16.宰相の紹介状
「それで【勇者】殿、約束の物は用意出来ましたかな?」
『宰相イーコクドに1,000,000グラン渡しますか?』
というメッセージが出たので俺は「はい」を押した。
これがギャンブルで得た泡銭でなければ多少の葛藤はあっただろうが、元がメアの金という事もあってさっさと投機したい気持ちの方が強かった。
「うむ、確かに、ではこちらをぬしに授けよう、わたしからの紹介状だ」
『宰相の紹介状を手に入れた』と表示される。
「ありがとうございます」
俺が報酬を受け取るとイーコクドは背を向けて独り言をつぶやいた。
「さて、そろそろ夜逃げの準備をせんとな、この国はもう終わりだ…」
と、意味深な事を呟いた。
そして用事を済ませてイーコクドの屋敷から出ると、外には『愛と正義の連合軍』と思しき人間が取り囲んでいた。
そのリーダー格らしき男が、俺たちに向かって言い放った。
「俺は連合軍2番隊副隊長、カントンだ、単刀直入に言う、お前、100万払ったな」
「いや、そんな金無いけど」
連合軍は当初チュートリアルの攻略に反対の立場でありそれを取り締まっていて、現在は先陣を切って攻略をしている、故にイーコクドの家に監視を付けて、他のプレイヤーを見張っていても不思議じゃないし、俺もこの可能性を想定していない訳では無いが、だとしても元々とぼける気満々で乗り込んだのだった。
それに対して男は強い口調で追求した。
「とぼけても無駄だ、イーコクドの屋敷は3日前から張り込んでいる、こいつは定型文NPCだからな、お前が出てくる前後でセリフが変わればそれはお前が100万払った証拠にもなる、お前の隣にいる女はカジノで荒稼ぎしていた危険人物だし、お前が金を持っている事は分かっている」
なんとかとぼけられないかと思ったが、確証を持たれていたなら否定のしようが無いか。
メアが目立つ変態である以上、つるんでいれば不利益がある事は分かっていた事だが、こんなに早く伏線回収されるとは思わなかった。
「ふぅ、そういう事なら仕方ないか、分かったよ、全部話す、俺がイーコクドから得た情報はこうだ、100万は私との面会料であり、神官に会いたければ200万、王女と会いたければ300万、それぞれ払って面会しろとな、それが上級国民と面会する作法だってよ、つまり俺たちはみんなあの宰相に踊らされていた訳だ、ま、そういう訳だから俺たちはここで降りる事にする、金策は君たちが頑張ってくれ、健闘を祈る」
「ぶっ」
「えっ」
俺の吐いた大ボラにメアは吹き出し、モモはあからさまに「え?、そんな事言ってたっけ?」って顔をしているが、俺は素知らぬ顔でふてぶてしくそう言いのけたのであった。
「は?、そんなデタラメを、嘘を吐けば貴様は悪人として、後に裁かれることになるのだぞ」
連合軍を敵に回すと後々厄介な事になりそうなので、極力敵に回したくないが、かといって連合軍がメインストーリーをクリアするのは安全かと言えばそうでは無い。
連合軍は善人悪人の区別をつけずに数だけ集めた巨大組織だ、今だってクエストを独占して金を専横しておきながら、一般プレイヤーからの徴収も行っている腐敗した組織なのである。
近い将来、なにかデカいやらかしをやらかしそうな雰囲気があるので、俺はこいつらにプレイヤーの命運を託す気にはなれないのである。
なので俺は一貫してとぼけてみせる。
「疑うなら別にいいけどさ、これは悪魔の証明だぜ・・・そうだ!、俺たちが犯人探しを下りた証拠としてこの女、やるよ、100万稼いだ訳だし利用価値はお墨付きだ、それで金稼いで、実際に500万稼いだらそれで証明になる訳だろ、これが俺たちの誠意の証って事でどうだ?、もちろん、その他の使い方もお好きにどうぞだぜ」
「は?、ちょっと待ちないさいご主人様、私はご主人様のメス奴隷であって、こんな彼女いない歴=年齢のお断り系底辺男に貸し出すなんて・・・、貸し出すなんて・・・、嗚呼、これも試練という事ね、極上の快楽を知る為には、クズオスのおままごとにも付き合う必要があると、なるほど、分かりましたご主人様!!、私は、ご主人様の極上の快楽を知る為に、童貞たちのおもちゃになってきます、このいやらしい体を使ってしこたま搾り取って帰ってきます!!」
まるで俺が寝盗らせ趣味のヤリチン男みたいな言い草だが、ツッコむのも面倒だし、勝手に納得してくれたみたいだし、これでバイバイ出来るなら儲けもんか。
「こいつにはウチの団員100人が全財産巻き上げられたからな、意趣返しとしては丁度いいか、いいだろう、それで今回は手を打ってやる、だが覚えておけよ、もし俺たち連合軍を出し抜いたら、それは悪人としての裁きを受ける事になるという事を」
男はそう言うと複数人でメアを取り囲み、メアを連行して立ち去っていく。
俺はそれを見送った後、尾行を恐れて外食して夜になるのを待ってから、アジトへと帰還したのであった。




