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11.ボス攻略会議

 20階層が解放されて約1週間。

 その間に何組かの小規模ギルドがボス戦に挑戦したようだが、もれなく全滅し、これにより10の倍数のボス部屋は脱出不可、大規模戦闘が前提の強敵という仮説がかなり信ぴょう性を帯び始め、最前線を走る攻略組も、10の倍数の攻略だけは他のギルドと協力し、万全を期して行うという方針が固まって来た。


 そんな中で久々の攻略組会議の招集を俺は受けた。

 主催者はビーターギルド『ジョニーズ』のリーダートッポ、恐らく、攻略がつまづいた事で各ギルドの方針を確認する目的での招集だろう。

 11〜19までの階層は各ギルドで早い者勝ちの各自での攻略で、殆ど被害もなく順調な攻略だった故に会議の必要は無かったが、10階層が準備無しの強行軍とは言え100人規模の犠牲を出した以上、この20階層の攻略に攻略組の各ギルドが慎重になるのは自然な事だったし、そしてそういう情報戦に疎いギルドが20階層ボスに無謀に挑み全滅したという訳だ。


 今回は連合軍と元連合軍のリーダーであるテンペとオルト、そして新参の顔ぶれも交えた20人がトッポの指定した教会の会議室に、一堂に会したのであった。


「どうも皆さんこんにちは、俺は今回の会議の主催者で司会進行を務めさせてもらうトッポだ、今回が初参加の者もいる為に、各人改めて自己紹介を願いたい」


 トッポがそう言うとこの会議の暗黙の了解的に『J0̸KERS』のモロエを筆頭にした序列順に各人が自己紹介と挨拶をしていく。

 今回初参加となるのはテンペとオルトを含めた5人だが、俺としても全くノーマークの人間だったのでここでの顔合わせは有難かった。


 そいつらもテンペ、オルトの後に簡潔に挨拶した。


「おっす、オイラは『大都会高崎』のリーダーのピータンだ、よろしくな!」


「『野獣海賊団』のミウラだ」


「僕は『ライムライト』のラスコ、みんなよろしく」


 タンクタイプのマッチョがピータンで、ゴリラタイプのハゲがミウラで、どこにでもいそうな好青年なラスコ、覚えてられるかは分からないが、とりあえずこの場だけでも記憶しようと俺は必死に頭の中で名前を繰り返して記憶の定着に努めた。


 そして全員の挨拶が終わったタイミングでトッポは会議の議題を打ち上げた。


「それでは早速会議を始めさせてもらう、今回の議題は20階層を「誰が」、「どのように」攻略するかだ、皆も薄々気づいている事だろうが、10の倍数のボスは強敵になる事が予測される、10階層が1000人規模の部隊で大きな犠牲を出した事から、今回も生半可なパーティーで挑めば大きな犠牲を生むだろう、そこで私は、今回の攻略についての皆の意見を集計し、ボスを攻略する軍団をここで取り決めようと思う、では先ず、今回のボス攻略を主導したいと思う者は挙手してくれ」


 トッポはそういって一同に挙手を促すが、今回に限って挙手する者は誰もいなかった。

 俺は連合軍のリーダーであるテンペは立候補すると思っていたが、流石に10階層の激戦を経験すれば及び腰になるのも自然な事か。


「立候補者は無し、か、・・・では今度はボス戦に参加する気のある者は挙手、辞退する者は手を下げてくれ」


 今度は数人の人間が手を挙げるが、それでもテンペ、トッポ、ツチノコと言った、上位ギルドの人間だけであり、多くの弱者は俺を含めてここでも傍観の姿勢を見せた。


 俺に関しては魔剣探しと殺人鬼探しでボス戦の準備が出来ていないからという理由が大きいが、貴重な【聖女】スキルを持つモモと、最強格の二人の戦闘員を抱えている都合上、やる気は無くても不参加は認められないのも分かっていた。

 ただ積極的に参加の意思を見せるよりも中立の姿勢を見せた方が交渉が有利になるという意図もあるので、ここではまだ傍観の立場を貫くという訳であり、他の人間もだいたいそんな思惑だろう。

 とにもかくにも、誰が指揮官、主導となるかで中小ギルドの参加の是非は変わる、故にここではまだ、結論を出すタイミングじゃないというだけだ。


 この予定調和じみたやりとりを確認した後に、トッポは改めて問いかけた。


「・・・ふむ、ならば主導者はモロエ、ツチノコ、テンペ殿のいずれかになってもらうしかない訳だが、改めてこの中で主導したいと思う者はいないか?」


 トッポのその問いに、三人はまたしても沈黙した。


 これもギルドの長としては当然の選択なのだろう、自ら立候補してしまえば、他のギルドが被害を負った時に、その責任を追求されてしまうが、自薦でなく他薦であれば、責任は推薦した人間の責任となる。

 このデスゲームに於いて、ギルドの力関係や政治力は死活問題となりうる、故にここで安易に立候補するような馬鹿は、この場にはいないという話だった。


 ・・・多分、普通のゲームならば、こういうのはノリと勢いだけでやりたがる人間は多くいると思う。


 だが既にデスゲームが開始されて1ヶ月であり、その間にプレイヤーは多くの理不尽に直面し、そして1割近くの人間がその理不尽に殺されているのだから。


 だからここで安直な行動を取るような人間はそもそも死んでいるという事なのだ。


 トッポは三人の沈黙を確認した後に、今度は俺たちに問いかけた。


「ではこの三人のうち誰が主導するべきかを、残った者たちの多数決で決めてもらおうと思う、もちろん、誰に投票するのも自由だし、投票したからと言ってボス戦の参加を強制したりはしない、ただ、この場の総意として、誰にボス戦のリーダーをしてもらいたいかを明らかにする必要がある事は理解出来るだろう、では、先ず、モロエに主導してもらいたい者は挙手してくれ」


 モロエを推薦したのは俺を含めて三人だった。

 俺はそこそこ交流のあるモロエがリーダーなら後方に配置して貰えるという損得で投票しただけだが、思ったより人望が無いのは、やはりモロエがビーターだからなのだろう。


 そしてトッポが次にテンペの是非を問うと、今度はゼロ人であり、そして残る全員がツチノコに投票した。

 明らかに消去法で、モロエとテンペに人望が無さ過ぎた故の結果だったが、それでもこの場の総意としてツチノコがリーダーに決まった訳である。


「では、20階層攻略隊の総大将はツチノコにする事を我々の〝総意〟とする、異論のあるものいるか?



 ・・・いないようだな、ならばツチノコ殿、今回の攻略戦において、一先ず招集したい戦力を指名し、そして日程と戦術や配置についての要綱を後日改めて提出して貰いたい、ツチノコ殿、一先ず招集したいギルドの者を今教えてくれ」


 トッポがそう言うとツチノコは少し悩んでから自分と馴染みの深いギルドをいくつか挙げた後に、最後に俺を指名してきた。


「そうだなぁ・・・最低でも1000人は欲しいし、『J0̸KERS』さん、『ジョニーズ』さんには当然来てもらうとして、『和製アズカバン』さんに『東京V(ピース)』さんに『RotPrincess』さんに『豚骨ブラザース』さんに、あ、『野獣海賊団』さんも来て貰っていいですか?、『ペインキラー』さんもいいすか?、おっけー・・・これで1000人いってるかなぁ・・・、あ!、あと、『霧輪組』のキリヲくん!!」


 呼ばれて俺は起立して、バツが悪そうに答えた。


「あー、あのぅ、そんな豪華メンバーオールスターの中に、俺が入ってもいいんすかね?、うちとかめっちゃ弱小ですし・・・」


 俺は断れないと知りつつも、嫌そうな態度を見せておいた。

 うちのパーティーの馬鹿どもは10階層の惨劇を忘れて乗り気ではあるが、俺はアレでボス戦に懲りた口であり、そしてレベルも1で正直戦うのが怖い。

 でもそんな俺の事情なんて誰も考慮してくれないと分かっているから俺は、口では言い返さずに態度だけ反抗しているという訳である。


「はは、相変わらず謙遜家だなぁ、10階層の攻略の立役者で、聖剣を持ってる主人公の君を外せる訳無いだろう!、勿論、来てくれるよね!」


 まるで「明日来てくれるかな?」「いいとも!」みたいな前時代的なノリだが、令和に生きる俺にとっては一ミリも乗っかれないノリなので辞退したい事甚だしい所ではあるが、俺は言葉を飲み込んで、努めて丁寧に答えた。


「えーと実は俺、今20階層の名匠探しをしてて、それが終わるまではボス戦には行きたくないんですけど、ボス戦はいつ頃になりそう、ですかね・・・?」


「名匠探しか、ウチのギルドでも剣士がこぞって情報を集めているみたいだけど、今の所は手がかりは無いな、皆は?」


 ツチノコが全員に言葉を投げかけるが、一様に首を横に振る。


 まぁそもそも条件が最高の剣士の前に現れるという漠然とした条件しか無いのだから、誰も攻略出来なくても当然の話ではあるが、攻略組の面々すらも行方知らずというのはやはり難易度のデカさを感じさせられる話だ。


「んーそうか、名匠探しか、確か10階層が【聖女】がキーマンになった訳だし、20階層が【名匠】が攻略のキーマンになる可能性は大いにありそうか、んーじゃあそうだな、攻略の日取りは名匠探しが終わってからって事で、もしかしたら魔剣が特攻武器になるかもだしな、じゃあキリヲくん、そういう事でいいかな?」


 元々断る選択肢は無い訳だし、時間的猶予を貰えただけでも御の字だろう、俺はしぶしぶ頷いた。


「あ、はい、それでいいと思います、ただまぁ、メンバー全員に魔剣持たせるってなると、どのギルドもそれなりに時間がかかるかもしれませんが・・・」


 俺のその発言にトッポが補足を入れた。


「それについては今回不参加のギルドにも協力してもらおう、利息10%で借金する形で不参加のギルドから融資を受ければ全員は無理でも半数以上に魔剣を持たせる事は出来るし、パーティーの全員が剣士である必要も無いからな、借金も魔剣を売るなりすれば直ぐに返せるだろうしな」


 こうして俺たちはツチノコを総大将とした攻略チームを結成し、一先ずは名匠探しに総力を挙げる事となったのである。

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