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16.鬼学問のすゝめ

「──────────という訳でモモ、供託金を500万かき集めて来たから、さっさとレベル4に上げる為に聖書のテストで点数稼げるように今日から鬼勉(おにべん)な!」


 会議を終えた俺はそのまま宿に戻り、モモには簡潔にそれだけを告げた。


「えっ・・・、ごひゃっ、五百万も?、そして供託金?、なんだかよく分かりませんけど、取り敢えず鬼勉するのだけは嫌です、そんなに鬼勉したいなら兄さんが鬼勉して毎回満点取って自力でレベル4に上げればいいじゃないですか」


 モモは今日までに勉強を強要させられた事に嫌気が差していたのか、かなり、(かたくな)な反抗的態度だが、俺はそんなモモのやる気を引き出す方法の対策を既に練っていたのであった。


「分かってる、・・・勉強って辛いよな、つまらないし、なんの役に立つのかも分からないし、やりがいないし、そしてとても孤独だ、勉強してる暇があったら皆でダンジョンでモンスター狩りたいって思う陽キャのお前の気持ちはとてもよく分かるよ」


 子供に言って聞かせる時のコツ、相手に同調する事。

 子供に理屈を理解させるよりも、相手の感情を動かす方が遥かに簡単なので、理性よりも感情に働きかけるのがいいと、俺は(アリサ)で学んでいた。


 ・・・ちなみに俺はド陰キャなので、人と関わるくらいならば引き篭って勉強してる方がマシと思っているが、今は陽キャのモモに合わせてそう発言しているだけだ。


「だったら人に鬼勉なんて強要しないでくださいよ!、別にいいじゃないですか無理して勉強しなくても、ゲームの中の聖書の内容なんてどれだけ覚えても役に立つ事なんて無いですし、それにテストで満点とっても経験値たいして貰えないって兄さんも言ってたじゃないですか!」


「そうだな、確かにテストで満点を5回とってようやくランク1から2に上がる程度の経験値ならぱ、3から4に上げるには50回くらいは満点を取らないといけないし、それはコスパが悪い、だから俺は9割程度の暗記に留めて適当にやってたが・・・、でも実はな、満点にはボーナスがあったんだ」


「え・・・ボーナスですか?」


「ああ、オルトの情報によれば、お前の他にもう一人ランク3に到達してる奴、そいつは今までのテストの全てで満点を取ることで聖書の完全解答ボーナスを貰い、他人より多く経験値を貰っているらしい、無論、ゴミ拾いなどの奉仕活動にもボーナスを得られる条件があるみたいだが、こっちは不規則で運に左右される、だからお前がもう一人の候補者に追いつかれない為には、完全解答は無理にしても9割くらいの点数をとって貰う必要がある」


「・・・そんな、だったらランク5に上がるのはその人でいいじゃないですか、別に私がランク5にならなければいけない理由なんて無いですよね?」


「・・・いや、そしたらタチの悪い連合軍側の人間が主導してボスの攻略をする事になる、そうなれば益々(ますます)連合軍はつけ上がり、俺たちは肩身の狭い思いをして、お前の大好きなスイーツ巡りも気軽に出来なくなるだろう」


「そんな・・・」


「まぁ、無理に鬼勉しろとは言わないさ、勉強なんて無理矢理させられても成果なんて知れてるからな、だからモモ、もしお前が鬼勉して頑張ってくれるなら───────供託金から得た金の余りを全部お前にくれてやる、今現在俺は1100万持っているが、お前の持ってる80万も本来は徴収する予定だ、だがお前が鬼勉してくれるなら、この金は全部お前の金としてくれてやる、つまり、たった数日勉強するだけでお前は100万の個人資産が貰えるという訳だ、悪い話では無いだろう」


「・・・確かに悪い話では無いですけど、それが逆に怪しいような・・・、何か裏があるんじゃないですか?」


「いいや、これは今日の会議で出た連合軍対策本部の総意というだけだ、お前がもう一人の候補より先にランク4に到達しないと全てが瓦解する、故に俺は供託金を集め、お前にこの話をしているんだ、もし金だけじゃやる気出ないなら・・・そうだな、俺の「一日恋人権」くらいならオマケしてやろう」


「いやそういうのいいですから、むしろ兄さんが私に恋人権くださいってお願いする立場なんじゃないですか、どうせ恋人いた経験とか無いですよね」


「・・・・・・。








 ──────〝今は〟、な、それでどうだ、やってくれるか、いや、俺たちの総意としては、ここでお前に頑張って貰わないと非常に困るんだが」


「──────────はぁ、いいですよ、分かりました、どうせ私は戦闘ではお荷物ですからね、だからこういう地味で辛い仕事で頑張れってそういう事ですもんね、分かりました、やりますよ、その代わり一昨日みたいに分からないからってキレるのはナシですからね」


「・・・つーかお前、名門校を自称するなら簡単な暗記くらい出来て当然だろ、なんで底辺進学校の俺より点数悪いんだよ」


「兄さんは高校生じゃないですか、私はまだ中学生ですし、勉強よりスポーツとかのが得意ですから」


「え・・・、そうなの?、俺はてっきり名門女子校ならお下げとメガネが似合うような委員長系のお嬢様をイメージしてたんだが」


「全然真逆ですよ私、・・・って、リアルの事聞くのはマナー違反じゃなかったんですか」


「そうだったな、悪い悪い、お詫びに俺の個人情報を開示してやるよ、これでおあいこな、身長170センチくらいで、顔は向井(おさむ)似のそこそこイケメンで、学校の成績は中の下で、スポーツは割と得意だ」


「全然必要ない情報をありがとうございます、というか自分でイケメンって言う人って信用出来ないです」


「そうか?、イケメンが「僕は普通です」って言っても嫌味にしかならんだろ、だったら偽らない事が真の謙虚(けんきょ)で誠実さだと俺は思うけど」


「・・・じゃあ私は桜梅(さくらうめ)桃華(とうか)似の10年に1人の美少女で、学校の成績は下の下でこの間も赤点4つ取っちゃいましたけど、スポーツはそこそこ得意でクラスでは2番目に足が速い美少女です!」


「・・・自分で美少女とか信用出来んな、顔写真うpはよ、てかさくらうめとうかって誰だよ、実在の人物か?、俺AV女優とかはあんま詳しくないぞ」


「失礼!、あまりにも失礼過ぎます!今注目の新人アイドルでイ〇スタのフォロワーも50万人くらいいますよ!!」


「俺はアイドルとか興味無いからなぁ・・・、まぁいいや、じゃあそこそこ顔が良くて勉強は不得手でスポーツが得意って事か・・・、なんだよ同類じゃねーか!、俺と一緒じゃん!、俺今まではお前が陽キャのハイスペだと思って気後れしてたけど、これからは対等に接することが出来そうだわ!」


「・・・えっ!?、そもそも私が対等に扱われて無いですよね・・・、というか兄さんと同類とか本当に勘弁して欲しいんですけど、それに私、10年に1人の美少女ですから、そこそこレベルの兄さんとは釣り合いませんからっ!」


「・・・ま、そういう事にしといてやるよ、でも今後、自分が美少女だから優遇されて当然みたいな態度取ったら容赦なく教育するから注意しろよ」


「美少女でなくても年下の女の子なので配慮してもらいたい所ですが、反フェミ思想で恋人ゼロの兄さんには言っても無駄ですよね・・・」


「俺のはただの男女平等主義なだけだから」


 そしてその日のテストで俺は満点、モモは60点だったので、俺は容赦なくモモに鬼勉を強要したのであった。

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