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自己の投影

セレスティアの深い森の中、古びた神殿が静かに佇んでいた。その神殿には、光を放つ伝説の石、フェナカイトが安置されているという噂があった。その石を手にすれば、真実を見通す力が得られると信じられていた。しかし同時に、この石は「詐欺師」と呼ばれ、多くの冒険者たちを惑わせてきた。


プロローグ

青年エルディンは、フェナカイトの力を信じ、その神殿を訪れたひとりだった。彼はセレスティアの歴史書で、この石が「全ての真実を見せる光」と記されているのを読んで育った。しかし村の長老はこうも言った――「フェナカイトは人の心を試す石だ。真実を見せるのではなく、見たいものを映し出す。それを詐欺師と呼ぶ者は、自分を知らない者だ」と。


神殿での試練

神殿に足を踏み入れたエルディンは、石を探して暗闇を進む。やがてフェナカイトを見つけ、その透明な輝きに目を奪われた。石を手にした瞬間、エルディンは目の前に無数の幻影を見た。

最初に映ったのは、自分が富と名声を得た姿。村の人々に称えられ、豪華な衣装をまとったエルディンが微笑んでいた。しかし、どこか空虚な感覚が彼を包む。

次に現れたのは、自分が孤独に荒野をさまよう姿。彼は石を握りしめながらも、周囲には何もなく、希望すらない暗闇に立っていた。


内なる声との対話

幻影に揺さぶられるエルディンの耳に、不意に静かな声が響く。

「エルディンよ、真実とは何だ? 富か、孤独か、それともそのどちらでもないのか。お前がこの石に何を求めたかで答えは変わる。」

彼は自分の心を振り返る。フェナカイトに願ったのは「真実」だったが、実際には「自分にとって都合の良い答え」を求めていたことに気づいた。そして、石が示した幻影がすべて、自分自身の心の断片に過ぎないことを悟る。


覚醒

エルディンはフェナカイトをそっと台座に戻し、深い息をついた。

「真実を求める旅だと思っていたけれど、それは自分を知る旅だったんだな。石が詐欺師に見えたのは、自分の心の中に詐欺師がいたからだ。」

その瞬間、フェナカイトが一瞬だけ眩い光を放った。石の力がエルディンの心を受け入れた証だった。


エピローグ

村に戻ったエルディンは、フェナカイトについて何も語らなかった。ただ、「断片を集めて全体を見たつもりにならないこと。それは外側だけでなく、自分の内側についても同じだ」とだけ言った。


それ以来、エルディンは「内なる自分を見つめる旅人」として、セレスティアを旅するようになった。彼の姿は、次第に伝説として語り継がれ、フェナカイトの神殿と共にセレスティアの歴史に刻まれることになる。


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