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16.デスダービー

 金策と言えば毎度おなじみのギャンブルである。


 一攫千金、一瞬で大金の動く大きな市場、そんな条件を満たした金策なんて現状ではギャンブルしか無いという話だ。


 そして10階層が闘犬だったのに対して、20階層のギャンブルは競馬だった。


 競馬場に来るのはリアルも合わせて初めてだったが、そこはプレイヤー、NPC含めて数千人規模の人間が集う規模の大きい人気の施設であり、圧巻だった。


 多くの人間が熱狂に包まれながら、緑のターフにて鎬を削る優駿達の勇姿に目を奪われていたのだ。





「捲れ捲れ!!」

「行けー!!差し込めー!!」

「頼むうううう!!逃げ切ってくれー!!!!」



「逃げるエーエーマスオ、しかし大外から追い込み直線一気と迫ってくるアシクサヒロシ、凄い末脚だ!、エーエーマスオかアシクサヒロシか!、エーエーマスオとアシクサヒロシの一騎打ち!勝者は──────アシクサヒロシだ!、アシクサヒロシ、驚異的な末脚を見せつけて一着でゴール!!」


 そこで大きな歓声と共に、場内に紙吹雪が舞った。


 何かの演出かと思ったらそれは観客の投げた外れ馬券だった。

 俺はそれを見て少しだけ感動が伝染したが、同時にマナーが悪いなとも思った。

 そして場内に次のレースがアナウンスされる。


「えー第三レースの出走は1時間後に行われます、馬券の購入は出走5分前に締切ますので、お早めにご購入ください、なお、このレースにおいて起こるいかなるアクシデントにおいても、返金、払い戻しの対応はしかねますのでご容赦ください、続いて、只今より騎乗申請を受けつけます、騎手となりたい方は直ちに申請した後に、抽選のアナウンスの後にパドックに集合してください、こちらの締切は5分となっております」


「・・・騎乗申請?、馬に乗れるって事か?」


 よく見れば今馬に乗っていた騎手も全員がプレイヤーであり、見知った顔だった。


 そして目の前には『騎乗申請しますか?』と書かれたウィンドウが表示される。


「どうする団長、オレ、馬とか乗った事無いんだけど」


「俺も無いけど、何事も経験だろ、それに、闇雲に金賭けるよりも実際に体験した方が理解が早いだろ、えーと、騎手になると、参加費が100万で、馬券は買えなくなる代わりに一着で1000万、5着までが賞金が貰えるのか、普通にやり得だな、まぁ抽選だからそりゃあそうか」


 そう思って『騎乗申請しますか?』のウィンドウに『はい』を押すと続いて出走する馬のリストが表示される。

 10頭いて、それぞれのスペックや抽選倍率なんかが表示されていた。





馬番 (ゲート番号も同一とする).名前 脚質 馬体 気性 直近戦績 倍率


1.カミカゼトッコウ 逃げ 小柄 難 1着-10着-10着 45倍


2.ノルカソルカ 差し 普通 難 9着-2着-9着 36倍


3.ジスウドミ 先行 大型 難 3着-3着-脱落 90倍


4.ヘイボンモブ 先行 小柄 普通 6着-7着-8着 16倍


5.ゴーゴーコング 逃げ 普通 難 5着-5着-5着 55倍


6.モウコダマシイ 先行 大型 辛 3着-3着-4着 327倍


7.ラッキーチンチン 先行 普通 難 7着-7着-1着 77倍


8.タマニカツゼ 追込み 小柄 難 8着-1着-6着 88倍


9.ダイホンメイ 逃げ 普通 良 2着-1着-3着 514倍


10.デビルマツカゼ 差し 大型 悪魔 失格-失格-失格 3倍




 ・・・さて、どれにするか。

 見た感じどの馬に乗っても勝機はありそうというか、全部クセが強過ぎて乗りこなすのが難しそうという印象だ。

 1番人気らしい『ダイホンメイ』が間違いなく勝算が高いが、その分倍率も高い。

 参加費100万とそれなりの出費になるので『ヘイボンモブ』や『デビルマツカゼ』みたいな勝率が低そうな馬は選びたくないものの、逆にこっちは倍率も低いので狙い目と言えなくもない。


 そんな風に考えていたらノワが先に選択し終わっていた。

 俺は参考までに訊いてみた。


「なぁノワ、どれに入れたんだよ、やっぱ無難に『ダイホンメイ』か?」


「いや、そういう普通っぽい選択肢は選ばないというか、やっぱり主人公なら暴れ馬を乗りこなしてこそだと思うんだ、だからオレは『デビルマツカゼ』にした、団長も『デビルマツカゼ』にしよう、5分の2ならそこそこの確率で当たると思うし、それでもう片方が全財産を全ツッパすれば一日で1億稼げるだろ」


「理想論過ぎるだろ・・・、なんで悪魔の馬を乗りこなせる前提で話してんだよ、どうせ落馬して失格するオチだろ、てか初ギャンブルで全ツッパとか考え無し過ぎるだろ、こういうのは最初は様子見するもんなの!」


「えぇー、()()()()団長ならどうせ一発目からビギナーズラック発動して大勝利する可能性だってある訳だし、お金が無くなってもまた稼げばいいだけだろ、どうせ必勝法なんて無いんだからだったら奇跡を信じる方がかっこ良くないか?」


「・・・この厨二病め、物事の基準にかっこよさなんて考慮する材料になんてならないんだよ、ああもう、じゃあ俺は『ヘイボンモブ』にする、倍率低めだし、騎乗して様子見する分には丁度いいだろ」


 ウィンドウを操作して騎乗申請をすると、時間ギリギリだったのか同時に締切りがアナウンスされた。


「これにて騎乗申請を締切ます、それでは乗馬する騎手の抽選を始めます馬番1、カミカゼトッコウ、騎手・・・」


 そんな調子で抽選がアナウンスされる。

 そこで驚くべき事に4番ヘイボンモブで俺の名前が読み上げられた。


「まじか、まぁ『ヘイボンモブ』は大人しい馬っぽいし乗るだけならなんとかなるかな・・・?」


 そう思っていたら続いてのアナウンスで更に驚くべき結果が通知される。


「馬番9、ダイホンメイ、騎手、カントン」




「うっしゃああああああああああああああああああ!!」






 と、そこで近くにいたらしきカントン、ペインキラーの独立愚連隊隊長となった男が雄叫びを上げる。

 倍率500倍のギャンブルに勝ったような話なのだから、その喜びようも当然の反応だろう。

 そして注目のデビルマツカゼの騎手も続けてアナウンスされた。


「馬番10、デビルマツカゼ、騎手──────────ノワ」


「うしっ!」


 と何故かノワもガッツポーズをしているが、こっちは倍率たったの4倍ぽっちなので、そこまで喜べるような結果でも無いし、むしろ100万ドブにするような明らかなハズレ馬なので全く喜ぶ所じゃないのだが、ノワは嬉しそうに俺に言ったのであった。


「やったな団長!、これで一緒に走れるな!、この間の雪辱戦をさせてもらうぜ」


「・・・まぁ、お前の馬はそもそもゴール出来るのかって話なんだが、一緒に走れるのはラッキーか、10分の1の抽選が8分の1になったと考えれば・・・、取り敢えずモモとレイン呼び出そう」


 俺は馬券を買わせる為にモモとレインにメッセージを送って呼び出し、そのままパドックに向かって騎手登録をしに行ったのであった。

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