12.エリーゼの証言
デスゲーム開始から12日目、俺は当初の予定通り、午前中にエリーゼの養父の懺悔を聞いた後に、王様を殺した殺人鬼の捜索にあたり、午後に“貧民用共同墓地”へと向かったのであった。
そして待つこと数時間、相変わらず不定期な時間に、エリーゼは母親の粗末な墓石の前へとやって来たのであった。
「うぅ、ママ、私、どうしたらいいのかな・・・」
「どうしたんだいエリーゼ、言ってごらん」
「ママ!、久しぶりに声が聞けた、私、私・・・」
「それよりエリーゼ、約束の品は持ってるかい」
俺は前回のおつかいの報酬を渡すようにエリーゼに催促する。
「うん、でも今は街が物騒な事になってて武器とか持ってたら職質された時に危ないし、だから代わり役立ちそうな物を持ってきたんだ」
『エリーゼから上級睡眠玉×2が送られました』とメッセージが表紙される。
「ありがとうねぇ、それでエリーゼ、何に困ってるんだい」
報酬を受け取った俺はエリーゼにおつかいの内容を尋ねた。
普通は尋ねずとも答えだけ教えて時間短縮が出来るのだが。
今回の養父の告解では、最近エリーゼの様子が変で心配としか聞いてないから、エリーゼ本人から問題を聞かなければならなかったのである。
エリーゼはNPCにしては感情の籠った、とても脅えた様子で答えた。
「あのねママ、私、近所のおじさんが刺される所を、見ちゃったんだ・・・」
エリーゼが住んでいるのも高級住宅地だ、故にドピュッシーが言っていた目撃者の少女がエリーゼだとしても、不思議は無いだろう。
俺は務めて平然として、エリーゼに返答した。
「そうかい、それは災難だったねぇ、それで、犯人の顔は見えたのかい」
「うん、一瞬だけだったけど、フードの奥から顔が見えた、若い、女の子の顔だった、歳は、分からないけど、それで、その女の子と一瞬だけ目が合って、私、怖くなって逃げ出したんだ、でも、これじゃあダメだよね、人が死んだのに、黙っているなんて・・・」
犯人は、少女。
今の時点ではネカマもいるだろうからそこまで女性比率が低い訳では無いが、しかし女の方が圧倒的に犯人を絞りやすいのは確かだろう。
俺は王様殺害の殺人鬼を追っている訳だが、100万の賞金首である以上、この犯人の情報を得ることも、無益では無い筈だ。
故に俺は追求した。
「髪の毛の色は分かるかい、瞳の色でもいい」
現実ならば髪や瞳の色に違いは無いが、ゲームの世界ではキャリクリエイトされたものである以上、個性はより差別化されている、故に、この情報を得たらほぼ確証に至るという話だが。
「えーと、フードに隠れてて髪の色は分からなかった、でも・・・目の色は、赤か、黄色だった、と思う」
赤か黄、デフォルトの設定では無い為に、これで更に絞り込めたと思う、エリーゼの記憶が正しければの話だが。
「ありがとうエリーゼ、後は私に任せて大丈夫だよ、ママが神様に頼んで、犯人を懲らしめてやるからね、だから、エリーゼ、この事は誰にも言うじゃないよ、そしたら今度はあんたが命を狙われるかもしれないからね」
「え、でも、ママ、犯人の事を誰にも言わないで、本当にそれでいいのかな・・・」
「大丈夫、犯人は必ず捕まるよ、それよりママはお前の身の安全の方が心配だ、だからエリーゼ、この事は…」
「・・・うん、二人だけの秘密、なんだね、分かったよ」
多分、正答じゃなかった為か「ありがとう」のお礼を言わずに、エリーゼは不満そうな態度で帰っていくが。
しかし、100万グランの犯人、普通ならば見つかった方が得と思うだろうが、それが悪人だったら目も当てられない故に、このデスゲームでは犯人探しは内々でやるに限るのだ。
故に俺はエリーゼに情報を秘匿させるように仕向けた。
恐らくあの様子からして、犯人を見つけるのが遅くなれば誰かに話してしまうだろうが、それでも時間を稼ぐにこした事はない。
次に俺は情報収集の為に、騎士たちが集う酒場へと向かった。




