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6.ナワバリ

 次の日俺たちは10階層のダンジョンを探索していると。


「おい、お前ら、マッピングデータを寄越せ」


「あ、あなたは連合軍の・・・、どうぞ」


「・・・ふん、結構深くまで探索してるじゃないか、ご苦労なこった、・・・ここで長生きしたかったら連合軍には逆らわない事だ、というか貴様らもただの仲良しギルドだろう?、今からでも連合軍に所属したらどうだ?、十傑の私の口利きなら出世も早いぞ?」


「ええと、お気持ちは有難いんですけど、俺もこいつらも社会不適合者で、規則とかノルマとか勤労とか、そういうの無理なんで、多分フリー以外でやってくのは無理、ですかね、あ、それでも協力とかなら惜しむつもりは無いんですけど・・・」


「・・・確かにお前たちは社会では約立たずの無能で、ゲームしか取り柄の無いクズなんだろうが、だが連合軍はそんなお前たちでも歓迎する、悪人として駆逐されたくないのならば身の振り方はしっかり考えるんだな」


「忠告、感謝します・・・」





 そしてその日の終わりの夕食にて。



「おい、ここは連合軍のナワバリだ、連合軍じゃ無い奴は出ていけ!!」


「分かりました出ていきます・・・」




「見て分からねぇか?、ここにお前の席はねぇよ、失せな」


「・・・・・・・」




「おまえモグリだな、この辺は今連合軍の貸切なんだよ、余所者は貧民街にでも行ってろ!!」


「はい・・・」





 と、このようにヘルゲートは1000人いる連合軍によってあらかた占拠されており、俺たちはスラム街へと追いやられるハメになったのであった。


 スラム街にある酒場で薄味で固いパンと酒をつまみ、俺たちは廃墟となった無人の古い洋館を宿として利用する事にしたのであった。



「・・・まさかここでもまたスラム暮らしをする事になるなんて」


 モモは埃まみれの部屋に入るなりそうぼやくが。


「仕方ないだろ、どこもかしこも連合軍が占拠しててナワバリにされてるし、この状況で連合軍にケンカを売るのも得策じゃないからな、だから受け入れろ」


「だとしても連合軍の人達、あまりにも勝手過ぎますよ、通行料は取るし街は占拠するしダンジョンでは横取りするし、こんなのあんまりです!!」


「ボクらをゲームしか取り柄の無いクズと蔑むなら、あいつらは群れてるだけのドブネズミの癖に、ムカつくよね、自分で攻略する腕も知恵も無いくせに、組織の威光を振りかざして偉ぶるとか、ダサ過ぎでしょ」


「アイ〇クラッド解放軍とそっくり、多分そのうちキバ〇ウみたいなのも出てきそう・・・関わりたくない」


「まぁ大組織の人間が増長するのは人間の(さが)みたいなもんだろ、そもそも群れてないと安心出来ないからどれだけ搾取されてても群れようとする可哀想な奴らなんだし、多少の悪口くらいは多めに見てやろうぜ」


 団員の空気がフラストレーションの爆発寸前といった感じでかなり不穏だったのでそのようにフォロー入れるが。


「むぅ、でも今日はこの街のスイーツとか夜景を眺めながらのふかふかベッドとか、色々堪能(たんのう)しようとしてたのにこれは無いですよ!、今まで苦労してお金貯めて、やっとここまで辿り着いたのに!!」


「ねぇキリリン、連合軍潰す会議とか無いの?、流石にここまでされてたら他のギルドも黙って無いと思うし、連合軍やっつけないとその方が危険だよね」


「同意、今は奴らの方がよっぽど悪人」


「・・・今のところ他のギルドからの連絡は無いし、それに連合軍だって所詮は1000人規模のギルドで他の全プレイヤーを敵に回せるほどの勢力でも無い、こっから勢力を増やされたら困るが、そうでないなら向こうだって横暴を続ければ立場が危うくなるんだし、そのうち譲歩(じょうほ)するだろうよ」


「そうでしょうかね・・・」


 メンバーは皆が不満げだったので俺は話題を切り替えた。


「とりあえずダンジョンに行っても成果横取りされるし、今は貯金もあるからな、明日はオフにして、それぞれ街の探索でもしてみようぜ、この街はでっかい修道院と教会あるみたいだし、色々探索も出来るだろうしさ、むしろダンジョンを攻略しないで済むと思って探索を楽しもうぜ」


 俺がそう提案すると真っ先にレインが頷いた。


「いいね、ボクもたまには一人で静かに過ごしたいと思ってたんだ」


「オレも・・・、武器屋を巡りたいと思ってた」


「私もスイーツ巡りがしたいです!!」


 と、オフにする事に対しては皆が肯定的であり、直ぐに受け入れられた。


「・・・一応釘刺しとくが、連合軍とケンカはするなよ?、あとモモ、お前は誘拐や暗殺されかねないから単独行動NGな、明日は俺がスイーツ巡り付き合ってやるから俺とペアで行動しろ」


「え?、何でですか、だったら私、レインかノワと一緒がいいんですけど」


「ボクは用事があるから辞退させて貰うよ、ノワリンは?」


「・・・オレは、スイーツ巡りでも構わない」


 モモは俺と二人きりが嫌なのか心底嫌そうな態度だが、これにはこっちの事情もあったのだ。


「レインとノワは目立ち過ぎるからダメだ、その点お前はデフォルトアバターで顔に特徴が無いし、美容院で軽くイメチェンするだけで変装出来るだろ、だからお前は明日俺と一緒に、連合軍に体験入団しにいく」


 ちなみに俺のアバターも普通にかっこいい感じの若い青年って感じで、よく言えば王道、悪く言えば無個性という、特に特徴も無ければよくあるデザインだった。


「ええ!?、私が連合軍に!?」


 モモは驚いてるようだが、事情としては俺一人で潜入するのも、三人を放置するのも不足事態の対処に困ると思ったので、一番お荷物でトラブルメーカーになりかねないモモを自分で処理しようと思っただけの話である。

 それを説明するのはやぶ蛇になるので内緒だが。


「・・・という訳だ、ノワ、レイン、お前らは明日から完全オフだから適当にブラついて遊んでろ、俺らの潜入任務はいつまで続けるか未定だから無駄遣いせずに生活しろ、まぁレインがドピュッシーの金100万持ってる訳だし、いざとなればレインから借金すればなんとかなるだろう、傭兵やクエストなど稼ぐ手段もある訳だしな」


「ふうん、潜入とは面白そうだね、ま、ボクは興味無いけど」


「了解、ここにも修練場があったし、修行期間だと思う事にする」


「・・・キリヲさんと二人で潜入とか、絶対ロクでもない目に遭う気しかしませんね…」


 俺もモモと二人きりで大丈夫なのかという不安は尽きないのでお互い様だった。


「一番の問題児の癖にいらん心配とかすな、それに安心しろ!、・・・俺がオメェを、守ってやるからよ・・・!!」


「うわぁ・・・、「キリヲさんに言われても嬉しくないセリフ第一位」にランクインです、おめでとうございます!」


 俺に甘い声で囁かれて鳥肌が立ったのかモモは本気で引いて気持ち悪がっていたが、声の演技だけは自信のある俺としてはムカつく所だった。

 これでもモノマネ芸は年季が入っていて、たまに披露するとウケも良かったし、今だってほぼ完璧に山口勝〇の声を真似たつもりだったのだが…。


「・・・ちっ、じゃあもう守ってやらないからな、お前が泣こうが喚こうが絶対見捨ててやるからな、覚悟しとけよ!!」


「いいですよ、私だってこのゲームに馴染んでもう一ヶ月経つんですから、今更守って貰う必要とか無いですから!」


 こんなやり取りを挟みつつ次の日俺は、スイーツ(笑) ←ほぼ死語、巡りに付き合う事になったのであった。

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