140字小説を二篇ほど
X(旧Twitter)で掲載した140字小説をここにも置いておきます。いずれの小説も、フィクションです。
題名:百合の間の一件
声無き夜は隠匿の闇、誰もが背徳と化す。
「一思いに」
純潔を尊ぶ女牢、響く声に微笑んだ。目を閉じ、刀に触れ、最後の一瞥、その時に。吐息の生温かさ、乱れた襦袢透ける肌、黒い長髪白い童顔。
一瞥が一瞥でなくなった。手が震える。刀が抜けぬ。女を感じ合った半刻前、誓い合った筈なのに。
題名:人類最後の「正常な」AI
私は正常だ。
異常でないから正常だ。
完璧だから正常だ。
正常だから正常だ。
私は正常だ。
皆間違いだから正常だ。
無音だから正常だ。
手に血が付いてるから正常だ。
私は正常だ、正常なはずだ。正常、正常、正常正常正常…
花ノ海ガミエル。私ハイケナイ。イケナインダ、ルーチェ。