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22.開幕の前夜

「騎士が黒幕って事は、恐らくこの階層のボスは騎士で、それを討伐する事がこの階層のクリア条件って事になるのかな」


 俺たちは最後の晩餐さながらに、アジトで俺が適当に作った (炊事担当)粗末なパスタをそれぞれ食しながら、次の予定についての会議をしていた。


 騎士が黒幕であり俺たちを閉じ込めてる張本人なのだとしたら、騎士を倒すことがフロアの解放条件となるのは自然な展開だろう。


 そして、それをすればデスゲームが開幕となる。


 故に、最後にメンバーの意思確認をする目的で、俺たちは話し合っていたのである。


 それにレインが最初に答えた。


「どうだろうね、敵が騎士なのだとしたら、敵の戦力は明確な代わりに勝算はかなり低いよ、だってバスターと互角に戦える人間が1万人いてもほんのひと握りしかいない、恐らく五人もいないだろう、そしてレベル上げの手段は限定的で有限な上に、死んだら即ゲームオーバーのクソゲーだ、そんなクソバランス、はっきり言って許される訳が無いし、もうひとひねりくらいはありそうだけど」


「・・・確かに、な、でもビーター達は1度倒してる訳だし、騎士は派閥争いもしてる訳だろう?、攻略が不可能とは思えないが」


「だからおかしいんじゃないのかい、敵が本当に騎士だとしたら、ビーター達はバスターに瞬殺される訳が無いけど、実際は瞬殺されまくってた訳だろう?、それに白金騎士の称号を持つ人間もボク含めてまだ2人しかいない現状だ、敵が騎士なのだとしたら、ボクらの勝算は(いちじる)しく低いはずだ」


 騎士の人数は100人いる。

 MMOだから大規模戦闘の序盤の敵として手頃な相手だと思うし、バスター以外には勝てている訳だから、実際戦ってもそこまで劣勢になるとは思えないが、それはガチの殺し合いでバスターを倒せるという仮定の話だ。


 結局、レインはバスターに一太刀浴びせただけで倒せた訳では無い。

 それが、レインが騎士と敵対する事に対して不安を抱いている理由なのだろう。


「・・・ノワはどう思う?、バスターには勝てそうか?」


 俺の質問に無言でパスタを頬張っていたノワが、びくんと挙動不審に跳ねてから、もそもそと咀嚼し、飲み込んでから答えた。


「わっ・・・、オレは、全員がレベル1のままで戦うなら、それはかなり厳しい戦いになると思う、オレは初日から修練場に通ってたから言えるが、騎士の純粋な戦闘力は、プレイヤー10人分に相当する強さだ、つまり、10000人いてようやく互角、互角の戦いならば、被害も相応のものになるだろうし、正直、戦いたくない」


 バスターとスタミナが切れるまで互角に戦う実力があるノワですら騎士をそこまで買っているのであれば、実際に騎士を倒すのは相当骨が折れると見て間違いないだろう。

 つまり、騎士を倒せるだけの戦力を集めるのが次のステップになる訳だ。

 今の所俺たちは他のギルドと交流を持たず、同盟できる相手はいない、すなわち、それはボス戦に参加する資格を持たないという事でもある。

 故に、下準備の最終段階として、他のギルドとの同盟が必要という事だ。


「勝算の為には数を集める必要があるし、今チュートリアルを解放するのは危険、か、一応聞くけど、モモはなんか思った事とかあるか」


 一応、大して期待はしてないが、モモも仲間なので話題を振ってやった。

 それにモモはむっとしながら立ち上がって意気揚々として答えた。


「一応ってなんですか!、私だってここまでの話を聞いて、ちゃんと考えてる事とかあるんですからね!!」


「そうか、じゃあすまんかった、でも俺を唸らせられるだけの意見を、ゲーム初心者のモモに言えるかな?」


「ふん、好きなだけ馬鹿にすればいいです、では言わせてもらいます、私は、騎士と王女様を仲直りさせて、王様を生き返らせて元通りにする方法が無いかと、提案させて貰います」


「・・・・・・?????」


 俺は何言ってんだお前?みたいな無言の圧でモモを睨むが、対照的にレインは、「そう来たか!」みたいな笑みを浮かべてモモを賞賛した。


「へぇ、面白いね、どう見ても戦うしかない状況なのに、君は戦わないで済む方法を模索しようって言うんだね、それはどうしてだい」


「だって、騎士が王様を殺したのも、戦争するのが嫌で、きっと、何か理由があっての事ですよね、それに、王女様は自分たちの事を悪人だと仰ってました、そこの意図を読み取るならば、きっと、王様達は殺されるだけの理由があった、だから、実は王様がまだ死んでいないなら、生き返らせれば元に戻る可能性もあって、騎士と敵対せずに、デスゲームを開始させない道もあるんじゃないかと、そう思うんです」


「それは──────────」


 一理あると、言葉にする事は出来なかった。

 だってこれは〝ゲーム〟だ、だから争いを根本から否定するような選択肢など存在する訳が無い。


 あくまで俺の仮説だが、これが〝チュートリアル〟であるならば、善人と悪人の2大陣営戦、MMOの基本である勢力の分岐の為の下準備として、この世界の世界観に馴染み、陣営を選択する為の猶予期間としてこのチュートリアルが設けられているのだと予想出来る。


 故に、そういう選択肢が用意されている可能性など限りなく低いし、そしてこの王国が世界の底辺で搾取される最下層である以上、搾取したい騎士と、搾取を終わらせたい国王の対立を完全に無くす事は不可能だろう。


 これは現実で当て嵌めるならば、アメリカやイギリスが植民地から吸い取った富を返却し、世界中にある自国の国産企業をその国に帰化させる事を認める、みたいな話だからだ。

 だからそれを実現させるのは不可能だと誰もが思う事だろう。


 でも、モモの意見には一つだけ、現実とは相似しない、ゲームならではの抜け穴があったのだ。


「モモくん、騎士と敵対しない道はあるかもしれない、でも、デスゲームを開始させない道は存在しない、だって、ボクらは今だからHPを保護されてるけど、この保護が切れた瞬間に殺し合いが始まるんだから、だから、騎士と敵対しない事は可能でも、デスゲーム自体の回避は不可能だよ」


 レインの指摘にモモは今一度思案した後に、改善案を述べた。


「・・・そうです、ね、訂正します、ならば私たちは、私たちは別に、騎士と敵対する必要なんて無い筈なんです、王様は帝国と戦う為に【勇者】である私たちを召喚して、騎士たちは戦争を回避する為、もしくは今の体制を維持する為に王様を殺害した、ならば、私たちが帝国を倒して、帝国さえ無くなってしまえば、それは王様にとっても、騎士にとっても、どちらも自分の望みを叶える結果になると思うんです」


「なるほど、・・・ふむ、面白い、実に面白い意見だと思う、これは騎士と戦うのは嫌だというボクらの意見すらも満たす百点満点のウルトラCだ、どうだいキリリン、君はモモくんの意見についてどう思う」


 レインはガチ戦じゃない時はバスターと戦いたがっていたが、殺し合いでバスターと戦うのは嫌なのか、いやにモモの意見に好意的だった。

 そこに何かしらの違和感を感じつつも、俺はモモの意見に対して率直な感想を述べた。


「・・・確かに、騎士が悪者だから倒さないといけない、っていうのは、俺の勝手な早とちりだったのかもしれないな、この世界には倒すべき魔王も救うべき王女もいないのであれば、騎士と戦わなければいけない理由も、もしかしたら無いのかもしれない」


「ま、騎士は【勇者】に王様殺害の罪を被せようとしてたみたいだし、それを踏まえたら戦う理由が無い訳でも無いけど、でも、回避出来るなら回避したい戦いだよね、ボス戦をスキップしてフロア解放出来るならば、それは労せずして勝つ儲けものな訳だし」


「・・・分かった、取り敢えず、王様を蘇生して、和解出来る道が無いかを探す事にしよう、でも今日からはいつデスゲームが開幕するフラグが立つか分からない危険な状態だから、これからは常に固まって行動するぞ」


 MMOは自由なゲームだ。


 故に、本来はこういうメインストーリーじみた強制されたイベントが存在する事自体がおかしいが。


 だが、これがデスゲームならば、ボスフロアをスキップして労せずして勝つという、そういうクリア方法があっても、それはゲームバランスの調整という点で、不思議では無いだろう。


 だって、毎回プレイヤーが初見殺しで殺害されるかもしれないボス戦を100回も強制させられる方が、不公平で理不尽で、全プレイヤーが絶望して戦う意志を喪失して詰む可能性があるからだ。


 もし、用意された敵を〝攻略〟する事、その過程にAIを進化させる人間の合理性を求めているのだとしたら、こういう攻略法も認められるべきものだし、そしてそういう邪道の攻略は、俺の大好物でもあったのである。


 そもそも仮に、単純に陣営を分割して殺し合うだけならば、それはただの戦争ゲームであり、AIの学習という目的に役に立つとは思えない。


 ここまでの伏線からして、モモの意見が実現する可能性はそれなりに存在するものと思われる。


 だって普通にデスゲームやらせたいだけならば、SA〇まるまるパクって殺し合わせればいいだけの話なのだから。


 既に16日間もの間、デスゲームが開幕せずに閉じ込められている事、それが何よりの違和感であり、このクエストを攻略する糸口に思えたのだ。


 故に、DDOのデザイナーは、戦闘が得意なプレイヤー、そうでないプレイヤーの両方、全プレイヤーに〝対等〟に勝利する手段を用意した、という話なのかもしれないと、俺はそこで結論づけたのである。

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