20.親睦会、結果
その後、俺たちは修練場にある6つの施設、全てを制覇した。
矢避け (回避)、的当て (射撃)、魔法詠唱(攻撃魔法)、鉄球受け (防御)、魔法受け (魔法防御)、自動人形模擬戦 (剣技)の順番で俺たちは施設を回った。
その結果としてレインは全競技パーフェクトで白金騎士のランクに上がり、これにより免税特権、徴収特権、割引特権を獲得し。
俺はなんとか全ての施設で上級をクリアして、金騎士の称号を得て、白金騎士の半分の特権を得るに至った。
そして意外な事にノワは剣を使わない訓練では全く成績が振るわずに銀戦功。
モモは予想通りの銅戦功かと思いきや、攻撃魔法と魔法防御で上級をクリアしてこちらも銀戦功を獲得したのであった。
今日の出費は300×6×4で7200グランの大きな出費だが、レインが白金騎士の称号を得て様々な特権を得た事により、その出費は直ぐに取り返せるものであり、結果的にみれば大きなプラスと言えるだろう。
俺は最後に打ち上げ会でもしようかと、最後に酒場に行く事を提案したのだが。
「待ってよキリリン、まだ日も登ってる事だしさ、最後にボクと決闘してよ」
と、レインからそんな風に誘われた。
「別に決闘するのはいいけど、俺、お前が期待するような感じじゃないぞ、だってお前みたいな並外れた反射神経も、咄嗟で対応出来るゲームIQも無いし、普通に戦って普通に負ける未来しか見えない」
「そうは言ってもね、今日のキリリンを見たら、戦いたいって思ったんだから責任取ってよ、だってキリリンは何だかんだ全部の競技をクリアした、ボクのを見て対策を立てられたからという部分もあるだろうけど、でも自分なりの最適解を見つけて〝攻略〟していた、だからキリリンがボクをどう攻略するのか、非常に興味があるんだよ」
「どう考えても無理ゲーにしか思えないが、今日は親睦会だからな、乗ってやるよ、リーダーの威厳を見せてやる」
俺はコンソールを操作して決闘の申請をする、それにより、お互い木剣を使用して行なう一本勝負の、1番基本的なルールで決闘は開始された。
部外者のギャラリーはいない、施設で遊んでいる間にはレインのスーパープレイに対してギャラリーが集まって沸いて来たが、今は修練場の外だし、決闘は繁華街の路地裏で行われたからだ。
俺はレインを正面に捉え両手で木剣を構える。
それに対してレインは片手で木剣を握ったまま、棒立ちでこちらに相対する。
「いつでもどうぞ、それとも、ボクから攻めた方がいいかな?」
「いいや、俺はお前の受けの強さは識っているが、攻めの強さはまだ未知数だからな、だから俺の攻めから始めさせてくれると有難い」
「ならお好きに、さて、お手並み拝見といこうか」
と言いつつも、レインは余裕なのだろう。
理由は分かる、バスターの神速の一撃すらも反応したレインからしてみれば、今のレベル1、全ステータス1の状態の剣戟など、欠伸をしてても避けられるようなものだからだ。
だからこそノワとの決闘ではお互いに決め手を持たずに引き分けとなったのだろう。
そしてもし俺が普通にレインと戦っても、レインの方が余裕がある訳だから、先にスタミナが切れるのは俺で、それで俺は負けるのだろう。
だからレインに勝つならば、レインとノワが負けたという知らないおじさん、その戦い方からヒントを見出して、勝機を掴むしかない。
ヒントは、「速度は変わらない筈なのに早く感じた」という事。
レインほどの卓越した頭脳を持った人間ですら原因が解明出来ない思考の埒外、そこが唯一レインを出し抜ける点になるという事だ。
俺は脳内で繰り出す一撃をイメージしながら、意識を集中させ、神経を研ぎ澄ませていく。
「行くぞ──────────セイ!!」
大振りに振りかぶった横薙ぎの一撃、だがそれはレインにとってはハエが止まるくらいにノロマな攻撃だったのだろう。
棒立ちのまま、僅かに身を翻して回避する。
「舐めてるの?、流石に隙だらけだよ、そんな大振りな一撃が当たる訳無いじゃん」
そう言ってレインは反撃しようとするが、だが俺は、勢いに身を任せて突撃したように見せかけて、実はレインの間合いまで踏み込んで無かった。
俺も同様にレインの一撃を紙一重ギリギリで回避する。
──────────ここまでが想定通り。
だがこの後の展開が俺の想定通りになるのかは博打だ。
レインの一撃には隙が無く、返す刃で斬りかかったとしても、容易く回避されるだろう。
一瞬だけレインと視線が重なる。
その目は「こんなもんじゃないよね?」と、こちらを挑発するように冷ややかだったが。
俺はその視線ごとぶった斬る勢いで、返す刃で腕を振りかざした。
ズバッ
決着。
勝ったのは──────────俺だった。
「な、今のは、知らないおじさんの技・・・?、いや違う、それよりも遥かに鋭くて掟破りの一撃だった、キリリン、今のは一体?」
「嘘、団長がレインに勝った?しかも今の一撃はまるで、ヒースクリフが決闘でキリト様を倒した時みたいな、得体の知れない理不尽な力を感じた、すごい」
「キリヲさん、今度はどんな卑怯戦法を使ったんですか、説明してください!!」
三者三様に驚いて見せるが、一番驚いていたのは俺だった。
「まさか、本当に出来るとはな・・・、なぁ、DDOの開発であるゲーニックが作った過去作、『フェアリー・スレイヤー』って知ってるか?」
「DDOの開発の昔の人気タイトルだね、確か、DDOのゲームシステムの基礎になってる部分があるんだっけ?」
「そうだ、FSはゲーニック初の協力型アクションゲームであり、DDOのシステム面でもFSから継承された部分が多く見られる、それくらいFSはゲーニックの基礎となった作品であり、そしてFSの初代にはとあるバグがあった、それは斬撃をダッシュキャンセルした後に斬撃を放つと、今度はダッシュがキャンセルされて硬直が解除されて、一気に間合いを詰めて斬撃が出せるというものだ、ダッキャンバグと呼ばれる技術、これが今俺が試したものの正体だ」
「え?、つまり、キリヲさんは今度はバグ技の利用という卑怯戦法を使ったって事ですか?」
モモはそれを聞いて引いた様子だが、それでも俺は敢えて言わせて貰う。
「モモ、バグは修正されなければバグじゃない、仕様だ、事実、このダッキャンバグはFSの後継タイトルに継承され、恒例の小技として根付いている、なんでFSのバグがDDOに輸入されたのかっていう話でもあるが、恐らく開発の子粋な計らいだろう、だから俺は別に卑怯戦法なんて使ってない」
「・・・まぁ理屈は分かったけど、男なら普通、団員との親睦を深める神聖な決闘で、そんな搦手なんて使わないよね」
「安心しろ、俺はヴィーガンだろうとガンジーだろうとポリコレだろうと差別しないし、男とか女とか関係無い、 完全なる男女平等主義だ、それに、負けると分かってる勝負で本気で勝ちに行かない方が相手を侮辱してる、だからこれは俺のお前に対する俺の最大限の敬意の表れだ、誇っていいぞ」
「・・・・・・」
俺の発言は誰からも拾われる事なく、そして全員が俺を路地裏に置いて表通りへと歩いていく。
「人の事まともじゃないとか、馬鹿とか変人とか色々言ってますけど、どう考えてもキリヲさんが一番まともじゃないですよね、普通、謝ればそれで済むのに、バグ技で勝って嬉しいんでしょうか」
「ま、それがキリリンの魅力というか妙というか、個性なんだろうね、ボクは見てて退屈しないから嫌いじゃないけど、これが自分を常識人だと自負しててボクらを見下してると思うと、無性に腹が立ってくるね」
「・・・キチガイ過ぎて草」
「おい、聞こえるように悪口言うな」
パーティーを結成してまだ数日だが、何故か昨日加入したばかりのノワの方が馴染んでいて俺は疎外されていた。
世間知らずのガキだらけのパーティーでこれなら、俺が普通のパーティーに入ったなら間違いなくぼっちか、普通に追放とかされるんだろうな……。
その後俺たちは居酒屋で打ち上げをして、そのままホームに帰還したのである。




