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4.連合軍、進軍

 次の日、俺たちは9階層のボス部屋を目指して遺跡へと潜った。


 ここは神殿のような形状の迷宮であり、RPGではよくある感じの非現実的な建築物で広大だったが、運が良かったのか、比較的早くボス部屋を見つける事が出来た。


「うぉ、でっかい扉と豪華な装飾、ここがボス部屋で間違いないっぽいな」


「意外と早く見つかりましたね、まぁレベル2になったおかげで戦闘がかなり楽になったっていうのもあるんでしょうが」


「それでどうする?、味見しとく?、ボクらならワンチャンあるよね、今までの攻略戦は歯応え無さすぎだったし、たまには歯応えのある戦闘もしないと」


「オレは・・・、構わない」


「まぁ偵察する分には問題無いですよね、だって今日はまだ1回もヒール使ってないですし」


 と、危機感の欠如した馬鹿どもがそんな風にボス部屋の探検を提案してくるが。


「お前ら正気か?、馬鹿なのか?、今まで慎重に慎重に石橋を叩いて渡ってきたのに、この未知の階層でいきなり命綱外してバンジージャンプとか、それただの自殺だから、お前らレベル2になって火力が2倍近く上がったからって浮かれてんじゃねーよ!、そもそもボス戦を四人で攻略とか何時間かかると思ってんだ、単体ボスならスイッチすればスタミナ回復させてワンチャンあるかもしれないが、複数戦だとその時点で詰みだし、この階層の傾向から言ってゴブリンエンペラーとゴブリンエンプレスとその子供みたいに、複数敵になる確率の方が濃厚なんだし、ここに4人だけで突っ込むとか正気じゃないだろ!!」


 俺がそう吠えるとレインは心底面白そうな態度で言い返した。


「はは、相変わらずキレのあるツッコミだね、勿論冗談に決まってるだろ、今のはノリで言っただけだよ、ねぇ」


 レインがそう言うと他の二人も頷いて見せるが、俺はこいつらが本物の馬鹿であり、さっきの会話もノリでは無く本気で言ってると確信していたので、そんな風に言われても全く信用していない。


「取り敢えずマッピングは終わった訳だし今晩は他のギルドとギルマス会議をして、それで最低でも50人規模の偵察隊を組んでから偵察だろ、ここがボスを倒すまで離脱不可能な部屋の可能性だってある訳だからな、万全でないパーティーで挑むなんて絶対にあり得ない!!、目標はクリアしたんだしさっさと撤収するぞ!!」


 俺がそう言うと三人とも後ろ髪引かれるように口惜しそうに振り返りるが、俺が「今日は成果があったから奮発して高い店で宴しよう」と言うと、話題はどこの店で宴を開くかにシフトして、なんとかその場をやり過ごした。


 そして迷宮を引き返す復路にて。


「ん、あれ、どこのギルドだ?、かなり数が多いが」


 正面から隊列を組む大人数の集団が見えた。


 今の所プレイヤーキルは活発化していないので、この最前線においては警戒するような対象では無いが、それでも大人数のギルドは脅威であり、圧巻だった。


 そしてその隊列の先頭に立つ隊長格と思しき男が、俺たちに声をかけてきた。


「君たちは、確か決闘をしていた・・・、キリヲくんだったかな?」


 若くてイケメン好青年系の男がそんな風に質問して来たので、俺もそれなりに丁寧な態度で応えた。


「あ、はい、そうですね、えっと、初対面じゃなかったらすみません、どちら様でしょうか・・・?」


 それに男は爽やかな態度で答える。


「僕の名はオルト、連合軍の副団長をしている者だ、君とは初対面だね」


「オルトさん・・・、という事は連合軍は総出を挙げてこのダンジョンを攻略しに来た、という訳ですか・・・」


「まぁそういう事だね、この為に200人の戦力を集めた、そこで提案なんだけど、君たちはこのマップの偵察は終わったのかな?」


 そこで俺は正直に答えるか迷ったが、連合軍のNo.2相手に恩を売るのも悪くないし、どうせこの軍勢なら遅かれ早かれボス部屋にたどり着くだろうから、隠すメリットは無いと思い正直に答えた。


「ええ、ボス部屋までのマッピングは一応、終わってます」


 そう言うとオルトは声を弾まてせて俺に詰め寄ってきた。


「それは良かった!!、キリヲくん、そのマップデータ、良ければ僕らに譲ってくれないだろうか、善人ならば譲って当然だろうと横暴な事は言わない、ただ僕らはこのデスゲームに閉じ込められた立場の人間として、助け合うべきだし、僕も勿論、君たちが困っている時は手を差し伸べるつもりだ、だからどうか、そのデータを譲ってくれ!!」


 そう言ってオルトはプライドの高い奴らばかりの連合軍にしては珍しい事に、頭を下げてこちらに頼み込んできた。

 その態度に若干面食らいつつ、俺は答えた。


「そんな、別に頭を下げる必要はありませんよ、あなたの言う通り、俺たちは助け合う立場ですから、勿論、お渡ししますよ、どうぞ」


 そう言って俺は自身がマッピングしたデータを複製してオルトに渡した。

 相手が非の打ち所の無い善人を演じているようなので俺もそれに合わせた感じだ。


「ありがとう!!、やっぱり君は善人側だった!!、君たちが現在悪人のビーター側についているのも我々が連合軍が不甲斐ないからなんだろうが安心してくれ!!、この攻略の成功の暁には我々が悪人を駆逐し、君たちを解放に導いて見せる!!」


 そう言ってオルトは俺の手を強く握り締めて、強く感謝を口にして去っていく。


 すれ違う連合軍の兵士達の瞳は使命感や闘志に燃えていて生気が満ち溢れており、このギルドはボス攻略を成功させるだろうと、そんな予感を感じさせる迫力があった。





 そして帰り際にモモがぽつりと俺に零した。


「あの、マップデータ、あげても良かったんですか?、ボス攻略の恩恵は階層を通過するトンネルの通行料を取る権利とレアアイテムですけど、連合軍が攻略したら悪人は通さないとか言って通行料を取る可能性もありますよね?」


 トンネルの通行料はボスを討伐したギルドが設定する事が出来て、その場合10万取られる。

 まぁボス攻略にかかる費用を考えれば命を賭けるリスクを回避して下層に行けると考えれば特別高い金額では無いし、それに加え今の所ビーター達は通行料を設定していない訳だが。

 覇権を狙っている連合軍ならば、ここまでに到達する費用の回収として設定する可能性もあるし、先に到達した10階層を占拠し、後から来たもの達を追い出すみたいな懸念(けねん)もあった。


「そうだな、多分やつらは攻略するだろうけど、でも40万も今は払えない金額じゃないからな、このまま連合軍が覇権として攻略の先陣を突き進むなら敵対する方が悪手になるだろうし、ここは様子見するのがいいだろう」


「むぅ、だったらボクらも混ぜて貰えるように頼めばいいのに、ラストアタックの権利は放棄しますって言えば見学くらいさせて貰えたっしょ」


「オレも、戦いたかった…」


「いや、邪魔するのは嫌われるし、それに連携取れない奴らと組むのは危険だからな、何が起きるか分からないし、参加するのだけは有り得ないだろ」


「確かに、迫力はありましたけど、なにか危険な感じしましたよね、うまく言葉には出来ないんですけど」


「・・・胡散臭い」


「まぁゲームの中とはいえ、あそこまで露骨に猫被ってたらな」


 オルトに限らず連合軍のボスであるテンペも善人ぶっていて中々に胡散臭い奴らだが、それでもあれだけの人数をまとめあげるカリスマは見上げたものだし、普通に人間として格上に感じてしまうが、人間不信の俺からすれば一番信用は出来なかった。


「でも、そういうスリルがあるから面白い訳でしょ、裏表の無い善人とか、それこそNPCだけの存在な訳だし」


 レインはライア〇ゲームの世界の住人なのか騙し合い上等みたいなスタンスだが、俺には裏切りをケア出来るだけの実力や自信は無いので、そんな破滅真っ逆さまの選択肢なんて選べる訳も無い。




 そしてその後オルト率いる連合軍は9階層を攻略し、10階層は解放されたのであった。

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