、やっと見つけた!!、なんだよ、やっぱりあるじゃねぇか!!、ったく、どっちがバカだよ、奴らの方が百倍バカじゃねぇか!!、うひょひょ〜ッ!、これでレベルを安全圏まで上げて、こっからは安全にレベル上げして、上位ギルドに入って、このデスゲームを安全にクリア出来るぜ!、ったく、やっぱりあるんじゃねぇか、世の中は諦めない奴が勝つ、これが何事に於いても真理だな!」
シコザールには成功体験があった。
中学での修学旅行において、お小遣いが三千円しか無かったシコザールは、土産物屋のおじさんに値切りまくって、最終的には班員からお金をカンパしてもらう事で、シコザールは1万円の木刀を五千円で手に入れたのだ。
だからシコザールの辞書には諦めない奴が勝つと刻まれていたのだ。
シコザールは喜びの多幸感に包まれながら、手に入れた『生命の種』を口に入れようとした。
そこで。
「パチパチパチ、コングラッチュレーション、おめでとう、君が記念すべき50人目のお客様さァ、どうだい、僕の企画した宝探しは、楽しんで貰えたかなァ」
「な、なんだよ、お前、お客様?、宝探し?、一体何を言って──────────」
ドンッ。
シコザールは一瞬のうちに押し倒されて、口を塞がれた。
「──────────ッ!!、──────────ッ!!」
シコザールは必死に抵抗し、持っていた剣で男を攻撃するが、男には全く効いていなかった。
「抵抗しても無駄さァ、僕のレベルは40だからねェ、これがレベル制MMOの残酷な格差さァ、よちよち歩きの低レベルの君は、いくら抵抗しても僕に傷一つつける事は敵わないよねェ、さァ、楽しませてくれよォ」
男は真綿で首を絞めるように、じわじわとシコザールを解体していく。
シコザールは声も上げられないままに自身が無惨な死体に変えられていくのを、ただ受け入れるしか無かった。
シコザールは死の恐怖に耐えきれなくなり気絶する。
気絶したプレイヤーはログアウト状態と同じとなり、その場で抜け殻のように倒れるだけだ。
「あーあ、もう壊れちゃったさァ、反応が無いとつまらないなァ」
そこで男はシコザールにトドメを刺して、シコザールの体は『生命の種』へと変換された。
「そろそろ潮時かなァ、そろそろ足が付きそうだし、後は種まきをして、22階層で回収する事にするさァ」
そして男は『生命の種』を宝箱にしまいなおし、何事も無かったようにその場から立ち去ろうとする。
「・・・ん?、【気配探知】に引っかかってたさァ、夢中になっててきづかなかったなァ、まァ顔は見られてない訳だし、問題は無いさァ」
「はぁはぁはぁはぁ、ヤバい、なんだあいつ、なんなんだあいつ!、ヤバ過ぎるっ、あんな、あんな本物の殺人鬼みたいな奴がいるなんて・・・っ!」
ゼンイツは男が振り返った瞬間に一目散に逃げ出していた。
シコザールの〝処刑〟を一部始終見ていたゼンイツは、ここで行われていた〝宝探し〟がただの〝狩り〟だと理解して、それに釣られてきた自分の愚かさを悔いると共に、激しく死の恐怖に苛まれていた。
レベルの高い者には太刀打ちする術が無い。
その現実を見せつけられて、このデスゲームがどれだけ理不尽で恐ろしいものかを知ったゼンイツは、その場から逃げ出す事しか出来なかったのである。




