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17.出走前に

「どうどう、へぇ、乗馬って思ったより簡単なんだな、ゲームの中だからっていうのもあるだろうが、思った通り動いてくれるし結構便利かもしれない、今後のマップで騎馬が利用出来るマップがあったら積極的に利用したいくらいだ」


 パドックで騎乗登録を終えた後に直ちに乗馬する事が出来たが、『ヘイボンモブ』はクセの無い馬なので操る事に障害は無く、他のプレイヤー達が気性難の馬を乗りこなすのに四苦八苦している中で俺は比較的早い段階で乗りこなして、パドックの顔見せを終えてレース場にてウォーミングアップをする事が出来た。


 騎乗すると馬のステータスが表示されて、HPやスタミナなども表示される。

 『ヘイボンモブ』のステータスは

 スピード1000 スタミナ1000 パワー 1000 根性1000 賢さ1000 耐久値1000 の超平凡馬だったが、クセが無い分展開次第では十分勝機があるように思われた。


 馬は全力スプリントをさせるとスタミナゲージを消耗し、速度を上げるにつれて消費スタミナが増加する、スプリントは鞭で叩く事によって発動するという、非常に分かりやすい仕様であり、準備運動時間は30分ほどあったが俺は10分で完全に乗馬の操作を理解し、残りの20分を周囲の観察に費やす事にした。


 俺は丁度競馬場に来たらしいモモとレインの姿を見つけると、馬に乗ったまま二人に近づいた。


「わぁ、お馬さんです、初めて見ました!、この子は大人しい子なんですね、触っても全然嫌がりません」


 モモはそう言って柵の外からヘイボンモブの頭を撫でた。

 俺はそんなモモに有り金全部振り込んで言った。


「取り敢えずモモ、なんか勝てそうな馬に賭けてくれ、そんで負けさせたい馬を教えてくれ、俺とノワでそいつを潰せば複勝なら6分の3で勝てる計算になる、正直どの馬が勝つかさっぱりだからな、俺はお前のビギナーズラックに賭ける事にするぜ」


「また私に丸投げするんですか・・・というか今度は一体いくら必要なんですか?、全財産渡してくるって事はそうとう大変な金策なんですよね」


 モモは毎回ギャンブルに付き合わされてる事に辟易としているのか呆れた様子だったが、俺としてもモモのビギナーズラックの強運には助けられているので頼るしかないのだ。

 なので悪びれずにはっきりと答えた。


「ま、1億くらいだな、なんか名匠っぽいジジイに会ってそいつが1億くれって無心してきたんだよ、ま、1階層が100万で10階層が2000万欲求してきた訳だし、20階層なら1億でも妥当な所だろ」


「1億、ですか、だったら丁度キリヲさんの馬がオッズ35倍で300万で1億になるし丁度よさげですね、キリヲさんに勝つ気とか無いんですか?」


「この馬は性能があまり良くないんだよ、真面目に勝つなら一番人気の『ダイホンメイ』とか二番人気の『ジスウドミ』、三番人気の『モウコダマシイ』辺りが無難だろ、この三頭の三連単ボックス?、とかいうのが人気だってさっきアナウンスされてたぞ」


 俺も競馬には全く詳しくないが、そういうプレイヤーに説明するようなアナウンスが場内では放送されてた。

 そうでなくてくても人気や性能から考えても、この三頭は飛び抜けている印象だったが。


 そんな俺の発言にレインが補足するように言った。


「三連単ボックス、任意の三頭が三着以内になる組み合わせを全て買う馬券の買い方だね、ま、普通の競馬なら手堅さとリターンの両方を狙う買い方だけど、金策をしたいボクらからしたら、上の三頭を蹴落としてオッズを引き上げた下のウマの単勝に全ツッパする方がリターンも大きいし確実なんじゃないかな」


 と、レインは三連単ボックスの購入に対しては否定的だった。


「まぁ俺も競馬はよく分からないけど、人気の馬とは言え、上から三頭を予想してリターンが10倍以下ってどう見てもコスパ悪いもんな、下の馬なら単勝だけで10倍になる訳だし、だったら単勝に賭けた方が簡単そうではあるが・・・」


 とは言え、俺は競馬は何も知らない初心者だし、素人考えが通用するとも思えない。

 還元率が高いのかアクシデントが起こっても返金しないからかは分からないが、一番人気のダイホンメイですらオッズは2倍以上ある訳だしだったら常に1番人気の複勝に倍々方式で賭けて行けば、いつかは億万長者にはなれそうな気もしないでは無い。


 なんて、素人ながらに競馬についての攻略法を考えていたら。


「ふっ、甘いわねご主人様、競馬はもっと奥が深い紳士のギャンブルなのよ」


「じゃあ俺、ウォーミングアップに戻るわ、取り敢えずモモ、適当に1億稼げそうな賭け方しといてくれ!!」


 俺はギャン中の出現をキャンセルして、颯爽とその場を立ち去る。


 そして背後からギャン中は俺に未練がましく言ったのであった。


「ご主人様!!、私はご主人様に1億賭けたわ!!、だからあの時と同じ温もりを、もう一度私に!!」


「・・・あいつ、もう1億も稼いでたのか、しくったな、プライド捨ててカツアゲしとけば速攻で1億手に入ってた訳かよ」


 ギャン中を視界に入れる事自体が不快過ぎたので、仮に先にギャン中、メアを見つけたとしても無視していたのは間違いない訳ではあるものの。


 俺はメアが俺に賭けた1億をもったいないなと思いつつも、あのギャン中ならどうせ直ぐに1億稼げると思って忘れる事にしたのであった。

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