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13.無銘の剣

「お、この魔剣カッコイイな、性能は・・・へぇ、斬った対象の防御力低下効果か、デバフ能力は殆どのゲームにおいて有効だし普通に強そうだな、なぁ店主、この魔剣は幾らだ?」


 翌日、俺とノワはいつも通りに街の探索をしていると、場末の隠れ家的に存在する場所にて隠れた名店的な武器屋を見つけた。

 そしてそこで見つけた魔剣に俺は目を奪われて、俺は店主に値段を聞いたのだ。


 俺の質問に陽気でチャラい印象の大男が自慢げに答えた。


「お目が高いねあんちゃん、その魔剣は押しも押されぬAランクの魔剣だよ、それがなんとお値段据え置きの2000万グラン!、どうだいあんちゃん、早い者勝ちだよ!」


「2000万か、流石にいい値段してるが、俺とノワの全財産足せば買えそうだな、なぁノワ、この魔剣買う気は無いか?、厨二心をくすぐる良デザで、お前の好きな黒色だぞ、これならオウエモンとも対抗出来るんじゃないか?」


 俺はそう言ってノワに手に取った魔剣、『ホーリーダウナー』を見せつけるが、ノワは興味無さげに雑多に詰め込まれた刀剣の樽の中を物色しつつぼやいた。


「・・・確かにその魔剣もカッコイイし強いとは思うが、それはオウエモンと戦うのに見合う武器じゃない、あいつと戦う為に必要なのはもっと重くて硬い、一撃で相手を刈り取れるようなそんな魔剣だ、それにオレは派手でゴチャゴチャした武器よりも、無骨で素朴な無銘の剣だけど実は最強みたいな武器の方が好きなんだ、だから──────────」


 そう言ってノワは樽の中から一振りの刀を取り出した。


「無銘だけど最強って、実は勇者の剣でしたパターンとかか?、ベタな奴だなぁ、ま、俺も嫌いでは無いけど、でもそういうのってゲームとかでもあまり無いタイプの設定だし、どっちかっていうと漫画とかラノベみたいに、偶然拾った武器が最強だったみたいな〝設定〟だし、ステータスを数値化してるゲームとは合わないものじゃないか?」


 俺はノワが樽から取り出した刀を背後から観察する。


 名前は『鉄刀』、なんの変哲も無い普通の量産型武器に見えるが、ノワはこれの何に惹かれたのだろうか。


 そう思っていたらノワが俺にその刀を手渡した。


「持ってみろ、団長」


「こんなの、ただの普通の刀・・・って、重!?、レベル1の俺のステータスだと振り回せないくらい重い、こんな細身の武器なのに魔剣と同じくらい重いなんてどうなってるんだよ!?」


 その刀は要求筋力ステータスが50はあるくらいに重い。


 無銘でありながら明らかに普通の武器とは違う性能をしていた。

 これが普通の武器では無いのはほぼ間違いない。

 それが樽の中の有象無象の中に混ぜているのだとしたら、それはなんと意地の悪い行為だろう。

 普通の人間ならば魔剣を目当てにAランクの魔剣だけを買おうとするし、こんな何の変哲もない刀に興味を向ける事は稀なのだから。


 結果としてノワの厨二病としてのこだわりが幸をなしたという事だろうか。


「店主、この刀をくれ、幾らだ?」


 ノワがそう言うと店主はバツが悪そうに答えた。


「そいつは俺の作品じゃねぇな、その樽はスラムの野良鍛冶師(スミス)の作品を棚貸ししてる奴だからな、値段と名前は書いてないのかい?」


「ああ、どっちも無記名だ、出来ればこれを作った鍛冶師に合わせてもらいたいんだが」


「だったら探すんだな、スラムのどこかに居るはずだ、悪いが俺はそれを作ったのが誰かは知らねぇよ、棚貸ししてるだけだからな、代わりにその剣は持っていっていいぜ、どうせ埃被った売れ残りだしな、代金を払いたいっていうならあんちゃんが直接払いに行ってくれ」


 店主にそう言われて、俺とノワはそれぞれ剣を装備する為のベルトだけ買って店を出た。


「正体不明の名剣か、いかにも名匠探しのフラグって感じの武器だったな」


「ああ、ようやく一つ目の手がかりだ、剣は重さ重視、やっぱりキリト様の教えは正しかった・・・!」


 そう言えばキリトはフェアリィダンス編で何の変哲もない大剣で敵将ユージンの魔剣グラムと渡り合っていた事を思い出す。

 回避に敏捷性が必須では無いVRMMOならば、純粋な火力こそが正義になるという事だろうか。


 敏捷に極振りして急所に必殺の一撃を突き刺すプレイスタイルのレインとは真逆の発想だが、それでそれぞれ最強格の一人として肩を並べているのだから、結論としてどちらも正解になるのだろう。


 取り敢えずこの調子で、俺たちは名匠探しにバゼルランドのスラムへと向かったのである。

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