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18.親睦会、矢避け

 次の日、俺たちは四人で修練場に向かった。


 昨日の今日で王女に会いに行くのは言い訳がつかない為に、一応の連合軍に対する義理と、厄介事に対する保険と、俺が個人的に団員達との交流を深める機会を設けたいと思ったからだ。


 修練場では15時から騎士との腕比べが行われる訳だが、それ以外にも弓道場や魔法の訓練所など、戦闘技術を高める為の設備が整っていて、金に余裕のあるプレイヤー達は、利用料を払ってジムのように利用して戦闘技術を高めている訳である。


「取り敢えずの想定だが、前衛が【剣士】のノワと【暗殺者】のレインだとして、俺とモモは後衛をやる訳だが、その為の訓練を一度しておきたいと思うんだ、デスゲームが始まる前に」


「おお!、戦闘とか一度やってみたいと思ってたんです、燃えてきました!!」


 そう言ってモモは木剣をぶんぶんと振り回してやる気満々といった様子だが、既にパーティーに超実力者のゴリラが二人いる以上、どれだけモモにやる気があったとしても前衛をさせる事は無いのだし、そのやる気は空回りなのだが、ま、最初の訓練だし、好きにやらせてみるか。


 俺の提案にそれぞれ頷くと、手始めに〝矢避け練習〟の施設から利用する事にした。

 利用料は1回300グラン、正面から飛んでくる矢を回避するだけという、至ってシンプルな施設だ。

 クリアする事で〝王国騎士ランク経験値〟が貰えて〝王国騎士レベル〟が上昇し、銅、銀、金、白金の順で、騎士特権と呼ばれる、商店の割引や、免税特権を得られるというがこの修練場の施設の特徴だ。

 この辺のルールは、ゲームさながらといったよくあるものだろう。


「よーし、じゃあ先ずは私が行きます!!」


 そう言ってモモが先陣を切ろうとするが、俺は止めた。


「おい待て、こういう危険そうな任務は先ずは1番強い奴からやるのがセオリーなんだよ、ノワ、お前が最初にやってくれ」


 俺の指示にモモは不貞腐れ、ノワは頷いた。


「了解・・・」


 昨日は多少饒舌に喋っていた訳だが、ノワはクールを気取っているコミュ障故に朝から殆ど無言であり、その感情は読めなかったが、俺が「1番強い」とおだてた事に対して、僅かに体が弾んでいるのが伺えた。


 そしてノワはいつもの二刀流を使い、飛んでくる矢を正面から斬り払う、その様子はファントムバレット編のキリトを彷彿とさせられるが、当然ノワはキリトでは無いので、上級の矢が同時に100本飛んでくる所で斬撃速度が足りずに撃沈した。


 結果、上級のスコア2700と言った所だ。


 スイ〇ゲームならば、スイカを作れなかったくらいの微妙な点数になるだろうか。


「じゃあ次はレイン、君に決めた」


「人をポ〇モンみたいに扱わないでくれよ、そこは「お前の出番だ、レイン」とかの方が真打登場っぽくてかっこいいだろう」


「そいつは舐めプした挙句に戦犯やらかすクソガキだからダメだ、お前にはジュプト〇かヘ〇ガニくらいのいぶし銀で堅実な活躍をして貰いたいからな」


「いや、そんなボクが生まれる前の時代のキャラとか言われても分からないし」


 そう言いつつレインは、初級、中級を最低限の動きで悠々(ゆうゆう)と回避し、そして上級すらもナイフ1本を使って矢を弾いて、最低限の動きだけで回避した。


 結果、上級のスコア6000、これが満点であり、順当な結果にも思えたが、それを初見で出来るレインはやはり規格外な奴だった。


「ま、正面からしか飛んでこないなら、避ければいいだけだから楽だよね」


 特に誇るでもなく、当然だとでも言うような口ぶりだが、これをレベル1のステータスでクリア出来る人間は相当限られるだろう。

 おそらく、レインは反射神経がずば抜けているのだ、バスターの初撃をすれすれで避けるのは、プロゲーマーでも難しい事なのだから。


「正面からっていうが、最後は100本の矢がポンポンと連発されてたし、弾幕ゲーもびっくりの弾幕量だったがな、それを反射で瞬間的に回避手段を見出せるのはお前以外には無理だろ」


「そう?、傍目だと難しそうかもしれないけど、慣れれば案外簡単だよ、レースゲームみたいなもんだよ、ハンドルを右に切るかが左に切るかをアクセル踏みながら考えるだけで、体が慣れればそんなに緊張感とかと無いし」


「簡単そうに言いやがるな、それじゃあモモ、次行くか?」


 モモはノワからコツを聞いていたようであり、そこで頷いた。


「はい、早くやってみたいです!」


 モモが意気揚々と施設に入っていく。

 俺の予想ではまぁ、ゲーム経験も浅いらしいし、初級をクリア出来れば万々歳と言った所だが、予想に反して、モモは初級を難なくクリアした。


「はぁはぁ、やった!、やりました!、ノワさんありがとう!」


 とモモはひと仕事終えた様子でノワに抱きつく。

 ノワはそれを拒むでもなく、戸惑いつつも受け入れていた。


「ノワでいい、わた、オレも、モモと呼ぶから」


「分かりました、ノワ」


 モモはゲームは友達と遊ぶものという謎の固定観念を持っているだけあって、ノリがリアルの陽キャみたいだった。

 もしモモが普通のギルドに入っていた場合、無自覚にサークルクラッシャー兼オタサーの姫になっていた可能性は高そうだ。


 そしてモモは中級を受けるが、終盤の弾幕が少し濃くなったタイミングでミスを連発し、そこでゲームオーバーとなる。


 結果、中級の2530/3000点、まぁ、平凡というか、微妙というか、こんなもんだろう、って言った予測の範囲の成績だろう。


「うう、失敗しちゃいました、私も二人みたいに上級に行きたかったのに」


「大丈夫、モモなら次は出来る・・・」


「モモくんは肩に力が入り過ぎだね、別に力まなくても()()()()()は俊敏なんだし、もっとリラックスして自然な感じで心に余裕を持って臨むのがいいよ」


「分かりました、次こそは!」


 とモモがリベンジしようとするのを俺は止めた。


「いや、別にこんなんクリアしてもしなくても大差無いからな、何回も挑戦するのは金の無駄だし次のアトラクション行くぞ」


 俺はそう言ってモモの手を引っ張って連れ出す。


「むぅ、じゃあ次はキリヲさんの番です、そこまで言うなら、キリヲさんは一発でクリアしてみてくださいね」


「ま、こんなん簡単だろ」


「はは、いよいよキリリンの実力がお披露目という訳だね、ボクらの事を小娘といつもバカにするくらいだから、こんなお遊びくらい朝飯前なんだろうね」


「期待・・・」


「・・・ちっ、無駄に煽ってハードル上げやがって」


 これでモモに負けたら流石に笑えないが、やはり実践は想像の域を出ずに、初級、中級をノーミスでクリアする。


 やってみた感想としては音ゲーに近い感じだ。

 矢が飛んでくる瞬間に発光によって視覚的に攻撃判定が可視化される。

 それを武器を使って弾くなり、体を屈めて回避するなりするといった感じのゲーム性だ。

 反射神経と瞬間的な判断力が要求されるものの、中級までなら特に無理なく余裕を持ってこなせられた。

 それは俺の今までのゲーム経験値があるが故の、引き出しから引き出した応用力を生かした結果だ。


 しかし上級、ここがクセモノだった。


 終盤から飛んでくる100の矢は弾幕ゲーさながらの面制圧であり、生半可な回避は適わず、そして斬撃で弾くのも物量に押し負ける。


 レインはこれを最小限の動きで密度の低い空間に体を滑り込ませて斬撃を放つ事で完全回避を達成した訳だが、まるでフラッシュ暗算みたいな速度で連発される弾幕を、俺がその方法で完全に見極めて回避するのは不可能だ。


 故に俺は完全回避を諦める。


 このゲームのルールは急所に矢が当たれば即死、手足ならば減点というルールだ、故に、回避出来ない時は急所を左手でかばうという方法により、ダメージを必要経費と割り切る事で、弾幕の雨をやり過ごす事にする。

 半身になって右手で剣を振るい、避けられないと判断すれば、手足を使って急所をかばう、これによってなんとか上級をギリギリクリアして、騎士ランクの経験値を貰った。


 結果、上級の4540、合格ラインが4500であり、かなりギリギリの及第点である。


「・・・ま、こんなもんかな」


 多分、プロゲーマーとかなら5000点は堅いのだろう、俺の実力は一般ゲーマー以上、プロゲーマー以下という、本当に可もなく不可もなくと言った感じだ。


 そしてそんな俺の微妙な実力は賞賛される事もなく、次のアトラクションへと向かう次第となったのである。

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